2015年のカンヌ映画祭において、是枝裕和監督の『海街 Diary』の公開記者会見が行われた。
その際の受け答えで、是枝監督が作品の意図を言葉で分析的、論理的に伝えているのに対し、四人の女優は感想や印象といった個人的な思いを語ることに重きを置いている。
日本人のコミュニケーションの理想は、「言わずもがなの関係」の中、「あうんの呼吸」でわかりあえることかもしれない。そして、「言わなくても分かり合え、言葉にしなくても通じ合う」ことが最も好ましい人間関係だとすると、言葉は、本質的には、それほど必要とされていないのかもしれない。
論理的で明確な意味を伴った言葉は違いを生み出す可能性もあり、避けられることもある。
そこで、感想や印象といった個人的な思いを伝え、相手はその感情を受け取り、共感に基づく人間関係が成立する。
日本の中にいると当たり前すぎて気づかないのだが、一歩日本から外に出てみると、そうした日本的言語表現に気づくことがある。