フランス語の語順

時間軸に従って次々に単語を並べていくことで、文章が形作られる。
その際、最初に置かれる要素と、後ろに置かれる要素では、役割が違っている。

最初に置かれる要素は、話し手(書き手)と聞き手(読み手)の間で共有されることになる話題を提示する。
これから何を話すかというテーマ。

後ろに置かれるのは、話題の中で焦点となる事柄。伝えたいこと、知りたいことの中心であり、結論。

一般的に、文の前に置かれる要素が旧情報だとすると、文の後ろには新情報を伝える要素が置かれる。

具体的な例で見ていこう。

状況補語の位置

Mardi 28 janvier, / un quatrième cas de coronavirus a été détecté en France, / en région parisienne.

1月28日(木曜日)、コロナウィルスの4番目の症例がフランスで発見された。その場所はパリ一帯。

https://www.francetvinfo.fr/sante/maladie/coronavirus/coronavirus-un-quatrieme-cas-en-france_3803505.html

文頭に置かれたMardi 28 janvier :話題が、1月28日のことであることを提示。

文の末尾に置かれたen région parisienne :フランスでコロナウィルスの4番目の例が発見されたという情報の後で、パリの一帯と付け加えられる。
最後に置かれているのは、発生したのがパリを含む一帯であることに焦点を当てるため。

En région parisienne, / un quatrième cas de coronavirus a été détecté / mardi 28 janvier.

パリを含む一帯で、4番目のコロナウィルスの4番目の症例が発見された。1月28日(火)のことだ。

この文では、パリ一帯が話題の提示。
28日に発見されたことに焦点が当たっている。

強調構文は、文の最初に、文の焦点となる新情報を位置する用法。

C’est mardi 28 janvier qu‘un quatrième cas de coronavirus a été détecté en France, en région parisienne.

c’est…queで囲むことで、mardi 28 janvierを焦点化する。

直接目的語、間接目的語となる代名詞

動詞の直接目的語、間接目的語となる代名詞は、動詞の前に置かれる。
その理由は、代名詞はすでに出てきた名詞の代用をしているために、意味は聞き手、読み手にわかっているのが前提。つまり、既出の情報であり、文の焦点にはならない。
日本語と違って代名詞が必須となるのは、動詞の構文を維持するため。

Qu’est devenu Armand ? − Nous l‘avons très peu connu.

アルマンはどうなったのだろう。ー私たちは彼のことをほとんど知らなかった。

アルマンを知っていることは、語り手にも読み手にも了解事項になっている。
そこで、その名前をもう一度繰り返して、nous avons très peu connu Armand.と言うのではなく、Armantをleという代名詞にして、情報量を少なくする。
そして、leを動詞の前にもってきて(nous l‘avons…)、très peu connuを後ろに置き、知らないということに焦点をあてる。

構文上の視点。
日本語であれば、彼をという代名詞を省き、ほとんど知らなかっただけでも意味が通じる可能性がある。
他方、フランス語では、leを省略することはできない。
Nous avons connu Armand (-le)としないと、s-v-o構文を保てないからである。

この違いは、日本語とフランス語の動詞の性質の違いによっている。

日本語では、目的語の有無ではなく、動詞自体で、他動詞と自動詞が決まっている。例えば、「開ける」は他動詞、「開く」は自動詞。

フランス語では、直接目的語を要求する動詞が他動詞として認定される。従って、目的語になる代名詞を省略することはできない。

文の前におく要素は、話題の提示であり、対話者双方の了解事項。
旧情報に属し、情報量は少ない。

文の後ろに置かれる要素は、発話者が受信者に伝えたい、新しい情報。
従って、焦点が当てられている。

原則的には、文章を構成する要素の語順が、話題と焦点化を決定する、と考えることができる。

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