アート・ブレーキーとジャズ・メッセンジャーズの「ア・ラ・モード」は、わずか7分弱の曲だけれど、演奏の推進力がこれでもかというほど強く、いつ聴いても気持ちを前向きにしてくれる。
最も大きな推進力は、楽団のリーダー、アート・ブレーキーのドラムス。元気よく、勢いよくドラムスを叩きまくり、みんなを鼓舞する。
全員でテーマを演奏した後、最初のソロは、テナー・サックスのウエイン・ショーター。
スピード感があり、気持ちよく前に進む。そのバックでトランペットとトロンボーンがリズムを盛り上げる。
次のソロは、リー・モーガンのトランペット。
ショーターと同じメロディを吹きながら、そこかしこにインプロヴィゼーションで新しい要素を加え、個性を出していく。
3番目はカーティス・フラーのトロンボーン。
明るい中にも少し落ち着いた感じがして、トロンボーンの音色に合った変奏になっている。バックのショーターとモーガンのチャン、チャカ、チャンの合いの手が演奏をさらに盛り上げる。ブレーキーのドラムスも、いよいよ勢いが増してくる。
ピアノのボビー・シモンズのソロが続く。
シモンズのインプロヴィゼーションはかなりテーマから離れていく。フロントの3管は休み、ベースとドラムスだけになるが、ベースもドラムスもとにかくリズムを激しく刻み、推進力のあるジャズのリズム隊のお手本となる演奏。
ブレーキーのドラムだけでなく、ジミー・メリットのベースも、演奏の推進力になっているのが、よく感じられる。
最後に、3管が再び加わってテーマを演奏し、エンディングになる。
単純なテーマに基づき、演奏者たちがその場のインスピレーションに従い、インプロヴィゼーションで変奏をし、毎回新しい演奏をしていく。それがジャズの醍醐味。
1961年の録音だが、まったく古さを感じさせず、新鮮なまま。いつ聴いても気持ちを前に押し出してくれる素晴らしい演奏になっている。

1982年、ウイントン・マルサリスやブランフォード・マルサリスが入団していた時にも、「ア・ラ・モード」が録音された。
同じ曲でも、演奏によって違う曲になることがわかって面白い。
正直に言ってしまうと、1962年の演奏の方がはるかに素晴らしい。
違いの最も大きな要素は、推進力。聞く者を前に前にと押し出してくれる力強さが全く違う。
リズム隊が演奏を活気づけ、フロントのサックス、トランペット、トロンボーンもソロになったり、バックで伴奏をし、全てに一体感がある。
ウエイン・ショーターがジャズ・メッセンジャーズにいた短い期間の演奏の中でも、最高の演奏だといえる。