ヴィクトル・ユゴー 「エクスターズ」 『東方詩集』 Victor Hugo « Extase »  Les Orientales 

1802年に生まれ1885年に83歳で死んだヴィクトル・ユゴーが、フランス・ロマン主義文学の中心であったことに異論の余地はない。
1820年代にはすでにロマン主義を先導する詩人、劇作家だった。
また、現在でもよく知られている『ノートル・ダム・ド・パリ』や『レ・ミゼラブル』の作者でもある。

そうしたユゴーの創作活動は、簡潔にまとめるにはあまりにも膨大であるが、ここでは1829年に出版された『東方詩集(Les Orientales)』に収録された「エクスターズ(Extase)」を読み、ユゴーの詩の本質がどこにあるのか考えみよう。

最初の出版物である『オード集(Odes et Poésies diverses)』(1822)の「序文(Préface)」には、次のような一節が見られる。

 Au reste, le domaine de la poésie est illimité. Sous le monde réel, il existe un monde idéal, qui se montre resplendissant à l’œil de ceux que des méditations graves ont accoutumés à voir dans les choses plus que les choses.

詩の領域は果てしない。現実世界の下には、理想の世界がある。その理想の世界は、大切なことをずっと瞑想し、事物の中に事物を超えたものが見えている人々の目には、光輝いた姿を現している。

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ルソー エミール Jean-Jacques Rousseau Émile Profession de foi du vicaire savoyard 自然宗教 Philosophie naturelle 

ジャン・ジャック・ルソーは、五感を通して感じる「感覚(sensation)」と、その感覚が引き起こす「感情(sentiment)」を人間存在の中心に据え、個人と社会のあり方について様々な思索を展開した。

1762年に出版された『エミール』では、子供から成人に至るまでの人間の成長を見据えた教育論であるが、青年時代を扱う章の中で、宗教感情について論じている。

その際に、「サヴォワ地方の助任司祭(vicaire savoyard)」を登場させ、助任司祭の「信仰告白(profession de foi)」という形式で、「自然宗教(la religion naturelle)」がどのようなものかを定義する。
「自然宗教」とは、キリスト教の人格化された神や教会の儀礼を否定し、人間が生まれながらに持っている感受性や、聖なるものを信じる気持ちに基づいている、普遍的な信仰心と言えるだろう。

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