高橋虫麻呂 奈良時代の異邦人 『万葉集』 孤独なホトトギスのあはれ

高橋虫麻呂(たかはしの むしまろ)は、生没年不詳だが、『万葉集』に長歌と反歌(短歌)あわせて三十五首が収められており、奈良時代初期の歌人と考えられている。

彼の歌には、地方の伝説を題材としたものもあり、「水之江の浦の島子を詠む一首」と題された長歌は、浦島太郎伝説の最古の形を伝えるものとして、きわめて興味深い。
浦島物語 奈良時代 神仙思想

その一方で、「霍公鳥(ほととぎす)を詠んだ一首と短歌」のように、人間のあり方を主題とした歌もある。
ほととぎすは、鶯(うぐいす)など他の鳥の巣に卵を産み、その鳥に育てさせる「託卵(たくらん)」という習性をもつ。高橋虫麻呂は、そのほととぎすを題材に、アンデルセンの童話『醜いアヒルの子』(1843年)よりも約千年前に、周囲から孤立した存在の姿を描き出している。

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アンデルセン童話の美しさ 2/2

基本構造

価値の逆転は物語の基本構造に内在しているともいえる。
「欠如」で始まる物語は、主人公の「試練」を経て、「充足」で終わる。最初は恵まれない立場にいた主人公は、数々の困難を乗り越え、最後には幸せになる。
アンデルセン童話も、ほとんどの物語がこの構図に則っている。

構造がもっともはっきり見えるのは、「みにくいアヒルの子」「おやゆび姫」「雪の女王」等、ハッピーエンドの物語である。主人公たちは様々な試練をくぐり抜け、それを乗り越えることで、最後は幸せになる。

おやゆび姫は、ヒキガエル、コガネムシや野ネズミ、モグラ等にさらわれ、自分ではどうしようもない状態に置かれる。そして、こうした試練を乗り越えた後、やっと幸せにたどり着く。

同じように、アヒルの子も、自分の家族だけではなく、ニワトリや七面鳥、野がも、猟師、犬、お百姓のおばあさん、ネコ等、色々なものからいじめられ、悲しい思いをする。しかし、その苦しみが大きいだけに、最後の幸せも大きく感じられる。

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アンデルセン童話の美しさ 1/2

アンデルセン童話は、安心して子どもに与えることができ、しかも、その美しさは大人の読者をも惹き付けてやまない。
どこの国のいつの時代の読者も、ハンス・クリスチャン・アンデルセンが1805年に生まれ、1875年に亡くなったデンマークの作家、などということは気にせずに、彼の創作した物語に親しんでいる。

「人魚姫」「マッチ売りの少女」「裸の王様」「みにくいあひるの子」等は、読んだことはないにしても、名前を聞いたことはあり、なんとなく話の筋は知っているに違いない。

「雪の女王」は、ディズニーの「アナと雪の女王」によって、全世界で大流行する物語になった。

では、アンデルセン童話のどこに、それほどの魅力があるのだろうか。

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