
La Besaceとは、肩の前後に振り分けてかつぐ頭陀袋のこと。そのLa Besaceという題名を持つラ・フォンテーヌの寓話は、イソップの「ジュピターの二つの袋」の原典としている。そのおおまかな内容は以下のようなもの。
ジュピターが人間を造った時、二つの袋を担がせた。肩の前に掛かった袋には隣人の欠点が、後ろに掛かった袋には自分の欠点が入っている。そのために、他人の欠点はすぐに目に入るが、自分の欠点はなかなか見えない。
「他人に厳しく自分に甘い」といった意味の諺は日本にもある。例えば、「灯台下暗し」、「人の一寸(すん) 我が一尺(しゃく)」、「目はその睫(まつげ)を見る能(あた)わず」、など。
では、そうした教訓を核とする小話を、ラ・フォンテーヌはどのような寓話として語ったのだろうか。

Jupiter dit un jour : “Que tout ce qui respire
S’en vienne comparaître aux pieds de ma grandeur :
Si dans son composé quelqu’un trouve à redire,
Il peut le déclarer sans peur ;
Je mettrai remède à la chose.
ジュピターがある日こう言った。「息するもの全ては
偉大なわしの足下に出頭すること。
誰か自分の身体の作りに不平があるのであれば、
恐れることなく申告するがよい。
わしがそれを直してやろう。」




