フランス語講座 ネルヴァル 「オーレリア」 Gérard de Nerval « Aurélia »

ネルヴァルは、「オーレリア」の冒頭で、夢の世界を、象牙あるいは角の扉によって現実世界から隔てられたもう一つの世界として描き出している。
闇の中で新しい光に照らされて浮かび上がるその世界は、劇場の舞台の上で芝居が始まる時のようでもある。

日本語に訳すのではなく、フランス語を前から辿っていくと、ネルヴァルの描く映像が目の前に展開するような印象を受ける。

  Le Rêve est une seconde vie. Je n’ai pu percer sans frémir ces portes d’ivoire ou de corne qui nous séparent du monde invisible. Les premiers instants du sommeil sont l’image de la mort ; un engourdissement nébuleux saisit notre pensée, et nous ne pouvons déterminer l’instant précis où le moi, sous une autre forme, continue l’œuvre de l’existence. C’est un souterrain vague qui s’éclaire peu à peu, et où se dégagent de l’ombre et de la nuit les pâles figures gravement immobiles qui habitent le séjour des limbes. Puis le tableau se forme, une clarté nouvelle illumine et fait jouer ces apparitions bizarres : – le monde des Esprits s’ouvre pour nous.

朗読
http://www.litteratureaudio.net/mp3/Gerard_de_Nerval_-_Aurelia_Partie_1.mp3

Le Rêve est / une seconde vie.

le rêve:夢
une seconde vie:二番目の生。第一のvieは現実。夢は二番目のvie.

この一文から、ネルヴァルが、夢に現実と同じ価値を置いていることがわかる。どちらもune vieなのだ。

Je n’ai pu percer / sans frémir / ces portes d’ivoire / ou de corne / qui nous séparent / du monde invisible.

je n’ai pu:・・・することができなかった。(pouvoirの複合過去)
percer:貫く。通る。
sans frémir:震えることなく。
ces portes d’ivoire ou de corne:象牙あるいは角の扉。
qui nous séparent de …:私たちを・・・から隔てる。
le monde invisible:目に見えない世界。

複合過去

avoir(être)の直説法現在+過去分詞で作られる複合過去の形は、英語の現在完了と同じ。
その用語の通り、「現在」の時間帯に属し、その中ですでに「完了」していることを示す。それが基本的な用法。

フランス語では、完了の意味と同時に、単純過去で示される過去の時間帯の出来事(英語の過去)を示すこともある。

単純過去は、語り手とは切り離された過去の出来事。
複合過去は、語り手と繋がりのある過去の出来事。その意味で、現在完了とオーバーラップする。つまり、語り手の現在と語られる内容の現在が同一。

象牙(ivoire)の扉と角(corne)の扉

古代ローマの詩人ヴェルギリウスの『アエネーイス』では、夢は二つの扉からやって来るとされる。
角の扉から出てくる夢は、正夢。
象牙の扉から出てくる夢は、火とを欺く夢。

ネルヴァルは、d’ivoire ou de corne(象牙あるいは角)とどちらの可能性も残し、とにかく、いくつかの扉が現実世界(nous)と目に見えない世界(le Rêve)とを隔てているとしている。

Les premiers instants du sommeil / sont l’image de la mort ;/ un engourdissement nébuleux / saisit notre pensée, / et / nous ne pouvons déterminer / l’instant précis / où le moi, / sous une autre forme, / continue l’œuvre de l’existence.

Les premiers instants:最初の瞬間。
le sommeil:眠り。
l’image:イメージ、映像。
la mort:死。
un engourdissement:麻痺、硬直、受身の状態。
nébuleux:曇った、混乱した。
saisit:掴む、捉える。
notre pensée:私たちの思考。
déterminer:決定する。
l’instant précis:正確な瞬間。
où:関係副詞:その時・・・
le moi:私。
sous une autre forme:別の形をしている。
continue:続ける。
l’œuvre:仕事、作品、行動。
l’existence:生存、存在、生きていくこと。

現在形

Les premiers instants du sommeil sont l’image de la mort.

動詞が現在形(sont)なのは、眠りの最初の瞬間が死の映像と同じだという考察を、普遍的な現象と見なしているため。
つまり、この現在形は、普遍的、一般的な事象であることを示している。

続く、saisit, nous ne pouvons déterminerの現在形も、同様。

名詞表現

1)un engourdissement nébuleux saisit notre pensée ;

フランス語と日本語の大きな違いの一つは、文章の主語。

フランス語では、出来事の原因を主語(名詞)で表現し、その原因が働きかける対象を目的語にすることがある。
ぼんやりとした痺れ(主語)が、私たちの思考の働き(目的語)を捉える。

日本語では、主語は人であることが多く、その人に対して、自然に何かが起こるという捉え方する。
ぼーっとして、私たちは何も考えることができない状態になる。

とりわけ、フランス語の文学言語を読むときには、名詞表現を動詞的に理解するコツを習得することが大切になる。

以下の文では、l’œuvre de l’existenceという名詞表現を動詞的に解釈することで、理解が容易になる。

2)le moi, sous une autre forme, continue l’œuvre de l’existence.

私は、別の姿の下で、「存在の作品」を続ける。
「存在の作品」→生の活動、生きていくこと、生きていることで実現すること。

C’est un souterrain / vague / qui s’éclaire / peu à peu, / et / où / se dégagent / de l’ombre / et de la nuit / les pâles figures / gravement immobiles / qui / habitent / le séjour des limbes.

un souterrain:地下道。
vague:ぼんやりとした。
qui :関係代名詞。
s’éclaire:照らされる、明るくなる。
peu à peu:少しづつ。
où:関係副詞。qui と同様に、un souterrainを説明する。
se dégagent:離れる、現れる。dégager:解放する、自由にする。
de l’ombre:闇から。
de la nuit:夜から。
Les pâles figures:青白い姿。
gravement:重々しく、どっしりと。
immobile:不動の、動かない。
habitent:住んでいる。
le séjour:住み処、滞在。
les limbes:辺獄。天国と地獄の間に存在し、洗礼を受けなかった者が送られる場所。キリストは、一度死んでから復活するまでの間、辺獄に留まっていた。

関係代名詞、関係副詞に関する注意

日本語では、名詞を説明する言葉(形容詞等)は名詞の前に来る。
フランス語や英語では、逆に、説明する言葉が先に来て、名詞は最後に来る。
そのために、関係代名詞や関係副詞に先立たれる文があると、語順を逆転して、後ろから訳し上げて理解しようとしてしまうことがある。
しかし、語順を逆転することは、外国語の理解を妨げる、最も悪い方法だということを、常に意識することが大切。

この一文では、le souterrain(地下道)を説明するために、3つの要素が続いている。
1) vague
2) qui
3) où

この地下は、
1)ぼんやりとしている。
2)徐々に明るくなる。(s’éclaire / peu à peu)

3)où 以下に関しては、次のように理解する。

se dégagent : 現れる。
動詞が最初に置かれているために、その後から主語が出てくる予想をする。

de l’ombre et de la nuit。闇と夜から。
これは場所を示す状況補語であり、主語はまだ出て来ない。

les pâles figures:青白い姿をした者たちが。
名詞が出てきて、これがse dégagentの主語であることが、自然にわかる。

次に、les pâles figuresに、2つの説明が付け加えられる。

1)gravement immobiles. じっと動かない。

2)qui habitent le séjour des limbes.
それらが留まっているのは、辺獄の住み処。

Puis le tableau se forme, une clarté nouvelle illumine et fait jouer ces apparitions bizarres : – le monde des Esprits s’ouvre pour nous.

puis:次に。
le tableau:絵画。
se forme:形作られる。
une clarté nouvelle:新しい光。
illumine:照らす。
fait jouer:活動させる。faireは使役。
ces apparitions:姿を現した物、亡霊。
bizarres:奇妙な。
le monde des Esprits:精霊の世界。
s’ouvre:開く。

1)
le tableau絵画を意味するが、おぼろげな映像がはっきりとした形を持ち始める(se forme)。その映像がle tableau。
辞書で示される単語の意味は、大まかな輪郭であり、それぞれの解釈は文章の中で、文脈に合わせて行うことが大切。

2)
une clarté nouvelle illumine… et fait jouer…
主語+動詞+目的語 et 動詞+目的語

3)
le monde des Esprits
Espritの最初の大文字は、普通名詞espritsを固有名詞的にする役割を果たしている。

眠りの瞬間、「私」は能動的には何も考えられなくなり、「小さな死」を迎える。
そして、別の形をした「私」が、夢の世界で行き始める。
その世界は、最初は真っ暗で朧気だが、徐々に明るくなり、最初は青白い姿をした者たちが姿を現す。そこに新しい光が差し、奇妙な姿をした者たちが活動を始める。彼等は最後に、精霊と呼ばれることになる。
このように見て行くと、les pâles figures – ces apparitions bizarres – les Espritsという変遷が明らかになる。

以上を頭に置いた上で、もう一度全文を前から読んでみよう。

Le Rêve est une seconde vie. Je n’ai pu percer sans frémir ces portes d’ivoire ou de corne qui nous séparent du monde invisible. Les premiers instants du sommeil sont l’image de la mort ; un engourdissement nébuleux saisit notre pensée, et nous ne pouvons déterminer l’instant précis où le moi, sous une autre forme, continue l’œuvre de l’existence. C’est un souterrain vague qui s’éclaire peu à peu, et où se dégagent de l’ombre et de la nuit les pâles figures gravement immobiles qui habitent le séjour des limbes. Puis le tableau se forme, une clarté nouvelle illumine et fait jouer ces apparitions bizarres : – le monde des Esprits s’ouvre pour nous.

ここでは、ネルヴァルの描く夢の世界の開始が、1枚の絵画(le tableau)あるいは演劇作品(l’œuvre)の最初の場面のように描き出されている。

ネルヴァル自身の「シルヴィ」のincipit(冒頭の一文)、さらには、プルーストの「失われた時を求めて」のincipitとのつながりを考えると、文学作品をフランス語で読む楽しみが広がるのではないだろうか。
https://bohemegalante.com/2020/02/12/nerval-sylvie-1/
https://bohemegalante.com/2020/02/01/proust-a-la-recherche-du-temps-perdu-1/

単語の復習

名詞:
le rêve, une vie, la porte, une ivoire, une corne, le monde, un instant, le sommeil, une image, la mort, un engourdissement, la pensée, le moi, une forme, une œuvre, une existence, un souterrain, une ombre, une nuit, une figure, un séjour, les limbes, le tableau, une clarté, une apparition, un esprit.

動詞:
percer, frémir, séparer, saisir, déterminer, continuer, s’éclairer, se dégager, habiter, se former, illuminer, faire jouer, s’ouvrir.

その他:
second, invisible, premier, nébuleux, précis, sous une autre forme, vague, peu à peu, pâle, gravement, immobile, puis, nouveau-nouvelle, bizarre.

コメントを残す

以下に詳細を記入するか、アイコンをクリックしてログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Google フォト

Google アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Twitter 画像

Twitter アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中