フランス語講座 プルースト 『失われた時を求めて』 Marcel Proust À la recherche du temps perdu 1/5

フランス文学に興味があれば誰しも、マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』をフランス語で読めたらどんなに素敵だろうかと、夢見たことがあるに違いない。

これから、『失われた時を求めて』の第1章の冒頭を読み、プルーストの散文を読むという得がたい喜びを感じながら、フランス語の読解力のレベルアップを試みてみよう。

Longtemps, je me suis couché de bonne heure. Parfois, à peine ma bougie éteinte, mes yeux se fermaient si vite que je n’avais pas le temps de me dire : « Je m’endors. »

1)
Longtemps, / je me suis couché / de bonne heure.

Longtemps:長い間
je me suis couché:寝た。
de bonne heure:早い時間に

複合過去

je me suis couché:複合過去。
複合過去は、助動詞が直接現在の活用をしていることからわかるように、時間帯としては、現在に属する。
助動詞の後ろに過去分詞が置かれる形を複合形といい、完了を意味する。
従って、複合過去形は、現在において完了している事柄を表す。

複合過去を理解するためには、もう一つの視点の理解も必要。
Je me suis couché.
普段私たちは、この文を発話する人の存在を忘れている。しかし、文には必ず発話者がいる。小説であれば、発話者は語り手。
彼の発話の時点(語りの時点)と、時制の現在で示される時は同じ時間帯に属する。
もし語り手が一人称« je »を使う場合、語り手と物語の中の「私」は同一人物になる。
従って、語り手の「私」と登場人物の「私」は同一の存在であり、動詞が現在であれば、語りの時と行動の時は同一の時間帯に属することになる。

複合過去も現在の時間帯に属するために、je me suis couché.は、語り手がそれを書いている時点で、すでに完了したことを意味している。
つまり、語られた内容と語り手はつながっていて、今という時間帯を共有している。

単純過去と複合過去の違いは、まさに、ここにある。
Je me coucha. (単純過去)
たとえ « je »という代名詞が使われていても、語り手が語っている時と、登場人物である「私」の時は切り離されている。
単純過去を使うと、語られる内容は今と切り離され、歴史上の出来事のように語られる。

日常会話において、過去の事実を言い表すときに複合過去を使うのは、話をしている「私」と、話の中の「私」が同一であるからに他ならない。
本来は完了の表現である複合過去が、過去の事実を示す過去としても使われる理由がここにある。
フランス語の複合過去は、英語の現在完了と過去の二つの役割を担っているのである。

『失われた時を求めて』の冒頭で複合過去が用いられていることは、語り手である「私」と語られる内容が同一の時間帯に属していて、語り手の「私」の体験であることを示すという意味で、非常に重要である。

2)
Parfois, / à peine ma bougie éteinte /, mes yeux se fermaient / si vite / que je n’avais pas le temps / de me dire / : « Je m’endors. »

Parfois:時々
à peine… :・・・するとすぐに
ma bougie:蝋燭
éteinte:消える
mes yeux:私の目
se fermaient:閉じる
si… que:とても・・・なので・・・
vite:早く
je n’avais pas le temps:時間がなかった
me dire:自分に言う。
Je m’endors. 私は眠っている。

a)
à peine ma bougie éteinte:蝋燭が消えるとすぐに

主文のmes yeux fermésの前に置かれ、目が閉じる時の状況を説明する。
活用する動詞がなく、la bougieにéteindre(消える)の過去分詞が続くだけの表現で、副詞的な役割を果たしている。

b)
mes yeux se fermaient :目が閉じた。(半過去)

半過去は、物語を展開する動きを示すのではなく、展開する時の状況を描写する時制。
Je me suis couchéと過去の体験について言及され、その時にどのような状態だったのか描写している。

c)
si vite que je n’avais pas le temps de me dire :あまりに早かったので、(あまり早く目が閉じたので)、自分にこう言う時間がなかった。

si… queは、英語のso… thatと同じ。

je n’avais pas は半過去。状況の説明。上述のse fermaientと同じ。

d)
« Je m’endors. » (直接法現在)
直接話法を使うことで、臨場感が生まれる。
読者は、「私」が今眠ろうとしているその場に居合わせているような感じがし、小説の中に引き込まれていく。

最後にもう一度、文全体を読んでみよう。
大切なとは、日本語に訳すのではなく、前から読んで、そのまま理解すること。

Longtemps, je me suis couché de bonne heure. Parfois, à peine ma bougie éteinte, mes yeux se fermaient si vite que je n’avais pas le temps de me dire : « Je m’endors. »

youtubeで朗読を聞き、文字を見なくても理解できれば、フランス語のレベルアップになったことの証拠になる。

単語の復習

名詞:
une heure, ma bougie, mes yeux, le temps

動詞:
se coucher, éteindre, se fermer, avoir le temps de, se dire, s’endormir

その他:
longtemps, de bonne heure, parfois, à peine, si…que…, vite

文法の復習

1) 状況を表す表現
SVOCが完備していなくても、状況を示す表現として、そのまま理解できる。

à peine ma bougie éteinte
蝋燭が消えるとすぐに

2)過去時制の区別

複合過去:
語りの時と語られる時が同じ時間帯に属する。現在の中で、完了している事柄を示すのが、本来の用法。

単純過去:
語りの時と切り離された過去の出来事を表す。

半過去:
物語を展開する事柄ではなく、その背景の状況を描く。

フランス語講座 プルースト 『失われた時を求めて』 Marcel Proust À la recherche du temps perdu 1/5」への2件のフィードバック

  1. 米原信子 2020年2月1日 / 11:08 PM

    プルーストを取り上げて下さって嬉しいです。
    楽しみにしています。

    いいね: 1人

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