
ギヨーム・アポリネールは、20世紀初頭、パブロ・ピカソを中心にした画家たちが新しい絵画表現を模索するのと同じ時代に、文学の世界で新しい美の追究を行った。
その成果の一つは「ミラボー橋(Le Pont Mirabeau)」を通してよく知られている。しかし別の方向にも進み、さらに革新的といえる詩を手がけた。
「月曜日 クリスティーヌ通り(Lundi rue Christine)」は、そうした試みの中で、最もよく知られた作品。
キュビスムの絵画と同じ発想に基づき、様々な言葉の断片が「同時」に「並列」して配置されている。
その手法によって、アポリネールは、「ミラボー橋」の抒情性とは違う抒情性、彼自身の言葉によれば、「場の雰囲気から生じる抒情性(lyrisma ambiant)」を生み出そうとした。

「会話詩(Poème-conversation)」とアポリネールが名付けたジャンルに属するこの詩は、会話の断片から成り立っている。
その会話は、題名の「月曜日(Lundi)、クリスティーヌ通り(rue Christine)」によって曜日と場所が示され、パリの6区にあった酒場で交わされたのではないかと推測される。
アポリネールは、あたかもその場に居合わせたかのように、そこで飛び交う言葉を次々に書き留め、何の脈絡もないかのように繋げていく。
その際、句読点が一切用いられていないために、全ての言葉が、酒場に立ち篭める煙のように漂っているといった印象を与える。

そして、その雰囲気から抒情性が立ち上ってくるのが、アポリネールの狙いだった。
La mère de la concierge et la concierge laisseront tout passer
Si tu es un homme tu m’accompagneras ce soir
Il suffirait qu’un type maintînt la porte cochère
Pendant que l’autre monterait





