「枯葉」は、どんなジャズマンも取り上げるスタンダード・ナンバーの一つ。
原曲は、フランスの有名な詩人ジャック・プレベールの作詞で、曲はジョゼフ・コスマ。1946年の映画「夜の門」の挿入歌として、イヴ・モンタンによって歌われた。
フランス語の「枯葉」Feuilles mortesは、かつて愛し合っていた恋人が、人生の中で静かに別れ、消え去っていくという、とてもロマンチックな歌詞を持つ。
その歌がアメリカに渡り、autumn leaves(秋の葉)になった。秋の木の葉が散り始める時、夏の日の口づけが終わったことを告げられ、寒い冬が予告されるという内容。
エディット・ピアフが英語とフランス語で歌っているヴァージョンがあるので、両方の歌詞を知るにはもってこい。
The falling leaves drift by the window
https://utaten.com/lyric/Nat+King+Cole/Autumn+Leaves/
The autumn leaves of red and gold
I see your lips, the summer kisses
The sun-burned hands I used to hold
Since you went away the days grow long
And soon I’ll hear old winter’s song
But I miss you most of all my darling
When autumn leaves start to fall
C’est une chanson, qui nous ressemble
Toi tu m’aimais et je t’aimais
Nous vivions tous, les deux ensemble
Toi que m’aimais moi qui t’aimais
Mais la vie sépare ceux qui s’aiment
Tout doucement sans faire de bruit
Et la mer efface sur le sable les pas des amants désunis
ジャズでは、マイルス・デイヴィスが、キャノンボール・アダレイたちと一緒に演奏したものが真っ先に思い浮かぶ。名演中の名演。マイルスは原曲の歌詞を尊重したトランペット演奏。キャノンボールのサックスは別れの切なさを歌い、ハンク・ジョーンズのピアノが訥々と別れを物語る。
サラ・ボーン(vo)は、スキャットだけで歌いきるという力業を発揮。ジャズの面白さを堪能させてくれる。ただし、好き嫌いが分かれるかもしれない。
ピアノ・トリオのお手本となるのが、ウイントン・ケリーのAutumn leaves。ポール・チェンバースのベースとジミー・コブのドラムスがきっちりとしたテンポを作り出し、その上をケリーのピアノがスインギーに踊る。
同じピアノ・トリオでも、キース・ジャレット・トリオの演奏は随分と違っている。ケリーが伝統的なジャズだとすると、キースは現代的。ジャック・ディジョネットのドラムが心地よくテンポを刻み、ゲーリー・ピーコックのベースがいい感じに歌っている。
同じように現代的で、スピード感に溢れるのが、ウイントン・マルサリスのトランペット。恋人たちが静かに別れを見つめる哀しみはどこに行ってしまったのだろう。でも、ジャズとして気持ちがいい。
最後に、ジャズではく、カウンター・テナー、フィリップ・ジャルスキーの素晴らしい歌声で歌われた「枯葉」を。映像も含め、素晴らしく美しい。
たった一つの曲からまったく違う音楽が生まれる。その演奏一つ一つが個性的で、魅力的。「枯葉」はジャズの面白さ、奥深さを感じるにはもってこいのスタンダード・ナンバーといっていいだろう。