日本では考えられないが、パリに住む人々は散歩の場所に墓地を選ぶことがある。多くの有名人の墓があるペール・ラシェーズ墓地はその代表。

この墓地はとても気持ちのいい散歩道になっていて、しかも巨大。春や秋、天気のいい日にのんびりとした時間を過ごすことができる。
ペール・ラシェーズ墓地で一番人気があるのは、ショパンの墓。いつ行っても花が飾られ、見物人たちの姿が絶えない。人のいない時を探すのが難しいほど。

ショパンの横には、フランス最高のジャズ・ピアニストと言ってもいいミッシェル・ペトルチアーニの墓がある。

画家としては、ドラクロワのお墓も。

そのすぐ近くには、19世紀の文学者たちの墓もある。バルザックとシャルル・ノディエのお墓はかなり立派。


そうした墓と比較すると、ジェラール・ド・ネルヴァルの墓はかなりシンプルで、この作家らしい。

バルザックは『ゴリオ爺さん』の最後の場面を、ペール・ラシェーズ墓地に置いている。
一人残ったラスチニャックは、墓地の高台の方へ数歩歩み、パリの両岸に沿ってくねくね と横たわっているパリを眺めた。そこには灯りがともり始めていた。彼の視線は、ほとん ど貪るようにヴァンドーム広場の円柱とアンヴァリッドの丸屋根のあいだに張りついた。 彼が入り込みたいと思っていた、あの社交界が息づいている場所だ。この唸りを立ててい る蜜蜂の巣に、まえもって蜜を吸い上げるかのような一瞥を投げた彼は、勇壮なことばを 吐いた。「さあ、俺とお前の番だ」。
バルザックがイメージしていたのは、こんな風景かもしれない。

12世紀にラテン語で書かれた激しい愛の書簡で有名なアベラールとエロイーズ。二人の墓は、死の後にやっと結ばれた姿を再現している。



こうした有名人たちの墓以外にも、興味深い彫刻が施された墓が数多くある。


ここで紹介した以外にも、たくさんの有名人の墓や興味深い墓石が数多くある。作家:アポリネール、モリエール、ラ・フォンテーヌ、コレット、アルフォンス・ドーデ、オスカー・ワイルド等。
画家:モジリアーニ、ジェリコー等。
俳優:サラ・ベルナール、シモーヌ・シニョレ等。
歌手:イヴ・モンタン、エディット・ピアフ、ジルベール・ベコー、ジム・モリソン等。
常に新しい出会いのある墓地。それがペール・ラシェーズだ。