映画誕生時から見る、映画の構成要素

普段、私たちは何となく映画を見ているが、映画はいくつかの基本的な要素から構成されている。

そうした要素は、全てが最初から存在したわけではなく、映画の進化に伴って徐々に付け加わっていった。
映画の誕生から歴史的に見ていくと、その進化が明確になる。

1)最初の映画 ワンカット・ワンシーン

リュミエール兄弟が、1895年、パリのグラン・カフェで世界初の映画を上映した。
その映画は、ワンカット・ワンシーン。つまり、撮影したままのフィルムを、そのままスクリーンに映写したもの。

最初に上映された映画「工場の出口」は、リュミエール兄弟の工場から出てくる人々の映像をそのまま流している。

1896年に上演された「列車の到着」。

この上映に立ち会った観客たちは、迫ってくる列車に自分たちが轢かれるのではないかと、恐怖を感じたという。
それほど、スクリーン上に映し出された「動く映像」は、圧倒的なリアルさを持っていた。

2)編集:特撮

ジョルジュ・メリエスが1896年に作った「消える女性」。

メリエスは手品師であり、奇術の技術を映像で表現した。
「消える女性」では、フィルムを編集することで、すでに特撮を行っている。

ワンカット・ワンシーンでは不可能なことが、編集によって可能になったことは、映画の発展にとって非常に大きな要素である。

3)編集:物語

1902年にジョルジュ・メリエスが作成した「月世界旅行」では、特撮と同時に、編集技術によって物語が語られる。

アメリカでは、1903年、「大列車強盗」が制作される。監督・製作・撮影はエドウィン・S・ポーター。


この映画では、ロケーション撮影やパン撮影などの技術で映像に工夫が加えられている。
しかし、それ以上に重要なことは、編集によって、映画に物語が付け加えられたことである。

4)俳優の演技、音楽:無声・白黒映画の完成形 

無声・白黒映画に音楽が加わり、俳優の演技と合わせて、今見ても素晴らしい無声映画が作られるようになる。

その代表作は、チャールズ・チャップリンの「街の灯」。1931年の作品。

最初の場面では、目の見えない女性と、チャップリンのやり取り。
花を落とし、それを拾おうとする女性の演技で、彼女の目が見えないことが表現される。そして、花を彼女に差し出すチャップリンは、彼女の目が見えないことに気づく。
水を汲んだ女性が、隣に座るチャップリンに水をかけるシーンは、コミックな場面。
チャプリンは、彼女の目が見えないことを利用し、自分をお金持ちだと思わせようとする。花をたくさん持ち、お金を払っているところの演技は、彼がそれっぽく見える。
ラスト・シーンでは、女性の目が見えるようになっている。
彼女のいる花屋の前を通りかかった浮浪者のチャップリン。彼女の目が見えることに気づき、うろたえる。その時のチャプリンの目の不安そうなこと。彼は急いでその場を立ち去ろうとする。
しかし、彼女は後を追いかけ、お金を渡すために、彼の手を握る。その時、手の感触で、浮浪者が彼だということに気づく。その時のヴァージニア・チェリル の演技も素晴らしい。目の表情、手の動き、身体全体で、愛を表現している。
純粋な愛の物語、俳優の演技、そしてバックに流れる音楽。それらが合わさり、「街の灯」を映画史上最高の傑作の一つにしている。

5)音声:トーキー映画

映像に俳優の言葉が加えられた最初の映画は、1927年にアメリカで作られた「ジャズ・シンガー」と言われている。

1928年には、全編がトーキーになったディズニーの「蒸気船ウィリー」が公開される。

6)カラー

最初のカラー映画は、ディズニーの「花と木」(1932年)だと言われている。

白黒の映像を見てきた後で、カラー映像を見ると、その違いがはっきりと意識できる。

実写映画で、全編カラーにしたものは、1935年に公開されたルーベン・マムーリアン監督の「虚栄の市」。

1937年には、ディズニーの「白雪姫」が公開される。

1939年には、「オズの魔法使い」や「風と共に去りぬ」が公開された。

ここまで来ると、現在の映画とほとんど変わりがない。

映画を構成する基本的な要素は、約40年という短期間で、ほとんど全てが出そろったといえる。

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