ハイドン パリ交響曲 Haydn Symphonies parisiennes 古典的様式の完成

ハイドンの交響曲第82番から87番までの6曲は、パリ交響曲と呼ばれている。
名前の由来は、パリにある大編成のオーケストラの団体コンセール・ド・ラ・オランピックから注文を受けて、1785年から86年にかけて作曲したことによる。

6曲の中から、「王妃」という副題がついている第85番を聞いてみよう。
マリー・アントワネットがこの曲を気に入ったため、「王妃」と名付けられたという逸話がある。
豪華さを感じるために、現代のオーケストラ、レオナール・バーンスタイン指揮、ニューヨーク・フィルハーモニーの演奏で。

Vigée-Lebrun, Marie Antoinette

この時代、ハイドンは、交響曲の古典的様式を完成させたと言われている。
第1楽章は、動き。
オペラの序曲から産まれたもので、雄大さとか暖かさ、動きが盛り込まれた。昼間部では、激しい部分と柔らかな部分が交差し、フーガなどが入ることがある。そして、曲の冒頭に戻る。
第2楽章は、歌。
美しい旋律の歌が様々に変化し、戯れや感情を表現する。
第3楽章は、ダンス。
音楽とダンスは当時切り離せない関係にあった。そこで、第3楽章では、メヌエットが使われ、中間部分では2,3人で演奏されるトリオの部分が含まれた。
第4楽章は、笑劇。
終楽章は曲全体の集大成。第1楽章と同じ早いテンポの楽章で、コミック・オペラのフィナーレのようにな印象を与える。その中で、誰もが口ずさめるメロディーや、ダンスのリズム、おどけ、驚きの要素も含まれていた。

こんなに楽しい交響曲を愛したマリー・アントワネットが、ハイドンのシンフォニーを耳にした2年後、断頭台に立つ運命にあったことを知ると、複雑な気持ちになったりもする。

パリ交響曲の6曲全てを、古楽器を使った演奏で聞くことができる映像がある。
ロジャー・ノリントン指揮、カメラータ・ザルツブルク演奏。

モーツアルトにも、「パリ」という副題を持つ交響曲がある。1778年に作曲された第31番だ。
パリの音楽団体の支配人から注文を受けたので、「パリ」と呼ばれている。
こちらは、まだ3楽章のシンフォニー。

第一楽章では、強い主音が鳴ったあと、すぐオクターブの上昇があり、音楽よりも社交に関心のあるパリの聴衆を驚かせ、音楽に注意を向けさせようとしたという説がある。その後も、ど肝を抜かされます。大編成の息の揃った迫力を狙っています。ピアノとフォルテの激しい交代で、メロディの美しさより、インパクト重視の楽章になっている。

モーツアルトが、パリから父親に宛てた手紙には、「最初のアレグロのまん中に、絶対に受けると思っていたパッサージュが一つありました。実際、聴衆は熱狂して、拍手喝采でした。」と書かれている。

ニコラス・アーノンクール指揮、ウィーン・フィルの演奏で聴いてみると、モーツアルトが、なかなか静かにならないパリの連中の注意を引こうとしている感じが伝わってくる。

パリを副題にしたシンフォニーでも、モーツアルトをハイドンでは随分と違っていることがわかる。
もちろん、どちらも素晴らしいし、楽しい。

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