音楽と身体の共鳴 

人間の身体の中の水分の量は、体全体の約60%と言われている。
水の中で誕生した最初の生命が、今でも一人一人の人間に受け継がれ、命の水が体の中に流れているといってもいい。

体内の水分は体液として循環し、体中に栄養を運び、皮膚に血液を循環させて汗を出すことで体温を一定に保ち、新陳代謝がスムーズに行われるための働きをする。体調の維持のために、スムーズな体液の循環は欠かせない。
しかも、コップを指で弾けば中の水が振動するように、体液も体内の器官も振動する。
それと気づかないけれど、人間の身体は常に振動し、振動しながら身体全体の調和を保っている。

体の外に広がる空間の中にも、振動しているものがある。それは、音。
音は物体が振動することで発生する。
その振動が空気の振動として鼓膜に伝わることで、人間は音として認識する。つまり、音とは空気中を伝わる振動なのだ。

そして、音には共鳴作用がある。
同じ振動数を持つものであれば、一方の振動が他方の振動を増幅したりする。
逆に、異なる振動数の二つの音の間では、共鳴は起こらない。

音楽が音から出来ていることを考えると、身体という振動体は、音の振動と共鳴することで音楽の影響を受けることが理解できる。

音と音楽

「音」

音には、「大きさ」、「高さ」、「音色」という3つの性質がある。

「大きさ」は、空気の圧力の大小。
大きな音を聞くと耳が痛くなるのは、鼓膜に強い圧力がかかるため。

「高さ」は、高い音か低い音かの違い。
1秒間に空気が振動する回数によって決まる。測定の単位は周波数(「Hz(ヘルツ)」)。
一定時間内に振動数が多いほど高い音となり、振動数が少ないほど低い音になる。
人間の耳には20Hzから2万Hzまでの音が聞こえると言われている。
そのために、CDではその周波数の音だけで限定されている。
それに対して、ハイレゾ音源は、それ以上の周波数の音まで含まれているために、音がよいと言われることもある。
ただし、人間の耳には聞こえないのだから、意味がないという意見も・・・。

「音色」は、音が明るいか暗いかの違い。
「倍音」(周波数の整数倍の振動)が多く含まれると明るい音になり、少ないと暗い音になる。

「音楽」

音楽に関して、文部科学省の「学習指導要領」には次のような記述が見られる。

小学校の事項アにおいては,音楽を形づくっている要素のうち,「音楽を特徴付けている要素」(音色,リズム,速度,旋律,強弱,拍の流れ,フレーズ,音の重なり,音階や調,和声の響きなど)及び「音楽の仕組み」(反復,問いと答え,変化,音楽の縦と横の関係など)を聴き取り,それらの働きが生み出すよさや面白さ,美しさを感じ取ることとしています。

中学校音楽科については,(中略)今回の改訂に当たり,音(音色),音と音との時間的な関係(リズム,速度),連なりや織りなす関係(旋律,テクスチュア),音量の変化(強弱),音楽の組立て方(形式,構成)のような大きなくくりで再整理し,この順に「音色,リズム,速度,旋律,テクスチュア,強弱,形式,構成などの音楽を形づくっている要素や要素同士の関連を知覚し,それらの働きが生み出す特質や雰囲気を感受すること」(事項ア),「要素とそれらの働きを表す用語や記号などについて,音楽活動を通して理解すること」(事項イ)を〔共通事項〕として示しました。

哀しいほど官僚的な文章で、こうしたことをかみ砕き、生徒たちに伝える先生の役割も大変だろう。
しかし、小学校の音楽教育の目的が、音楽の「よさ」「面白さ」「美しさ」を教えることであることは心強い。

音の連なりで構成される音楽の振動が、人間の肉体という振動体とうまく共鳴すれば、音楽の性質が人間の性質を増幅させる可能性がある。
とすれば、心地よい音楽を聴くことで、身体も心地よく振動し、精神的にも心地よさを感じることができるだろう。

振動との関係で見ると、音楽の要素の中で音そのものの性質は、強弱(大きさ)、音色の2つ。
後は、音の組み合わせであり、速度、リズム感、旋律(メロディー)、和音(ハーモニー)が、主な要素となる。

さらに、歌の場合には歌詞が加わり、言葉が一定の役割を果たす。

私たちはこうした要素で構成される音楽を聞き、テンポの早い曲であれば軽快な感じを受け取り、美しいメロディーに感動したりする。そして、楽しくなったり、悲しみを感じたりする。
音楽と肉体が共鳴することで、心も共鳴する。
臓器も振動体であり、とりわけ心臓は鼓動しているのだから、人間全体が音楽と共鳴するのは当たり前なのかもしれない。

ちなみに、音楽療法では、音楽の影響を次のように説明している。


以上のように考えてみると、音楽が人間にとっていかに重要な役割を果たしているのかがよくわかる。

気分に合わせて音楽を聴く時があってもいいし、ある気分になるためにそれに合った音楽を聞くのもいい。
小学校の音楽教育の最終的な目的が音楽の「美しさ」を感じさせることであるように、音楽の「美しさ」を学び、美しい音楽と共鳴する身体と心を育成することが、人間の幸福につながると考えてみたい気がする。

個人的には、ジャズ・ピアニスト、トミー・フラナガンの「Alone too long」は、とりわけ美しく感じる。

音色に関しては、私たちの耳はやはり人間の声に最も敏感であり、2台のピアノの音色を聞き分けることは非常に難しいが、声に関してはすぐに聞き分けることができる。

Dionne WarwickのThat’s What Friends are forを聞くと、4人の歌手の声を聞き分けられ、しかもこれからDionne Warwickの歌声を聞くと、それとわかるようになるだろう。
そして、What friends are forという歌詞と美しいメロディーが時々、頭か心の中に甦り、身体と共鳴するかもしれない。