
ジェラール・ド・ネルヴァルは一度だけ「美学(esthétique)」という言葉を使ったことがある。
その美学とは、「アレンジ(arrangement)」に価値を置いたもの。彼の美学では、アレンジが「構成(composition)」と同列に置かれる。
アレンジとは、本来、配置や配列をすること。そこから発展して、すでに存在する原型の配置や配列に手を加え、最初とは違う雰囲気に作り替えることを意味する。
日本語でも、音楽に関しては、原曲をアレンジするといった表現がしばしば使われる。
ネルヴァルの考えで興味深いのは、アレンジ(編曲)と創作や作曲を同じものと見なすことにある。
言うなれば、編曲した曲を、原曲とは別の、新しい曲と見なす。
独創性という視点から見れば、盗作を堂々と認めることになってしまう。
ネルヴァルは、アレンジの美学を通して何を考え、どのような作品を生み出そうとしていたのだろう。
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