
個人的に今のフランスで一番歌声が美しいと思える歌手はアンヌ・シラ(Anne Sila)。
フランスではよく知られているが、日本ではまったくといっていいほど無名なので、彼女の歌を少し紹介してみたい。
S’il suffisait d’aimer

個人的に今のフランスで一番歌声が美しいと思える歌手はアンヌ・シラ(Anne Sila)。
フランスではよく知られているが、日本ではまったくといっていいほど無名なので、彼女の歌を少し紹介してみたい。
S’il suffisait d’aimer
ルイ・アームストロングが歌うWhat a wonderful worldは、「この素晴らしき世界」という曲名で日本でもよく知られている。
歌詞を辿ると、穏やかで美しい世界の様子が描かれ、« I see friends / shaking hands / saying,”How do you do ?” / They’re really saying / “I love you”と、愛を歌っている。
ほぼ同じ題名の曲( What a ) Wonderful world が、サイモンとガーファンクル、そしてジェームズ・テーラーによって歌われたことがある。
学校で勉強する色々な教科のことはよくわからない(Don’t know much about … )し、自分は成績がいい生徒(’A’ student)ではないけれど、でも、1+1が2ってことは知っているし、ぼくが君を愛していることも知っている、だから、その1が君と一緒で、君がその1である僕を愛してくれたらいいなと、こちらの歌も愛を歌っている。
どちらの場合も、youが大好きな君であるのが最初の意味だが、その背景にはもっと大きなyouがある。二つの曲の背景にあったのが、差別や偏見に満ち、戦争が起こり、人間と人間が対立する社会情勢だったことが分かると、歌の意味がもっとはっきりと伝わってくる。
最初に、ルイ・アームストロングとアート・ガーファンクルたちの歌を聴いてみよう。
« Si tu t’imagines »は、レイモン・クノーが1946年に出版した詩集『運命の瞬間(L’Instant fatal)』の中に収められた一編。その際のタイトルは、« C’est bien connu »。
その後、「枯葉」で知られるジョゼフ・コズマが曲をつけ、ジュリエット・グレコが歌った。
詩のテーマは、古代ローマから伝わる文学のテーマ「carpe diem(saisir le jour、今を掴め)」。
(参照:Carpe diem カルペ・ディエム 今を生きる)
レイモン・クノーは、いかにも『地下鉄のザジ』の作者らしく、16世紀の詩人ピエール・ド・ロンサールの有名な詩「あなたが年老い、夕べ、燭台の横で(Quand vous serez bien vieille, au soir, à la chandelle)」などを下敷きにしながら、20世紀中頃の口語や俗語を交え、音が耳に残るパロディ作品を作り上げた。
(参照;ロンサール 「あなたが年老い、夕べ、燭台の横で」 Pierre de Ronsard « Quand vous serez bien vieille, au soir, à la chandelle » )
幸い、youtubeには、ジュルエット・グレコが1961年に東京で公演した際の映像がアップされている。彼女の表情が表現豊かに変化する様子を見るだけで、少女の瑞々しさと老婆の衰えとの対比を描いた詩句の内容が伝わってくる。だからこそ、今すぐに、「命のバラを摘め」 « cueille les roses de la vie »、と。
宝塚歌劇団がモデルにしたと言われているミスタンゲット。彼女が”Je suis de Paris”をムーラン・ルージュの舞台で歌った際の映像を見ることができる。
“Oui, je suis d’ Paris”
Quand on m’voit
On trouve que j’ai ce petit je n’sais quoi
Qui fait qu’souvent l’on me fait les yeux doux
Ce qui me flatte beaucoup.
とても面白いyoutubeビデオに出会ったので、紹介したい。
フランスのヴァイオリニスト、エスター・アブラミ(Esther Abrami)が、同じヴァイオリンを使い、500ドルから160.000ドルの弓を変えて弾き、Can you hear the difference between a cheap and expensive violon bow ?というもの。
もう1つは、ヴァイオリンを聞いて猫たちがどんな反応をするでしょうか、というもの。
こんな風に聞くと、クラシック音楽も身近になってくる。

ある時期から日本で「癒やし」という言葉が爆発的に使われるようになった。
しかし、その言葉があまりにも一般化したために、いつ頃から、誰の影響で、これほど普及したのか、きっかけが忘れられているように思われる。
私の個人的な経験では、「癒やし」という言葉は、大江健三郎が1980年代に発表した作品群、とりわけ『「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち』や『新しい人よ眼ざめよ』などの中で集中的に用いたのように記憶している。
それらの作品群の中心にいる存在は、光(ひかる)と呼ばれる障害を持つ子供。大江自身の子供がモデルになっている。

1994年に大江がノーベル賞を受賞した際の講演「あいまいな日本の私」で、「光の作品は、わが国で同じ時代を生きる聴き手たちを癒し、恢復させもする音楽」と述べたことから、一般のメディアでも「癒やし」という言葉が広く流通するようになったのではないかと思われる。(「癒やし」と「癒し」、どちらの表記も使われる。)
大江光の音楽は、今ではあまり聞かれなくなってしまったが、聴く者の胸の奥まで届く、優しい響きを持っている。
« Who can I turn to (When nobody needs me) »は題名の通り、誰にも言えない気持ちを、愛する人に語るようでいて、実は自分にこっそりと語りかけている曲。
悲しいけれど、しっとりとし、美しい。
Tony Bennettの歌声を聴きながら歌詞を見てみよう。英語がやさしく聞こえる。(二重の意味で。)

2023年7月21日にトニー・ベネット(1926-2023)が亡くなったというニュースが、様々なメディアで報じされていた。享年96歳。
彼は長いキャリアの中で数多くの賞を受賞し、数年前まで現役だったので、代表作を数え上げればキリがない。
そんな中で、ジャズ・ファンとしては、やはりビル・エヴァンスと共演した2枚のアルバムをつい聴きたくなる。
幸い、youtubeには、complete recordingsがアップされているので、二人の素晴らしい演奏を全て聴くことができる。
ポール・ヴェルレーヌの「シテール島(Cythère)」は、1869年に出版された『艶なる宴(Fêtes galantes)』の中の一編で、ロココ絵画の雰囲気を19世紀後半に再現している。

19世紀前半、ルイ15世やルイ16世の時代の装飾様式をロココ(rococo)と呼ぶようになったが、ロココは時代遅れ様式というニュアンスを与えられていた。
そうした中で、一部の人々の間で、18世紀の文化全体を再評価する動きが生まれ、ロココ絵画に言及する美術批評や文学作品も現れるようになる。
アントワーヌ・ヴァトーの「シテール島の巡礼(Le Pèlerinage à l’île de Cythère)」は、18世紀の前半に、「艶なる宴(fête galante)」という絵画ジャンルが生まれるきっかけとなった作品だが、19世紀前半のロマン主義の時代、過去への追憶と同時に、新たな美のモデルとして、文学者や評論家によって取り上げられるようになった。

美術評論家シャルル・ブランは、「艶なる宴の画家たち(Les peintres des Fêtes Galantes)」(1854)の中で、以下のように述べている。
Éternelle variante du verbe aimer, l’œuvre de Watteau n’ouvre jamais que des perspectives heureuses. (…) La vie humaine y apparaît comme le prolongement sans fin d’un bal masqué en plein air, sous les cieux ou sous les berceaux de verdure. (…) Si l’on s’embarque, c’est le Départ pour Cythère.
「愛する」という動詞の果てしない変形であるヴァトーの作品は、幸福な光景しか見せることがない。(中略) そこでは、人間の生活は、野外で、空や緑の木立の下で行われる仮面舞踏会の、終わりのない延長のように見える。(中略) もし船に乗って旅立つとしたら、それは「シテール島への出発」だ。
こうした記述を読むと、愛の女神ヴィーナスが誕生後に最初に訪れたといわれるシテール島が、恋愛の聖地と見なされていたことがわかる。
ヴェルレーヌも、ロココ美術復興の動きに合わせ、彼なりの『艶なる宴』を作り出した。
そこでは仮面舞踏会での恋の駆け引きが音楽性豊かな詩句で描き出され、「シテール島」においても、無邪気で楽しげな恋の場面が目の前に浮かび上がってくる。
アメリカのジャズ歌手メロディ・ガルドが、コロナ禍の間パリに住み、録音やコンサートをしたことを紹介したニュース。
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