
ジャズ入門に最適なアルバム。そして、どんなにジャズに親しんでも素晴らしいと思い続けられるアルバム。マイルス・デイヴィスが1956年の5月と10月に録音し、その後、4枚のLPとして発表された演奏は、まさにそうしたアルバムだといえる。
4つのアルバムに共通しているのは、最初に収録された曲と演奏の素晴らしさ。そして、その後に続く曲のヴァラエティ。スタンダート曲とオリジナル曲のバランス。スロー、ミディアム、ファストと色々なテンポの曲を織り交ぜてあり、あっという間に1枚のアルバムを聴き終わってしまう。
1)Workin’
2)Steamin’
3)Relaxin’
4)Cookin’
マイルス・デイヴィスのトランペット、ジョン・コルトレーンのテナー・サックスという2管編成。
リズム隊は、レッド・ガーランドのピアノ、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラムス、そして、ベースはポール・チェンバース。
2日間のセッションの最後に演奏されたのは、Cookinの最初に入っているMy funny Valentine. 最高に抒情的なこの曲を聴くと、マイルス五重奏団のクオリティの高さがすぐに理解できる。
Relaxin’の最初の曲、Il I were a Bellでは、マイルスのミュートの演奏が心地良い。ミュートとは、トランペットの音を弱めるために取り付けられる「弱音器」。
マイルスのミュート演奏は、繊細で複雑な音色のために、「卵の殻の上を歩いているような」と形容された。
ジャズの歴史を振り返ると、それまでは、テーマが決まり、後はその場その場のインスピレーションで演奏されてきた。
そうしたジャズが、マイルス・デイヴィスを通して、より洗練された音楽へ向かうようになった。その転換期にあるのが、1956年のセッションだといえるだろう。