サン=テグジュペリ 『星の王子さま』  Antoine de Saint-Exupéry Le Petit Prince 天空のラピュタ 君をのせて

小さな王子さまは、一年間地球で過ごした後、毒蛇に噛まれて自分の星に戻っていく。
その直前、パイロットに一つのメッセージを伝える。
アプリボワゼが終わり二人の間に絆が出来上がった後であれば、別れた後でも世界で唯一の存在(unique au monde)であることに変わりはない。それだけではなく、他のものにまで愛情が及ぶ。そうした教えをニコニコと笑いながら告げる。

その王子さまの言葉からインスピレーションを受けて、宮崎駿監督は「天空のラピュタ」のエンディングで歌われる「君を乗せて」の歌詞を作詞したと言われている。

王子さまはパイロットにどんなことを告げ、「天空のラピュタ」はその言葉から何を私たちに伝えているのだろう。

Mais il me dit:
– Cette nuit, ça fera un an. Mon étoile se trouvera juste au-dessus de l’endroit où je suis tombé l’année dernière…
– Petit bonhomme, n’est-ce pas que c’est un mauvais rêve cette histoire de serpent et de rendez-vous et d’étoile…
Mais il ne répondit pas à ma question. Il me dit:
– Ce qui est important, ça ne se voit pas…
– Bien sûr…
– C’est comme pour la fleur. Si tu aimes une fleur qui se trouve dans une étoile, c’est doux, la nuit, de regarder le ciel. Toutes les étoiles sont fleuries.
– Bien sûr…

でも、彼はぼくに言った。
「今夜で一年になるね。ぼくの星は、去年ぼくが落っこちたあの場所の真上に来る・・・。」
「坊や、悪い夢さ、ヘビや待ち合わせや星の話は・・・。」
彼はぼくの質問に答えなかった。彼はぼくに言った。
「大切なことはね、目に見えないよ・・・。」
「もちろん・・・。」
「花のことと同じさ。もし一つの星の中にある一本の花が好きなら、夜、空を眺めると穏やかな気持ちがする。星がみんな花開いてるんだ。」
「もちろん。」

(朗読:4分12秒から)

王子さまの星は一年かけて地球を一周したらしい。彼が落ちて来てから一年後、星は再び同じ場所に戻ってくる。そして、王子さまは自分の星に戻っていく。
毒蛇はその助けをしてくれる存在。
毒の辛さは、パイロットとの別れがもたらす悲しさの表現だろう。

パイロットは別れを予感し、ヘビがまた王子さまと出会うこと(rendez-vous)や星のことは悪い夢のようだ、と王子さまを慰めようとする。

しかし、二人の別れは必然的にやってくる。王子さまは、その別れが悲しみの源であり続けるのではないことを、パイロットに教えてくれる。

まず最初、王子さまは、キツネに教えられた秘密から始める。
キツネはこんな風に言った。
L’essentiel est invisible pour les yeux.
王子さまは、それを自分の言葉で言い換える。
Ce qui est important, ça ne se voit pas.
大切なことは目に見えない。

その後、もう少し謎めいた言葉で説明を続ける。
一つの星の中の一本の花が好きなら、空を眺めると穏やかな気持ちになる。全ての花が開いて見える。
その謎は、「一つ」と「全て」の関係にある。なぜ一つを好きだと、全ての花が開いているように感じるのだろう。

[…]
– Tu regarderas, la nuit, les étoiles. C’est trop petit chez moi pour que je te montre où se trouve la mienne. C’est mieux comme ça. Mon étoile, ça sera pour toi une des étoiles. Alors, toutes les étoiles, tu aimeras les regarder… Elles seront toutes tes amies. Et puis je vais te faire un cadeau…

(前略)
「夜、星をみんな見て。ぼくのところのは小さすぎるんで、ぼくの星がどこにあるか見せられない。でも、その方がいいんだ。ぼくの星は、おじさんには、たくさんの星の中の一つにすぎない。だから、おじさんは、どの星を見るのも好きになるんだ。星みんながおじさんの友だちになる。これから一つ贈り物するよ・・・。」

王子さまの星は小さくて、どの星なのか示すことができない。従って、パイロットは、満天の星空を見上げ、数多くの星の中のどれかが王子さまの星なのかわからない。
全ての星が、王子さまの星である可能性がある。そこで、どの星も愛しいと思うようになる。

これが、「大切なものは目に見えない」というキツネの教えに基づきながら、王子さまがパイロットに告げる教えの中心である。

その教えを、宮崎駿監督は、「君をのせて」の中で次のように表現した。

あの地平線 輝くのは/どこかに君をかくしているから
たくさんの灯がなつかしいのは/あのどれかひとつに君がいるから

こんな風にして、王子さまからパイロットへ、パイロットから宮崎監督へ、宮崎監督から「天空のラピュタ」の観客へ、一つのメッセージが伝えられていく。

そのメッセージを伝える王子さまの微笑みは、私たちに与えられたプレゼントでもある。

Il rit encore.
– Ah! petit bonhomme, petit bonhomme j’aime entendre ce rire !
– Justement ce sera mon cadeau… […]
– Que veux-tu dire ?
– Les gens ont des étoiles qui ne sont pas les mêmes. Pour les uns, qui voyagent, les étoiles sont des guides. Pour d’autres elles ne sont rien que de petites lumières. Pour d’autres qui sont savants elles sont des problèmes. Pour mon businessman elles étaient de l’or. Mais toutes ces étoiles-là se taisent. Toi, tu auras des étoiles comme personne n’en a…
– Que veux-tu dire ?
– Quand tu regarderas le ciel, la nuit, puisque j’habiterai dans l’une d’elles, puisque je rirai dans l’une d’elles, alors ce sera pour toi comme si riaient toutes les étoiles. Tu auras, toi, des étoiles qui savent rire !
Et il rit encore.

彼はまた笑った。
「ああ! 坊や、坊や、その笑い声を聞くのが大好きなんだ!」
「これが贈り物・・・。(中略)」
「どういうこと?」
「みんな星を持っているけど、同じ星じゃない。旅をする人には、星はガイドになる。他の人には、星は小さな光。お勉強する人には、何かの問題。ビジネスマンには、星はお金。でも、そういう星はどれも口をきかない。おじさんは、誰も持っていないような星を持つようになる。」
「どういうこと?」
「夜、空を見る時ね、ぼくが星のどれか一つに住んでいるから、ぼくがどれか一つの中で笑っているから、だから、おじさんにとって、全部の星が笑ってることになる。おじさんは笑う星を手に入れることになる。」
そして、彼は笑った。

星がどのような存在なのかは、見る人によって違う。つまり、星自体の問題ではなく、見る人間の心のあり方が問題なのだ。

星が笑っているのを見ることができるのは、心が微笑んでいる人。

– Et quand tu seras consolé (on se console toujours) tu seras content de m’avoir connu. Tu seras toujours mon ami. Tu auras envie de rire avec moi. Et tu ouvriras parfois ta fenêtre, comme ça, pour le plaisir… Et tes amis seront bien étonnés de te voir rire en regardant le ciel. Alors tu leur diras: “Oui, les étoiles, ça me fait toujours rire !” Et ils te croiront fou. Je t’aurai joué un bien vilain tour…
Et il rit encore.

おじさんの心が慰められる時には、(人間はいつでも慰めさめれるもの。)ぼくと出会ってよかったと思ってくれるでしょ。おじさんはずっとぼくの友だちでいる。ぼくと一緒に笑いたくなる。時々、窓を開ける、こんな風に、楽しいから・・・。おじさんの友だちは、おじさんが空を見上げて笑うのを見て、驚くかもしれない。そしたら、こう言って。『そうさ、星全てが、ぼくをいつでも微笑ませてくれる。』 みんなはおじさんの気が変になったと思うかもしれない。そんな風になると、ぼくはおじさんにいたずらしたことになる・・・。」

『星の王子さま』を読み、王子さまのメッセージを受け取った読者は、読んでよかったと思う。ちょうと、パイロットが王子さまと出会ったことに満足する(content de m’avoir connu)ように。

星を見るのは功利的な目的のため、例えば、道案内のためとか、天文学のためとか、お金儲けのため、という人々がいる。

他方、王子さまと一緒に笑うことができるのは、ただ楽しいから(pour le plaisir.)、星を見る人たち。
意味もなく星を見て微笑む姿は、合理的な目的意識を持つ人々には、気が狂っている(fou)と思われるかもしれない。
しかし、どこかの星で王子さまが笑っていると思うだけで、幸せを感じられるとしたら、王子さまの意地悪ないたずら(un bien vilain tour)にひっかかるのも悪くない。

こうした価値観は、『星の王子さま』が、目に見える現実よりも目に見えない心の世界に価値を置く、ロマン主義的な思想に基づいていることを示している。
「トトロ」や「天空のラピュタ」を初めとするジブリ・アニメも、目に見える現実よりもトトロのいる世界を愛するというところから、ロマン主義的世界観に土台を置いていると考えることができる。

それは決して、目に見える現実をなおざりにするという意味ではない。パイロットが現実世界に戻り、ラピュタから飛び立ったパズーとシータが地上に向かって降下していいくように、人間は現実を生きる存在である。
小さな王子さまも、ジブリの主人公たちも、現実を生きるときに大切な秘密を、様々な形で、読者や観客に伝えているのである。
そのメッセージを受け取るかどうかは、読者が喜び(plaisir)を感じるかどうかにかかっている。

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