
京都の南の端、奈良との境に位置する浄瑠璃寺には浄土式庭園があり、秋にはとりわけ美しい姿を見せる。
その美しさは、人間の住む地上に極楽浄土を造りだそうとした志を実現しているようでもある。
庭園の中央には清浄な池が置かれ、東側には三重塔、西側には阿弥陀堂が配置されている。

さっそく入口の門をくぐり、浄瑠璃寺の伽藍の中に入っていこう。

門を過ぎ、少し歩くとすぐに池が見えてくる。
この池の水は、北側の山麓から湧き出す二つの渓流から流れ込んでいるもので、その間の僅かな部分が池の中に突き出し、中島になっている。

池の東側には、三重塔が小高い丘の上にそびえ立つ。


この塔には薬師如来が祀られている。
薬師如来は、現世の苦しみを除く仏であり、東方浄瑠璃世界に住むとされている。
浄瑠璃寺という名称の由来がそこにある。
池を挟んで反対の西側では、阿弥陀堂が静かな佇まいを見せている。


阿弥陀仏は、西方にある理想世界、極楽浄土に人間を迎えてくれる仏。
従って、三重塔のある東岸を「此岸(しがん)」と考え、西岸は阿弥陀如来のいる「彼岸(ひがん)」と見ることもできる。
境内の中心に位置する池には中島があり、中央に弁天祠が置かれて、先端は荒磯風の州浜に立石が置かれている。

平安時代に庭園を造る際の指針となった『作庭記』には、石を立てる際の注意として、まっさきに「生得の山水をおもはへて」とある。
自然本来の姿に似せることが最も重要な要素であったことがわかる。
自然を象徴する池を中心にして、東に現世、西に浄土を配した伽藍配置は、世界全体を表現している。
私たちは、浄瑠璃寺の入り口を入り、三重塔を通って阿弥陀堂へと向かうことで、薬師如来に送り出されて阿弥陀如来の元へと向かうという願いを、束の間の間だけだとしても、実現することが可能になる。
