ペロー 巻き毛のリケ Perrault Riquet à la Houppe 変身を可能にするものは何か? 3/7

リケが姉に逢い、最初に口にしたのは彼女の美しさ。としたら、次に話題にするのは、彼女の2つ目の特色、つまり愚かさということになる。

では、愚かさについて話ながら、彼女に気に入られるためにはどうしたらいいのだろう?

« La beauté, / reprit Riquet à la Houppe, /est un si grand avantage / qu’il doit tenir lieu de tout le reste, / et, quand on le possède, /  je ne vois pas / qu’il y ait rien / qui puisse nous affliger beaucoup.
— J’aimerais mieux, / dit la princesse, / être aussi laide que vous, / et avoir de l’esprit, / que d’avoir de la beauté / comme j’en aies, / et être bête / autant que je le suis.
— Il n’y a rien, / Madame, / qui marque davantage / qu’on a de l’esprit / que de croire n’en pas avoir, / et il est de la nature de ce bien-là / que, / plus on en a, / plus on croit en manquer.
— Je ne sais pas cela, / dit la princesse ; / mais je sais bien / que je suis fort bête, / et c’est de là / que vient le chagrin / qui me tue.

「美しさは」と巻き毛のリケが言った。「大変に大きなアドヴァンテイジなので、他の全てのものの代わりになるに違いありません。人がそのメリットを持っている時には、私たちをひどく苦しめるほんの僅かなことも、あるとは思えません。」
「私にとって好ましいのは」と王女は言った。「あなたと同じように醜くてもいいので、エスプリを持つことです。私が持っているような美しさを持ち、今の私がそうであるように愚かであるよりも、です。」
「人がエスプリを持っていることをしるすものとして、自分がエスプリを持っていないと思うことほど確かなことは何もありません。エスプリを持っていればいるほど、それが欠けていると思うことこそ、エスプリという良きものの性質なのです。」
「私にはそんなことはわかりません。」と王女は言った。「とにかく、自分がひどく愚かだということはわかっています。そのために、ひどく悲しく、死んでしまいたいほどなのです。」

 La beauté (…) est un si grand avantage / qu’il doit tenir lieu de tout le reste

si… que… :
とても・・・なので・・・。

avantage :
アドヴァンテイジ、有利な点。

tenir lieu de … :
代わりになる。

je ne vois pas / qu’il y ait rien / qui puisse nous affliger beaucoup

qu’il y ait rien qui… :
ait はavoirの接続法現在。
je ne vois pas (わからない)の目的節であり、わからないことの内容。従って、現実に起こることではなく、その概念であることを示すために、接続法が使われる。

rien :
ほんの僅かなもの、の意。

qui puisse :
puisseは、pouvoirの接続法現在。

J’aimerais mieux (…) être aussi laide que vous, / et avoir de l’esprit, // que d’avoir de la beauté / comme j’en aies, / et être bête / autant que je le suis.

mieux… que… :
que以下のことよりも、・・・の方がいい。queの前後が比較の内容。

avoir de la beauté / comme j’en aies :
en はbe la beautéを指す。
comme … は、・・・のような。
aiesは接続法現在。

autant que je le suis :
autant que… は、・・・と同じだけの。
leはbêteを指す。
je suisと直説法現在なので、女王は現実に自分が愚かだと思っていることになる。

美に関しては、comme j’en aies、愚かさに関しては、autant que je le suis. 接続法(aies)と直説法(suis)が使い分けられている。そのことは、私が美しいという場合には断定ではなく、愚かという場合には現実にそうだと思っていることを示していて、王女の言葉遣いは非常に洗練されている。
そのことが、次のリケの言葉につながる。

Il n’y a rien (…) qui marque davantage / qu’on a de l’esprit / que de croire n’en pas avoir,

marque (…) que … :
(マークする、しるす)の内容は、que以下(on a de l’esprit)。
エスプリを持っていることをしるす。

davantage … que de croire n’en pas avoir. :
davantage … 以上に、(比較)

n’en pas avoirのen は de l’esprit.

王女は自分にはエスプリがなく、愚かであるという自覚がある。
リケはその思いを利用して、エスプリがないと思うことほど、エスプリを持っていることを示すものはないと語り掛ける。
この言葉は非常にエスプリが聞いていて、宮廷での洗練された会話の見事な例だといえる。

il est de la nature de ce bien-là / que, / plus on en a, / plus on croit en manquer.

il est de la nature … que… :
ilは非人称、que以下の内容を指す。
natureは、性質、の意。
que以下のことは、・・・の性質に属する。

ce bien-là :
bienは、善、よいもの、という意味の名詞。

plus…, plus… :
・・・であればあるほど・・・。

on en a / en manquer
en は de l’esprit.


c’est de là / que vient le chagrin / qui me tue.

de là :
そのことから。

chagrin qui me tue :
私を殺すほどの悲しみ。
tueはtuerの接続法現在。(形は直説法現在と同じ。実際に殺すのではなく、殺すという概念を示しているので接続法に置かれている。)


— Si ce n’est que cela, / Madame, / qui vous afflige, / je puis aisément / mettre fin à votre douleur.
— Et comment ferez-vous ? / dit la princesse.
— J’ai le pouvoir, / Madame, / dit Riquet à la Houppe, / de donner de l’esprit / autant qu’on en saurait avoir / à la personne / que je dois aimer le plus ;/ et comme vous êtes, / Madame,/ cette personne, / il ne tiendra qu’à vous / que vous n’ayez autant d’esprit / qu’on en peut avoir, / pourvu que / vous vouliez bien m’épouser. »
La princesse demeura toute interdite, et ne répondit rien.
« Je vois, / reprit Riquet à la Houppe, / que cette proposition vous fait de la peine, / et je ne m’en étonne pas /; mais je vous donne un an tout entier / pour vous y résoudre. »

「そのことだけが貴方を苦しめているのでしたら、私は簡単に貴方の苦痛を終わらせることができます。」
「どんな風になさるのですか。」と王女が言った。
「私には力があるのです。」と巻き毛のリケが言った。「私が最も愛することになる方に、人が持ちうる限りのエスプリを与える力です。そして、貴方こそがその方なので、後は貴方だけにかかっています、人が持ちうるだけのエスプリを貴方がお持ちになるかどうかは。その条件は、私と結婚してくださることです。」
王女はびっくり仰天して、何も答えなかった。
「わかります。」と巻き毛のリケは言った。「こんなプロポーズが貴方を苦しめることは。そのことに驚きはしません。丸一年差し上げますので、その間に決心してください。」

Si ce n’est que cela (…) qui vous afflige, / je puis aisément mettre fin à votre douleur.

ce n’est que cela qui… :
ne … que、・・・だけ。

je puis :
puisはpouvoirの直説法現在。

mattre fin à … :
・・・を終わりにする。

le pouvoir (…) de donner de l’esprit / autant qu’on en saurait avoir / à la personne / que je dois aimer le plus ;

donner de l’esprit (…) à la personne :
エスプリを人に与える。

autant qu’on en saurait avoir :
autant que 同じだけ(同等比較)
sauraitは、savoirの条件法現在。もし持つことができるとしたらという前提があるので、条件法。
en = de l’esprit

la personne que je dois aimer le plus :
doisは、devoirの直説法現在。・・・に違いない。

aimer le plus、最も愛する

il ne tiendra qu’à vous / que vous n’ayez autant d’esprit / qu’on en peut avoir, / pourvu que / vous vouliez bien m’épouser. »

il ne tiendra qu’à vous que… :
il tenir à … ・・・による。
ilは非人称。tiendraは、単純未来。
ne … que… ・・・だけ。

vous n’ayez autant d’esprit / qu’on en peut avoir :
ayez は、avoirの接続法現在。実際に持っていることではなく、持つとい概念を示す。

on en peut avoir
enがpouvoirの前に置かれているのは17世紀の語順だから。現在であれば、on peut en avoir。
enはde l’esprit.

リケが王女に与えるエスプリの量に関して、人が持とうと思えば持てるだけと言われ、合理的と言えば合理的、理屈っぽいと言えば理屈っぽい言い方がなされている。
そうした点は、ペローの昔話の特色の一つになっている。
例えば、「シンデレラ」の中で、カボチャを馬車に変形する時、妖精はカボチャをくりぬき、空洞を作ってから馬車に変える。単にカボチャを馬車にするよりも、はるかに合理的で、理屈にあっている。

pourvu que vous vouliez bien m’épouser :
pourvu que、ある行為が実現するための必要な条件を示す。ここでは、リケが王女にエスプリを与える条件。

vouliezはvouloirの接続法現在。pourvu queの後ろでは、動詞は接続法。

La princesse demeura toute interdite

touteは強調。

interditは、驚き、混乱した様子を意味する。

cette proposition vous fait de la peine / et je ne m’en étonne pas /

propositionは、提案、プロポーズ。

faire de la peine 苦しめる。

je ne m’en étonne pas. enは、彼女がびっっくりして答えないという目の文の内容を指す。

je vous donne un an tout entier / pour vous y résoudre

toutは強調。一年丸ごと。

vous y résoudre. yは、proposition. プロポーズに対して決心する。

La princesse avait si peu d’esprit, / et en même temps / une si grande envie d’en avoir, / qu’elle s’imagina / que la fin de cette année / ne viendrait jamais ; / de sorte / qu’elle accepta la proposition / qui lui était faite. / Elle n’eut pas plutôt promis / à Riquet à la Houppe / qu’elle l’épouserait / dans un an / à pareil jour / qu’elle se sentit tout autre / qu’elle n’était auparavant : / elle se trouva / une facilité incroyable à dire / tout ce qui lui plaisait, / et à le dire / d’une manière fine, / aisée / et naturelle. /
Elle commença, / dés ce moment, / une conversation / galante et soutenue / avec Riquet à la Houppe, / où elle brilla / d’une telle force / que Riquet à la Houppe / crut lui avoir donné plus d’esprit / qu’il ne s’en était réservé pour lui-même.

 王女はほとんどエスプリを持たず、それと同時に、エスプリを持ちたいという大きな望みを持っていたために、その年の終わりが来ないのではないかと空想した。その結果、彼女になされたプロポーズを受け入れることにした。一年後の今日、結婚すると巻き毛のリケに約束するとすぐ、これまでの自分とはまったく違う自分を感じた。信じられないくらい簡単に、気に入ったことを全て言った。話し方も、洗練され、スムーズで、自然なものだった。
その時から、巻き毛のリケと、優美で一貫性がある会話を始めた。彼女はとても輝いていたので、巻き毛のリケは、自分自身のために取っておいたエスプリ以上のものを、彼女に与えてしまったのではないかと思ったほどだった。

La princesse avait si peu d’esprit, / et en même temps / une si grande envie d’en avoir, / que…

si … si … que…
とても・・・なので・・・。
最初は、si peu d’esprit、次はune si grande envieとsiが連続して使われ、エスプリがないので、それだけエスプリを持ちたいと思う気持ちが、論理的に表現されている。

qu’elle s’imagina / que la fin de cette année / ne viendrait jamais

viendrait :
過去未来(条件法現在の形)。

年の終わりが来ないと思うことは、彼女がプロポーズを受け入れる前の時点では、エスプリに欠け、愚かであることの証となる。

この部分は非常に皮肉が効いている。
もし賢ければプロポーズは受け入れていなかったはず。プロポーズを受け入れたために賢くなったとしたら、愚かだった時の自分の決断をどのように思うだろう。そんなサスペンスを持たせることになる。

de sorte qu’elle accepta la proposition / qui lui était faite.

de sorte que … :
その結果・・・。

la proposition qui lui était faite. :
プロポーズが彼女に対してなされたことが、qui以下によって確認される。

Elle n’eut pas plutôt promis / à Riquet à la Houppe / qu’elle l’épouserait / dans un an / à pareil jour / qu’elle se sentit tout autre / qu’elle n’était auparavant 

ne…pas plutôt … que… :
・・・するとすぐに・・・。

plutôt … と関係する句は、à pareille jourの後ろに出てくる2つ目のque。

promis (…) qu’elle l’épouserait :
promisの内容は、すぐ後に続く1つ目のque以下。

épouseraitは過去未来(条件法現在の形)。約束した時点よりも後で行われることを示す。

dans un an :
一年後。(一年の間に、ではないので注意。)

à pareille jour :
同じ日。

tout autre :
toutは強調。autreが母音で始まるために、toutは不変。toute と女性形にはならない。

autre qu’elle n’était :
neは、虚字のne.
彼女がこれまで(auparavant)そうであったのとは違う。

elle se trouva / une facilité incroyable à dire / tout ce qui lui plaisait, / et à le dire / d’une manière fine, / aisée / et naturelle. /

elle se trouva une facilité incroyable :
彼女は自らの中に、信じられない容易さを見つけた。→ 信じられないくらい容易にできるようになった。

tout ce qui lui plaisait :
彼女が気に入ったこと全て。

le dire :
le は、ce qui lui plaisaitを指す。

d’une manière, fine, aisée et naturelle :
何を言うかではなく、どのように言うかの方が、17世紀においては重要な問題だった。そのために、どのように話すのかも明記され、3つの形容詞でその様子が描かれる。——— 洗練され、ぎこちないことがなく、自然な話し方。

エスプリを持つことと会話術に密接な繋がりがあることが、この挿話から見えてくる。そして、その確認が次になされる。

Elle commença (…) une conversation / galante et soutenue

galante :
優雅な、洗練された、気持ちの良い(agréable)。

soutenue :
上品な、高貴な。

elle brilla / d’une telle force / que Riquet à la Houppe / crut lui avoir donné plus d’esprit / qu’il ne s’en était réservé pour lui-même.

telle … que :
とても・・・なので・・・。

crut lui avoir donné :
crutはcroireの単純過去。
luiはelle=la princesse
avoir donnéは原形の複合形。crutの時点ですでに完了していたことを示す。

il ne s’en était réservé :
neは虚字のne.
se réserver. 自分のために取っておく。(リザーブする。)
enは esprit.
s’était réservéは直説法大過去。主節の動詞であるcrutの時点で、すでに完了していることを示す。

彼女の会話術があまりに素晴らしいので、リケはエスプリを与えすぎたのではないかと思う。そこでも、ペローの皮肉な視線が感じられる。


今回読んだリケと王女の出会いの場面は、エスプリの働きを具体的に描いている。
宮廷社会の中で、エスプリを持った人間であれば、洗練され、少し気取った感じがする会話術を心得ていた。リケが王女に結婚を申し込む際の言い回しはその典型である。
エスプリをもらった王女に関しては、話の内容と話し方が記され、具体的な例は、彼女が宮廷に戻ってから示される。


今回読んだ文章の全体。朗読を聞きながら文字を追っていくと、日本語を交えずにフランス語を理解できるようになっていく。
声に出して読む場合には、一つ一つの正しい発音を気にするのではなく、意味を考えながら文章の流れを重視する。
発音の矯正は自分では難しいが、意味を捉えた文章の読み方は独学でも習得が可能。

« La beauté, / reprit Riquet à la Houppe, /est un si grand avantage / qu’il doit tenir lieu de tout le reste, / et, quand on le possède, /  je ne vois pas / qu’il y ait rien / qui puisse nous affliger beaucoup.
— J’aimerais mieux, / dit la princesse, / être aussi laide que vous, / et avoir de l’esprit, / que d’avoir de la beauté / comme j’en aies, / et être bête / autant que je le suis.
— Il n’y a rien, / Madame, / qui marque davantage / qu’on a de l’esprit / que de croire n’en pas avoir, / et il est de la nature de ce bien-là / que, / plus on en a, / plus on croit en manquer.
— Je ne sais pas cela, / dit la princesse ; / mais je sais bien / que je suis fort bête, / et c’est de là / que vient le chagrin / qui me tue.

— Si ce n’est que cela, / Madame, / qui vous afflige, / je puis aisément / mettre fin à votre douleur.
— Et comment ferez-vous ? / dit la princesse.
— J’ai le pouvoir, / Madame, / dit Riquet à la Houppe, / de donner de l’esprit / autant qu’on en saurait avoir / à la personne / que je dois aimer le plus ;/ et comme vous êtes, / Madame,/ cette personne, / il ne tiendra qu’à vous / que vous n’ayez autant d’esprit / qu’on en peut avoir, / pourvu que / vous vouliez bien m’épouser. »
La princesse demeura toute interdite, et ne répondit rien.
« Je vois, / reprit Riquet à la Houppe, / que cette proposition vous fait de la peine, / et je ne m’en étonne pas /; mais je vous donne un an tout entier / pour vous y résoudre. »

 La princesse avait si peu d’esprit, / et en même temps / une si grande envie d’en avoir, / qu’elle s’imagina / que la fin de cette année / ne viendrait jamais ; / de sorte / qu’elle accepta la proposition / qui lui était faite. / Elle n’eut pas plutôt promis / à Riquet à la Houppe / qu’elle l’épouserait / dans un an / à pareil jour / qu’elle se sentit tout autre / qu’elle n’était auparavant : / elle se trouva / une facilité incroyable à dire / tout ce qui lui plaisait, / et à le dire / d’une manière fine, / aisée / et naturelle. /
Elle commença, / dés ce moment, / une conversation / galante et soutenue / avec Riquet à la Houppe, / où elle brilla / d’une telle force / que Riquet à la Houppe / crut lui avoir donné plus d’esprit / qu’il ne s’en était réservé pour lui-même.

該当箇所の朗読は5分1秒から。

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