Everything happens to me エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー

Everything happens to meを日本語にしたら、「ぼくには嫌なことしか起こらない」といった感じだろうか。
道を歩いていたら黒猫を見るところから始まり、ゴルフの予定を入れると雨が降る。パーティをすると上の階の人から文句を言われる。風邪をひいたり、電車に乗り遅れたり、等々。愛する人に電話をし、電報を送ると、彼女から来たのは別れの手紙。しかも着払い!
Everythingというのは、そんな悪いことばかり。

ウディ・アレンの「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」では、生まれ育った街ニューヨークが住みにくくて田舎の大学に行った主人公ギャツビー(ティモシー・シャラメ)が、週末にニューヨークに戻り、元カノの妹で、とても感じの悪いチャン(セレナ・ゴメス)の家に行き、そこにあったピアノで弾き語りする場面で、Everything happens to meが使われている。
ティモシー・シャラメは、歌の上手な素人っぽさをよく出してる。

トム・アデアの歌詞にマット・デニスが曲を付けた作品で、最初は、1940年、フランク・シナトラをフィーチャーしたトミー・ドーシーのオーケストラによって録音された。その演奏を聞いてみよう。

Black cats creep my path
Until l’m almost mad
I must have’ roused devil’s wrath
Cause all my luck is bad

I make a date for golf
And you can bet your life it rains
I try to give a party
And the guy upstairs complains
I guess I’ll go through life
Just catching colds and missing trains
And everything happens to me
 
I never miss a thing
I’ve had the measles and the mumps
And every time I play an ace
My partner always trumps
I guess I’m just a fool
Who never looks before he jumps
Everything happens to me
 
At first my heart thought
That you could break this jinx for me
That love would turn the trick to end despair
But now I just can’t fool this head that thinks for me
I’ve mortgaged all my castles in the air
 
I’ve telegraphed and phoned
Sent an airmail special too
Your answer was ‘goodbye’
And there was even postage due
I fell in love just once
And it had to be with you
Everything happens to me

作曲者のマット・デニスも自身で歌っている。

チェット・ベーカーの歌声はメランコリックで、歌詞やメロディーと抜群のハーモニーを奏でている。

ジョン・ピザレリの歌はもう少し軽く、嫌なことばかり起こるけれど、でもそれをやり過ごすといった感じ。ジョージ・シアリングのピアノもその感じをよく出している。ティモシー・シャラメがモデルにしたのはピザレリだろうか?

インストルメンタルで同じような感じがするのは、ポール・デスモンドのアルト・サックス。淡い哀しみを伝えているが、深刻な感じはしない。

ジューク・ジョーダン・トリオの演奏は、趣味のいいジャズそのもの。ジョーダンのピアノのメロディー・ラインが美しい。

その反対がセロニアス・モンクのピアノ・ソロ。モンクの演奏は、テンポを乱し、不協和音の音を響かせ、歩く度につまずくような、独特の印象を生み出す。慣れない間は違和感しかないが、一度好きになるとやみつきになる。

特色があると言えば、ソニー・ロリンズのテナーサックスの朗々とした響きは、一聴しただけでロリンズだとわかる。インプロヴィゼーションも豊かなインスピレーションに溢れている。

個人的に最も好きなのは、アルバム「ロードゲーム」の中のアート・ペッパーのライブ演奏。曲の抒情性がペッパーのアルト・サックスに乗って心にしみ込んでくる。

Everything happens to meは、本当に多くのジャズマンが取り上げているので、これら以外にもたくさん素晴らしい演奏があるが、ここでは、マルサリス兄弟のものを紹介しておこう。

まず、フランスのマルシアックで開催されているジャズ・フェスティバルに登場した際のウイントン・マルサリス・クインテットのライブ。ここでのウイントンのトランペットは、歌詞の内容を反映して悲しげな感じをよく出している。

兄であるブランフォード・マルサリスのトリオ演奏。ブランフォードのアルト・サックスは原曲のメロディーからかなり離れ、自由なインスピレーションに乗り、新しい世界を作り出している。

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