コミュニケーションの道具としての言葉の力 — 理解と感情

「阿吽(あうん)の呼吸」とは、言わなくてもお互いにわかり合っているという意味で使われる表現。
そんな関係では、何かのおりに「ありがとうございました。」とお礼を言うと、「そんな水くさいこと言わなくても。。。」という返事が返ってくるかもしれない。

言葉で言わなければわかり合えない関係では、言葉を使ってコミュニケーションを図る。その場合には、「話せばわかる」という前提に立って会話をするのが基本である。
言葉は通じるものであり、そうでなければ、話し合う意味がない。

ところが、言いたいことが相手に伝わらないとか、誤解されたと思うことがある。
そんな時には、自分の言い方が悪かったのかと反省したり、相手の理解力のなさや勘の鈍さを責めたりもする。

では、なぜ言葉の意味や意図がスムーズに伝わる場合と、そうでない場合があるのだろう? 
そして、言葉が人の感情を動かし、喜ばせたり、傷つけたりすることがあるのは何故だろう?

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コミュニケーションについて 村上春樹のジェイズ・バー 柄谷行人『探求 I 』

村上春樹の『風の歌を聴け』の中に、コミュニケーションについて考えるヒントとなる場面がある。

 「ジェイズ・バー」のカンターには煙草の脂で変色した1枚の古びた版画が掛かっていて、どうしようもなく退屈した時など僕は何時間も飽きもせずにその絵を眺め続けた。まるでロールシャッハ・テストにでも使われそうな図柄は、僕には向かいあって座った二匹の緑色の猿が空気の抜けかけた二つのテニス・ボールを投げ合っているように見えた。
 僕がバーテンのジェイにそう言うと、彼はしばらくじっとそれを眺めてから、そう言えばそうだね、と気のなさそうに行った。
「何を象徴しているのかな?」僕はそう訊ねてみた。
 「左の猿があんたで、右のが私だね。あたしがビール瓶を投げると、あんたが代金を投げてよこす。」
 僕は感心してビールを飲んだ。

ロールシャッハ・テストにでも使われそうな図柄が、「僕」には、二匹の猿が二つのテニス・ボールを投げ合っている姿に見える。他方、ジェイは、一方の猿がビール瓶を投げ、他方の猿は代金を投げていると言う。

では、なぜ「僕」はジェイの解釈に感心するのだろう?

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ジャーナリストLiseron Boudoulのインタヴュー

Liseron Boudoulは世界中で戦争や紛争が起こる度に現地に赴き、驚くほど現場に密着した取材をするジャーナリスト。彼女は2022年2月の初旬にウクライナで取材を始め、親ロシア派の地域、ロシアに攻撃された地域、モスクワで約4ヶ月間活動した。

Depuis le début de la guerre en Ukraine, les reportages de Liseron Boudoul, grand reporter pour TF1, nous aident à comprendre la situation sur place et les enjeux de ce conflit. La journaliste a passé trois mois sur les lignes de front en Ukraine et un mois à Moscou. Elle est l’une des rares à être restée sur place si longtemps et à avoir tourné des reportages des deux côtés, en Ukraine et en Russie. De retour à Paris, Liseron Boudoul revient sur quatre mois d’une guerre en Europe.

日本の歴史から見えてくる日本的なもの

日本の歴史に関して、全体を見直してみると、大まかな塊があることがわかってくる。
(1)無文字文化:縄文、弥生、古墳時代。
(2)仏教の伝来と国家の統一:飛鳥、奈良、平安。(538-1191 : 約650年)
(3)武家の台頭と禅宗の移入:鎌倉、室町。(1192-1573 : 約400年)
(4)武士と町人の時代;織豊、江戸。(1580-1867 : 約300年)
(5)西欧思想と近代文化:明治、大正、昭和、平成、令和。(1868-2022 : 約150年)

このように見直すだけで、気づくことがある。
1.仏教が伝来し、中国大陸からもたらされた文字を応用して日本語の書記言語を作るまで、日本には基本的に文字がなかったこと。

2.あまり意識されないことだが、飛鳥時代から江戸時代までの約1300年の間、漢詩の文化が継続し、和の文化と並立していた。そうした状況は、ヨーロッパにおいて、ラテン語と各国語(フランス語、イタリア語、ドイツ語等)が並立していた文化の様相と類似している。

3.明治維新から現在までの間には、まだ150年程度しか経っていない。中国大陸の文化的影響の長さと比較すると、西洋文化が移入されてからの時間は驚くほど短い。

こんなことを頭に置きながら、それぞれの文化の段階で、現在の私たちと関係ありそうなことを探ってみよう。

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与謝野晶子 「君死にたまふことなかれ」 Akiko Yosano « Que tu ne meures pas »

1904年(明治37年)2月から1905年(明治38年)9月にかけて行われた日露戦争の中で、旅順要塞を日本軍が包囲し陥落させた戦いは、旅順攻囲戦と呼ばれている。

与謝野晶子は、その旅順攻囲戦に兵士として送り出された弟の命を心配し、「君死にたまふことなかれ」と歌った。

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スティング 「ロシア人」 Sting «Russians» The Russians love their children too.

スティングが、ウクライナ支援のために、1985年に発表した« Russians »をインスタグラムにアップしたというニュースが流れている。
https://www.musiclifeclub.com/news/20220308_05.html

« Russians »は、1980年代の米ソの冷戦時、核戦争で世界が破壊される前に、両国ともに「人道的な感情」を取り戻して欲しいという内容のもの。
英語の歌詞と日本語の訳がついたビデオで聞いて見ると、スティングの思いが伝わってくる。

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戦争の惨禍  ロシア ウクライナ 日本

ロシアがウクライナに侵攻した戦争の被害を映し出す映像を目にする度に、胸が引き裂かれそうになる。
悲しいことに、戦争が続けば続くほど被害は大きくなり、死者の数も多くなる。ウクライナ軍や市民の無事を願い、一刻も早く戦争が終わって欲しいと思う。
それがロシア兵のためでも、ロシア国民のためでもある。

そんな時、ふと、日本が空襲にあった時の映像を思い出した。
Wikipediaには、空襲の被害が次のようにまとめられている。

空襲は1945年(昭和20年)8月15日の終戦当日まで続き、全国(内地)で200以上の都市が被災、被災人口は970万人に及んだ。被災面積は約1億9,100万坪(約6万4,000ヘクタール)で、内地全戸数の約2割にあたる約223万戸が被災した。その他、多くの国宝・重要文化財が焼失した。米国戦略爆撃調査団は30万人以上の死者、1,500万人が家を失ったとしている。
https://ja.wikipedia.org/wiki/日本本土空襲

最初の空爆は1944年(昭和19年)6月に行われたというから、これだけの甚大な被害が出る間、日本は1年2ヶ月の間、軍事施設だけではなく、市街地に爆撃を受け続けていたことになる。
430の都市が爆撃され、東京大空襲や沖縄戦等々を経て、広島・長崎の原爆投下まで、日本政府は徹底抗戦を主張した。

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イメージの戦争 ロシアのウクライナ侵攻 映像の真偽

ロシアのウクライナ侵攻以来、毎日悲惨な映像が世界中に配信されている。それは戦争の残忍さを伝えるために重要なのだが、他方で、情報操作の道具にもなる。

ビデオの前半は、ロシアのニュース映像。国連の人権理事会でロシア外相が演説したとき、各国代表が退席した。しかし、ロシアで流れた映像では、各国が熱心に聞いている。つまり、映像を加工し、ロシア国民には外相演説時に多くの国が抗議したことがわからないように、映像が加工されている。

後半は、主にアメリカからの情報だが、ウクライナでロシア軍が苦戦している様子を映した映像。最後に出てくるのは、ロシア軍の戦車が残していった戦車に女性が乗っているTiktokの映像。女性はロシア人で、アップされたのは2021年2月、つまり去年のもので、戦争とは無関係。そうなると、それ以前の映像の信憑性も問われてくる。