
16世紀、「新大陸」が文学のテーマとして登場することがあった。
フランソワ・ラブレーは、『パンタグリュエル物語』(1532)において、巨人パンタグリュエルの口の内部を「新世界」に見立て、滑稽なエピソードを語った。
ミッシェル・ド・モンテーニュは『エセー』(1580)の「人食い人種について」の章で、ブラジルの原住民たちに関する風俗を取り上げ、文明論を展開した。
同じテーマに対する二人の作家のアプローチを比較することは、16世紀前半と後半の時代精神の違いを知ることにつながると同時に、ラブレーとモンテーニュをよりよく知るための方法にもなる。

そのための前提として、新世界を巡る当時の状況を手短に思い出しておこう。
中世末期、ルネサンス、近代初期にかけて、西洋の国々は大航海の時代を迎える。
最初はアフリカに向かい、アジアへ。さらには、アメリカ大陸へと進出した。1492年にクリストファー・コロンブスがアメリカを「発見」したと言われるのは、そうした海外進出の象徴的な出来事といえる。
日本に関していえば、1543年、種子島に火縄銃が伝えられ、1549年になるとイエズス会の宣教師フランシスコ・ザビエルが山口や大分でキリスト教の布教活動を行うなど、西欧との接触が始まった時期でもある。
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