ディオニュソスとアプロディーテ 神秘主義について その3

神秘主義は、現実と超越的実在世界(「雌猫アカの世界」あるいは「生」そのもの)との特別な接触に由来するといってもいいだろう。
https://bohemegalante.com/2020/01/21/monde-selon-la-chatte-aka-mysticisme/

その体験が神話として語られる場合がある。
1)死と再生の神話。
2)陶酔とオルギア

William Bouguereau, La jeunesse de Bacchus

2)陶酔とオルギア
陶酔状態においては、酒、薬物、愛欲などにより忘我(exase)の状態に入り、世界(他者)と私(自己)の自立性が消滅する。

宗教的な体験における、目に見えない超越的な存在と「私」との接触は、別の側面から見れば、「私」の存在を忘却することであり、自己からの解脱とも考えられる。

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死と再生の神話 神秘主義について その2

神秘主義は、現実と超越的実在世界(「雌猫アカの世界」あるいは「生」そのもの)との特別な接触に由来するといってもいいだろう。
https://bohemegalante.com/2020/01/21/monde-selon-la-chatte-aka-mysticisme/

その体験が神話として語られる場合がある。
1)死と再生の神話。
2)陶酔とオルギアの神話。
この二系列の神話は、現実法則(時間の不可逆性、主体と客体の分離)を超越した出来事を、物語として言語化したものだといえる。
古代宗教の中には、それらの物語に基づいた儀礼を定式化したものもある。

Nicolò dell’Abbate L’Enlèvement de Proserpine

1)死と再生
現実世界では、時間は時計によって計られ、決して後戻りはしないと見なされる。
それに対して、「アカの時間」あるいは、生そのものである今においては、時間を時間として感じることはない。それは瞬間でもあり、永遠でもある。

死と再生のつながりは、時間は決して戻らないという現実法則を超越する。
その意味で、時計の針の影が投影されていない生の時間(今=永遠)を思わせる。

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雌猫アカの世界 神秘主義について その1

アカは街角に住む雌の猫。
1月1日、「明けましておめでとう。」と新年の挨拶をする。すると、アカも「ニャア」と答えてくれる。
彼女も人間と同じように、元日の朝は普段より清々しく感じるのだろうか。

でも、アカにとっては、初日の出も、普段の日の出も特別な違いはないだろうなと、考え直す。
猫にカレンダーはないし、もしかしたら朝も昼も夜もないかもしれない。
あるのは、太陽の光の温かさ、空気の冷たさ、空腹等といった体感。近づいてくる人間や、一緒に街角にいる猫仲間に対する好き嫌いの感情。アカはとりわけ嫉妬深い。他の猫が撫でられていると、ひどく嫉妬し、猫パンチを繰り出す。

そんなアカの世界はどのようなものだろう。

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ネルヴァル 「デルフィカ」 Nerval « Delfica » 再生と待機

ミケランジェロ、デルポイの巫女

「シメール詩篇」に収められたソネット「デルフィカ」は、ネルヴァルの文学技法と思考を知るための、最良の詩だといえる。

技法を一言で言えば、本歌取り。
知を共有する人々であれば誰もが知っている言葉や事柄を取り上げ、それを変形することで、彼自身の言葉を作り出し、彼の思考を表現する。

思考の内容に関しては、再生や回帰。
しかし、再生を歌うとしても、その実現を待つのが、彼の姿勢である。
象徴的に言えば、ネルヴァルは生と死の間にある煉獄(limbes)にいる。

「デルフィカ(Delfica)」に関して言えば、ゲーテの「ミニョンの唄」とヴェルギリウスの『牧歌』第4巻を主な本歌とし、その題名によって、アポロンに仕えるデルポイの巫女(sibylle de Delphes)の神託が詩となっていることを示している。

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