ヴェルレーヌ 「月の光」 Verlaine « Clair de lune » ロココ的世界から印象へ

第2詩節では、華やかな仮面や仮装が、真実の世界の虚像であることが予感される。

Tout en chantant sur le mode mineur
L’amour vainqueur et la vie opportune
Ils n’ont pas l’air de croire à leur bonheur
Et leur chanson se mêle au clair de lune,

短調の曲想に乗せて歌うのは、
勝ち誇った愛と巡り合わせのいい人生、
でも、幸福を信じているようには見えない。
彼等の歌が、月の光に溶け込んでいく。

短調は、ヴェルレーヌのほとんどの詩の基本的な調性。もの悲しく、切ない。

彼はここで、その理由を明かしている。
相手を誘惑する恋愛を歌い、人生が順調に進むことを歌う。しかし、その勝利や幸運は、仮装した世界でのことであり、彼ら自身、本当に信じてはいない。
言葉でどんなに肯定しても、短調の音楽が偽装、偽りを暴露する。

そして、意味は肯定的だが、音楽は短調の歌が、月の光の中へと消えていく。

Joseph Vernet, Paysage au clair de lune

仮面舞踏会の映像が消え、歌と光が溶け合う。ここにヴェルレーヌ的世界が出現する。形ではなく、光と印象の世界。

第3詩節では、その月の光にスポットが当てられる。

Au calme clair de lune triste et beau,
Qui fait rêver les oiseaux dans les arbres
Et sangloter d’extase les jets d’eau,
Les grands jets d’eau sveltes parmi les marbres.

静かで、もの悲しく、美しい月の光、
木々の間で、鳥たちを夢見させ、
噴水を恍惚とさせ、すすり泣かせる、
高くほっそりとした噴水を、大理石の間の。

この4行詩には、ヴェルレーヌの詩のエッセンスが詰まっている。

光の美。それはもの悲しく、大きな声で言い立てるものではなく、密やかにささやくもの。

木と鳥は自然への関心を示す。
鳥が夢見るほど美しい光景を前にして、詩人は心を奪われ、我を忘れ、美の前で恍惚としてすすり泣く。

その高揚感が、噴水の吹き上がる水によって表現される。

Jeux d’eau, Parc de Saint-Cloud

ヴァトーの絵画の世界を再現しながら、仮面舞踏会の音楽が月の光と混ざり合い、噴水の水の印象へと変わっていく。
ヴェルレーヌの詩句は、その変化を美しく表現し、実体的な物の世界から、音楽的な印象の世界へ、シームレスで繋がっていく。

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