フランス語における比較級の否定形 ne … pas moins A que Bなど

日本語を母語とする人にとって、フランス語の比較級のうち、優等比較(plus…que)や同等比較(aussi…que)は比較的すんなり理解できる。しかし、劣等比較(moins)になると、やや抵抗を覚えることがある。

さらに、そうした文が否定形になると、その都度立ち止まって考えなければならない場合が多い。
« Il n’est pas moins intelligent que courageux. »
彼は知的なのか、勇敢なのか、あるいは両者の程度がどう比較されているのかが、直感的にはつかみにくいのではないだろうか。

そこで、次の四つのケースを整理し、すぐに理解できるようにしてみたい。

(1) Il n’est pas moins intelligent que courageux.

(2) Il n’est pas tant intelligent que courageux.

(3) Il n’est pas plus intelligent que courageux.

(4) Il n’est pas aussi intelligent que courageux.

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愚か者だけが、確信し、決めてかかる(モンテーニュ)

自分が当たり前だと思っていることについて質問され、時に意表を突かれることがある。最近そうしたことが重なり、ふと、「愚か者だけが、確信し、決めてかかるのです。」というモンテーニュの言葉を思い出した。
(参照:モンテーニュ 子供の教育について Montaigne De l’Institution des enfants 判断力を養う


一つ目は、フランス語の鼻母音のリエゾンに関する質問。

« Ton souvenir en moi luit comme un ostensoir ! » (Baudelaire, « Harmonie du soir »)

不定冠詞のunは鼻母音で、発音記号で書けば、[ œ̃ ]になり、[ n ]の音はしない。しかし、ここでは後ろに続く単語 ostensoir が母音 [ o ]で始まるために、[ œ̃ no ]と[ n ]の音がする。カタナカで書いてしまうと「ノスタンソワール」。

この詩句を読んでいる時、「鼻母音でNの音はしないはずなのに、なぜ次にNの音でリエゾンするのか?」と問われ、その場で立ち往生してしまい、答えることができなかった。
自分では習慣的に [ no ]と読み、疑問に思ったことがなかったので、不意打ちを食らったという感じだった。

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日本人にはなぜ英語やフランス語の習得が難しいのか? 構文について考える

日本人にとって、英語やフランス語を習得するのは難しい。その理由は何か?

答えは単純明快。
母語である日本語は、英語やフランス語と全く違うコンセプトに基づく言語。そのことにつきる。

この事実は当たり前のことだが、しかし、日本語との違いをあまり意識して考えることがないために、どこがわかっていないのかがはっきりと分からないことも多い。
例えば、英語の仮定法と日本語の条件設定との本質的な違いを理解しないまま、if を「もし」と結び付けるだけのことがあり、そうした場合には、大学でフランス語の条件法を学ぶ時も、英語のifで始まる文と同様にsiで始まる文が条件法の文だと思ってしまったりする。

これは一つの例だが、ここでは問題を語順に絞り、日本語とフランス語の違いがどこにあり、日本語を母語にする人間にとって、どこにフランス語習得の難しさがあるのか考えてみよう。

ちなみに、これから検討していく日本語観は、丸山真男が「歴史意識の中の”古層”」の中で説いた、「つぎつぎに/なりゆく/いきおい」という表現によって代表される時間意識に基づいている。丸山によれば、日本人の意識の根底に流れるのは、常に生成し続ける「今」に対する注視であり、それらの全体像を把握する意識は希薄である。
そうした意識が、日本語という言語にも反映しているのではないかと考えられる。

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日本における外国語学習最大の問題 返り点 訳し上げ

日本において、外国語の習得を妨げる最大の要因があるのだけれど、ほとんど意識されることがない。
そのため、悪い癖がついても気づかず、外国語を読めるようになかなかならない。

何が悪いのか?
それは、「返り点」の習慣。

漢文読解の際に日本で発明した方法で、文章を構成する単語の順番を逆点して理解しようとする。
漢文の授業で学んだレ点などを思い出すといい。

この習慣が英語学習にも入り込み、関係代名詞が出てくると、文の後ろから「訳し上げ」たりする。
問題は、「訳」ではなく、「理解」のために、単語の順番を逆転してしまうこと。
1度癖になってしまうと、やめるのが難しい。

実は、誰もが言葉を音として理解している。声に出さず、黙読している時にも、頭の中で音は響いている。
文章は、音が聞こえてくる順番に、自然に理解できる。

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フランス人と文法 

フランスの子どもたちに学校で嫌いな教科は何かと質問すると、「Grammaire(文法)」という答えがよく返ってくる。
” Notre grammaire est sexy “という本の著者たちとのインタヴューの様子を見ていると、一般のフランス人がいかに文法を知らないかよくわかって、とても興味深い。

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外国語学習 過去と完了

英語を勉強し始めた頃、現在完了が出てきて、過去とどう違うのわからなかったという経験はないだろうか。
私たちの自然な感覚からすると、完了したことは過去のことなのだから、現在完了も過去のことに違いないと思う。その結果、二つの違いがよくわからない。
その上、現在完了に関しては、経験・継続・完了の3用法があると説明されるが、過去の概念に関しては何の説明も、用法の解説もない。なぜだろう?

さらに、過去完了(had+pp.)はある程度理解できるが、未来完了(will have+pp.)はわからないという人もいる。
過去未来完了(would have+pp.)になると、最初から理解を諦めてしまう人も多い。

なぜ日本語母語者は、英語やヨーロッパの言語の時制体系をすっと理解できないのだろうか?
(ここでは、説明を簡潔にするため、英語を例に取ることにする。)

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外国語学習 日本語とは違う世界観を知る

フランスでフランス人と話してるとき、すぐに答えられない質問をされることがある。
例えば、「神戸に住んでいる。」と言うと、「東京から何キロ離れているのか?」と質問されたりする。
もう一つよく質問されるのは、「最初にフランスに来たのはいつ?」
その際には、10年くらい前とか、曖昧な答えしかいえない。

フランス人に同じ質問をすれば、「神戸と東京間は約430キロ」とか、「最初は2012年。」とか、きっちりした答えが戻ってくる方が普通。

こうした違いは何を意味し、そのことから、どんなことがわかるのだろうか。

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フランス語の冠詞 les articles du français

フランス語の冠詞は、二つの基準を導入して考えると、理解しやすい。

1)限定する名詞が数えられるか(可算名詞)、数えられないか(不可算名詞)
2)全部を指すのか、一部を指すのか。

数えられる名詞の場合 :定冠詞/不定冠詞
数えられない名詞の場合:(定冠詞)/部分冠詞

全部を指す場合、定冠詞。
部分を出す場合、不定冠詞/部分冠詞。

1)加算名詞2)不可算名詞
全部定冠詞(定冠詞)
一部不定冠詞部分冠詞
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名詞の単数と複数

夏目漱石『草枕』の訳者と話をしている時、彼女が面白いことを言っていた。
これまでの仏訳では、Oreiller d’herbesと、草を意味するherbeは複数形だった。でも、herbeは単数形でないとおかしい。
実際、出版された彼女の訳では、herbeは単数形になっている。

普通に考えると、名詞の単数と複数はとても単純で、一つなら単数、それ以外は複数。それで何の疑問もないと思い込んでいる。
しかし、英語やフランス語の文を書く時に、単数にするのか複数にするのか迷うことがある。
そこに冠詞の問題がからみ、正解がわからないことが多くある。
名詞の数は、本当に数だけの問題なのだろうか?

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フランス語の語順

時間軸に従って次々に単語を並べていくことで、文章が形作られる。
その際、最初に置かれる要素と、後ろに置かれる要素では、役割が違っている。

最初に置かれる要素は、話し手(書き手)と聞き手(読み手)の間で共有されることになる話題を提示する。
これから何を話すかというテーマ。

後ろに置かれるのは、話題の中で焦点となる事柄。伝えたいこと、知りたいことの中心であり、結論。

一般的に、文の前に置かれる要素が旧情報だとすると、文の後ろには新情報を伝える要素が置かれる。

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