フランス語の時制体系 その1

フランス語の動詞の時制は非常に体系化されていて、ほぼ例外なく規則的に理解することが可能である。
その一方で、日本人には難しいと感じられることも多い。なぜなら、日本語の動詞の時間概念と根本的に異なる点があり、概念が掴みにくいからである。

時間概念の枠組み

1.フランス語の時間概念には、二つの枠組みがある。

(1)完了/今(未完了)
今(未完了)は、動詞の語尾活用で表す。(単純形)
完了形は、avoir/êtreの活用形+過去分詞で表す。(複合形)

(2)過去/現在
現在とは、話者の発話行為を含む時間帯。
過去とは、現在の時間帯とは断絶した、すでに過ぎ去った時間帯。

動詞の時制は、この二つのコンセプトの組み合わせから成り立つ。

2.現在の時間帯の時制

現在の時間帯
今と未来を含む。

完了完了未来
J’ai chanté
複合過去
Je chante
現在
J’aurai chanté
前未来
je chanterai
単純未来
I’ve sung
現在完了
I sing
現在
I will have sung
未来完了
I will sing
未来

複合過去は、avoirが現在形であり、現在の時間帯に属すことを示している。その上で、過去分詞が付くことで、完了になる。

前未来は、avoirが単純未来であり、現在の中の未来に属することが示される。その後に過去分詞が付くことで、未来における完了であることが示される。

英語の名称では、現在完了、未来完了であり、have+pp.という複合形が完了を意味することが名称で表現されている。

3.過去の時間帯の時制

完了(過去の)今完了未来
J’avais chanté
大過去
Je chantais
半過去
J’avais chanté
過去未来完了
(条件法過去)
Je chanterais
過去未来
(条件法現在)
I had sung
過去完了
I sang
過去
I would have sung
過去未来完了
Il would sing
過去未来

現在の時間帯の今を示す現在形は、過去の時間帯では半過去に対応する。(ただし、単純過去と役割を分担する。その点に関しては後述。)

それ以外の時制に関しても、活用している動詞の語尾を半過去の語尾にする。

4.日本語との概念の違い その1 出来事の順番

出来事の順番の捉え方が、フランス語や英語などと、日本語では違っている。そのために、完了の概念を理解することが難しい。

今は12時で昼食中とする。この後1時に家を出て、2時に友だちと会うことを考えてみよう。

日本語では、12時に昼食、1時に家を出る。2時に友だちに会う、というように、出来事の順番に語っていくのが普通である。

フランス語でもそのように出来事の順番で語ることもあり、その場合には、昼食は現在形(je déjeune)、外出と友だちに会うは単純未来形(Je partirai de la maison, et je verrai un ami.)にする。
ここでは、日本語と同じように、出来事の順番通りに意識を動かし、ベタで語っていることになる。

その一方で、未来の基準点を2時に友だちに会うと考える場合には、会うは単純未来形(Je verrai)にする一方、その時点で「完了」している外出は、未来において完了している出来事であり、前未来形(je serai parti)にする。
今の時点から未来に考えを移すことは日本語でもするが、その未来の時点から後退して、そこで終わっている出来事を考えることは、日本語にはない発想だろう。

このように、完了という場合、ある一点を基準にして、その時点で既に終わっている出来事・行為を考える必要がある。
そうした考え方を日本語ではしないため、日本人にとって完了の概念がわかりにくいのだといえる。

5.日本語との概念の違い その2 現在の時間帯と過去の時間帯の断絶

日本語の「た」は、過去とも完了とも考えられ、二つの概念があまりはっきりと区別されていないようである。完了したことは終わったことなので、過去だというくらいの認識だと思われる。

それに対して、英語やフランス語では、現在の時間帯と過去の時間帯は断絶している。そのことを示す最も良い例が、英語の現在完了形と副詞の関係である。
✖️ I have sung yesterday.
yesterdayは過去の時間帯に属しているため、現在の時間帯に属す現在完了とは同時に使うことができない。
この例は、二つの時間帯が切り離されていることを、端的に示している。

フランス語では、複合過去が現在完了と対応するが、複合過去はそれと同時に単純過去の代用となり過去の時間帯でも使用可能なため、断絶が分かりにくくなっている。この点は後述する。

しかし、現在完了は決して過去の時間帯に属するのではなく、現在の時間帯に属することを意識しておくことは、動詞の時間帯形を理解する上で重要な点である。

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