プラトン的二元論から一元論的世界観(現前性)への大転換

19世紀の後半、ヨーロッパでは世界観の大きな転換があり、古代ギリシアのプラトンに始まり、ルネサンスを通して19世紀前半まで続いてきた世界観が大きく揺らぎ始めた。

フランスでは、その転換点に、シャルル・ボードレール、ギュスターヴ・フロベール、エドワール・マネたちが位置していた。
彼らの作品は、自分たちの時代の事物や出来事をテーマとして選択したが、その再現を目的とするのではなかった。
むしろ現実の再現を止め、現実から自立し、作品自体が現実とでもいえるものの創造を目指した。

端的に言えば、そこで生成されつつあったのは、現実とフィクションの区別をするのではなく、フィクションも一つの生命を有する現実と見なす一元論的世界観だった。

その大転換を理解するために、プラトニスムの転倒を企て、それに苦しみ、最後は狂気に陥った哲学者ニーチェについて書かれたマルティン・ハイデッガーの文章を読んでみたい。

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アントワーヌ・ヴィールツ 「キリストの埋葬」 Antoine Wiertz  Christ au tombeau

アントワーヌ・ヴィールツ(1806-1865)の描く「キリストの埋葬」は、独特の魅力で見る者に迫ってくる。

中央のパネルに描かれているのが、「キリストの埋葬」であることはすぐにわかる。
では、左右のパネルに描かれているのは、誰だろう?

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ポンペイ遺跡の新たな発見 Des trésors du Pompéi découverts lors du confinement

コロナウィルスによる外出禁止令のため、ポンペイの遺跡からもほとんど観光客がいなくなった。その間に発掘が進み、新たな発見があったというニュース。ポンペイ遺跡の美を私たちも再認識することができる。

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ヘントの中世の街並みとファン・エイク兄弟の「神秘の子羊」 Gant, ville du Moyen Âge, et L’Adoration de l’Agneau mystique  

ベルギー第3の都市ヘントは、中世フランドル地方の街並みがそのまま残されている。
そして、聖バーフ大聖堂では、初期フランドル派絵画を代表するファン・エイク兄弟の「神秘の子羊」を見ることができる。

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デイヴィッド・ホックニー  現代の色彩画家

1937年にイギリスで生まれたデイヴィッド・ホックニー(David Hockney)は、現在、フランスのカルヴァドスで活動を続け、ipadで絵画を描くこともあるという。
今回の紹介する映像では、ホックニーの生涯、作品、書籍について大まかに見ることができ、現代の色彩画家が生み出す世界に入るための第一歩になる。

スペイン バロック絵画 peinture baroque en Espagne

El Greco, L’Enterrement du seigneur d’Orgaz

スペイン絵画の黄金時代と呼ばれる16世紀後半から17世紀、エル・グレコからヴェラスケスまで、素晴らしいバロック絵画が次々に制作された。

そうした傑作群から共通の要素を取り出すのは難しいが、あえて言えば、ルネサンス美術の理想主義的な均整の取れた美に流動性を与え、現実性と精神性を合わせ持つ絵画だと定義することができるかもしれない。

エル・グレコの「オルガス伯の埋葬」は、その二つの側面を明確に表している。
上部の天上世界は幻想的な雰囲気に満ち、精神性が強く表出される。

L’Enterrement du seigneur d’Orgaz 上部
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古典的な美 調和と善と美 プラトン「ゴルギアス」

プラトンの「ゴルギアス —弁論術について—」の一節は、秩序や調和(ハーモニー)が古典的美学の中で、なぜ善きものとなり、美と見なされるのか、私たちにわかりやすく教えてくれる。

「ゴルギアス」は、副題の「弁論術について」が示すように、人間を善に導く弁論術と、そうではない弁論術についてソクラテスが論じるのだが、その中で、他の様々な技術を例に引いて説明している。

その中で、ソクラテスは、調和(harmonie)、秩序(ordre)、形(forme)が、有益さや優れた性能、善きもの(bien)を生み出すことを、簡潔に、しかし説得力を持って論じていく。

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ターナーとコンスタブル イギリスで最も人気のある2枚の絵画 「戦艦テメレール号(The Fighting Téméraire)」 「乾草車(The Hay Wain)」 

イギリスで最も人気のある絵画は、ターナーの「解体されるために最後の停泊地に曳かれてゆく戦艦テメレール号(The Fighting Téméraire tugged to her last Berth to be broken)」。2番目はコンスタブルの「乾草車(The Hay Wain)」だという。

The National Galleryの提供している解説を聞くと、コンスタブルやターナーが、ドラクロワから印象派へと続くフランス絵画にも影響を与えていることの意味がわかってくる。