フランス語の詩を読むために

せっかくフランス語を勉強したら、フランス語の詩の美しさを味わいたいと思うのが、自然な流れだろう。
そこで大切になることが、詩法に関する知識。
フランス語の韻文詩は明確な規則に従って作られてきたので、規則を知ることが理解の基礎になる。

1)詩とはどのようなものか ー 音楽性、絵画性
2)韻文の形式 ー 音節数、韻(音節数、男性/女性、韻の連続)
3)音楽性 ー リズム、音色
4)音、リズムと意味の関係

1)詩とは

(1)音楽性

詩を散文と区別する大きな要素は、音楽性。
言葉のリズムや音色が意味に匹敵する役割を果たす。

(2)絵画性 ut pictura poeisis

古代ローマの詩人ホラティウスの言葉「詩は絵画のように。」(ut pictura poeisis)
絵画に時間を加えると詩になり、詩から時間を取り去ると絵画になるという考え方。
(散文と比較して)詩の方が(美しい)イメージに富んでいると考えられていることを示す。

ただし、18世紀ドイツの文学者レッシングはこの考え方に反対して、論争を行った。
レッシングは、絵画や彫刻を空間芸術とし、文学や芝居といった時間芸術と区別することを主張。絵画と詩の並行関係を否定した。

2)韻文の形式

(1)音節数

詩の一行の音節は、基本的には、12音節、それ以外に10音節、8音節など、同じ音節数の詩句が反復される。

一音は、一つの母音母音だけか、あるいは一つの母音の前後に子音を伴って形成される。(詩行の最後のeはカウントされない。)

Le /de/ssein/ en/ est/ pris //: je/ pars/, cher/ Thé/ra/mè/ne,
1   2  3     4   5   6    // 7   8    9    10 11 12(neは読まない)
                         (Racine, Phèdre)

細かな規則は、以下の参照。
https://bohemegalante.com/2019/05/25/lecture-poeme-francais/2/

(2)韻

A. 韻とは、詩行の最後で、同じ音の母音を反復すること。

韻の種類については、以下を参照。
https://bohemegalante.com/2019/05/25/lecture-poeme-francais/2/

B. 男性韻/女性韻

男性韻 — 無音の「e」で終わらない韻
女性韻 — 最後の音節が無音の「e」で終わる韻

古典的な詩法に従って作られたフランス語詩では、男性韻と女性韻は交互に用いることが原則とされていた。

C. 韻の連続の仕方

リム・プラット(Rimes plates) 平韻:
同じ音が連続する。AA

Que dis-je ? Il n’est point mort, puisqu’il respire en vous ;  A (m.) 男性韻
Toujours devant mes yeux je crois voir mon époux :        A (m.)
Je le vois, je lui parle ; et mon cœur … je m’égare,         B  (f.) 女性韻
Seigneur, ma folle ardeur malgré moi se déclare.           B (f.) 
                        (Racine, Phèdre)

リム・クロワゼ(Rimes croisées)交差韻:
二種類の韻を一行おきに交差させる。ABAB

Maître Corbeau, sur un arbre perché,  A (m.)
Tenait en son bec un fromage.           B (f.)
Maître Renard, par l’odeur alléché,    A  (m.)
Lui tint à peu près ce langage :        B  (f.)
              (La Fontaine, « Le Corbeau et le Renard »)

リム・アンブレッセ(Rimes embrassées)抱擁韻:
一つの韻の間に別の韻を割り込ませる。ABBA

Le monde est plein de gens qui ne sont pas plus sages :  A (f.)
Tout Bourgeois veut bâtir comme les grands Seigneurs,   B (m.)
Tout petit Prince a des Ambassadeurs,               B  (m.)
Tout Marquis veut avoir des Pages.                 A  (f.)
             (La Fontaine, « La Grenouille qui se veut faire aussi grosse que le bœuf  »)

3)音楽性

(1)リズム

A. Césure (区切れ)

12音節の詩句(アレクサンドラン)では、中央の6音節目で区切れ(césure)が入るのが基本。6音節の部分をhémistiche(エミスティッシュ)と呼ぶ。

一つのエミスティッシュが、ある一定の意味を形成するのが基本。

Vous-même rougiriez // de ma lâche conduite. (Racine, Bérénice
 6 // 6

あなたご自身が赤面されるかもしれません // 私の臆病な振る舞いで。

6/6のリズムを基本とし、様々な仕方でヴァリエーションを付けることで、リズムの変化を生み出す。

B. アンジャンブマン(Enjambement) 区またぎ:
区切れや行の最後で意味が簡潔せず、次の句切れ、行にまたがって語句が続く用法。

Je travaille très dur // car j’aime énormément 
Le français et surtout la poésie classique.

C.ルジェ(Rejet):
詩句の最後の言葉が次の行に送られて完結する用法。

Je travaille très dur // car j’aime énormément
Le français. Et pourtant ce n’est pas évident.

D. コントル・ルジェ(contre-rejet):
詩句の意味が最後の行の最後になる前に完結し、最後の言葉が次の文の先頭になる用法。

Je travaille très dur car ça me plaît. Et pourtant
Ce n’est pas tous les jours évident de bosser.

この項目のいくつかの例文は、youtubeのles bons profsによる。

(2)音色

アソナンス(Assonance)半諧音 : 同一母音の反復

Je ris depuis lundi.

iの反復

アリテラシオン(Allitération) 畳韻法:語頭などでの同一子音の反復

Je sais que le serpent siffle.

sの反復

アナフォール(Anaphore)首句反復 :隣り合った詩句の最初で同じ単語や単語グループを反復。

C’est l’extase langoureuse.
C’est la fatigue amoureuse,
C’est tous les frissons des bois / […].
Verlaine, « Ariettes oubliées, I »
冒頭のC’est の反復

この項目のいくつかの例文は、youtubeのles bons profsによる。

4)形式と意味の対応

(1)韻で意味を強調

Et bonjour, Monsieur du Corbeau.
Que vous êtes joli ! Que vous me semblez beau ?
             (La Fontaine, « Le Corbeau et le Renard »)

Corbeau(カラス)とbeau(美しい)が韻を踏み、カラスが美しいように見えるという文の皮肉を強める効果がある。

(2)音色:母音の反復(assonance)、子音の反復(allitération)で意味を強調

Présente, je vous fuis //; absente, je vous trouve ;          
           (Racine, Phèdre)

あなたがいるとき(présente)、いないとき(absente)で、enteという音が共通。
エミスティッシュの前後で、je vousは共通。
見つける(trouve)の中に、あたな(v-ou)が含まれ、母音と子音が反復される。

以上のような音色上の対比が、意味の対比と対応している。
しかも、あなたに会いたいという気持ちが、trouver-vousと音を重ねることで、強く表現されている。

この詩句は本当に素晴らしい。
音と意味の対応が完璧な上に、エミスティッシュで意味の対比もなされ、ただただラシーヌの技巧に驚くしかない。

(3)リズム:rejet, contre-rejetで言葉を強調

Dieux ! que dira le roi ? Quel funeste poison
L’amour a répandu sur toute sa maison ! 
                       (Racine, Phèdre)

二行目の動詞(répandre)の目的語が、前の行の最後に置かれ、愛が毒(poison)であることが強調されている。
コントル・ルジェが効果的に使われている例。

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