フランス語 はじめの一歩

(2)文法の2つの側面。

外国語学習で文法という場合には、二つの側面がある。
A)単語を連結する規則
B) 言語が持つ概念の理解

A) 単語を連結する規則

電車は複数の車両が連結されて、鉄道の上を走る。

電車と同じように、文章も、単語が連結されて、言葉として流れていく。

連結の際には、それぞれの単語を繋ぐための装置が必要になる。
その装置を解説するのが、文法の大きな役割の一つ。

名詞はそのままの形では概念を示すだけなので、実際の使用に際しては、冠詞等の限定詞によって概念を具体化する。

フランス語の名詞には、ジェンダー(男女)があるために、単数・複数の区別を含め、必要に応じた限定詞が用いられる。

不定冠詞:un, une, des
定冠詞:le, la, les, l’
部分冠詞:du, de la, de l’
所有形容詞:mon, ma, mes
指示形容詞:ce (cet), cette, ces

こうした形を覚え、名詞の性・数に応じて、un livre, une table等、適切な形が何かを文法は説明する。

動詞もそのままの形では概念を示すだけなので、主語に応じて活用し、概念を具体化する必要がある。

動詞は、語幹と語尾で構成されている。
例えば、chanterであれば、chantが語幹(意味を担う)、erが語尾。
活用とは、語尾の形の変化。

Je chantetu chantes, il chante
nous chantonsvous chantezils chantent

直説法現在形等では、語幹も形を変えるものがある。

Ven/ir
je viens, tu viens, il vient
nous venons, vous venez, ils viennent

このように、名詞には相応しい限定詞を冠し、動詞は活用することで、単語を連結していく。

フランス語文法の学習を始めると、こうした形の変化の多さにうんざりし、難しいと感じることがしばしばある。
しかし、これは難しいのではなく、面倒なだけ。
最初から活用を全て覚える必要はないし、男女を間違えた冠詞を使ったとしても問題はない。

文法の一つの側面は、変形の規則を解説している取扱説明書。
実際の運用の度に解説に目を通し、徐々に連結器の形を覚えていけばいい。

B) 言語が持つ概念の理解。

文法で本当に難しいのは、日本語にはない概念を理解すること。

例えば、英語の過去と現在完了の違いが、最初の頃はなかなか理解できない。その理由は、現在の日本語では、完了の概念がないからである。

日本人にとって、過去の概念は理解しやすい。
過去は、「過去・現在・未来」の区分で認識され、私たちは普段からこの枠組みで時間を考えているからである。

それに対して、完了の概念は理解が難しい。
私たちの意識の中で、今の時点で完了していることは、過去のことであり、過去も完了も同じだと考える傾向にある。
実は、古代の日本語には完了があった。例えば、「つ」「ぬ」は、完了の表現だった。
また、現代の日本語で、「た」は、過去と完了を兼ねている。
昨日、それをし「た」。(過去)
明日、それをし「た」後で、出発する。(完了:明日のことなので、それをするのは過去ではなく、未来のこと。出発する前に、それをし終わっているという意味で、「た」は完了を示す。)
この区別が希薄であるために、現代日本語話者は過去と完了の区別を意識していない。

英語の仮定法、フランス語の条件法も、日本語とは考え方が違っている。

「明日雨が降ったら、行かないことにする。」

日本語話者がこのように言う時、明日、実際に雨が降るのか、降らないのか、明確に考えているわけではない。

それに対して、英語やフランス語では、雨が降るかどうかの現実性を明確に意識する。
そして、もし雨が降らないことを前提にして、その反対に、もし雨が降ったらという条件を考える。その際には、雨が降るという動詞は、特別な形にする。

If it should rain tomorrow / S’il pleuvait demain

その上で、行かないという帰結を仮定法/条件法で表す。

I would not go there / je n’irais pas là.

日本語では条件の雨が降るかどうかの現実性を強く意識して、言葉を換えることがない。
そのために、現実とは反対の条件を仮定した上で、その帰結を特別な形にするという言語のコンセプトがなかなか理解できない。
仮定法や条件法を難しいと感じるのは、そうした概念の違いのためである。

フランス語の時制を学ぶと、直説法、条件法の他に接続法がある。
接続法は英語でもあまり出て来ない概念であり、日本語話者には難しいと思われる。
https://bohemegalante.com/2019/05/21/trois-modes-grammaire/

さらに理解が難しいのは、過去を示す時制に、単純過去と半過去があり、さらに複合過去があること。
日本語でも英語でも、フランス語が持つ過去のニュアンスを表現する時制がないため、とりわけ理解するのが難しい。
https://bohemegalante.com/2019/05/18/systeme-temps-verbe-francais-2/

「となりのトトロ」の自然とルソー公園の自然の違いを感じることが、難しいと同時に、大変に興味深く、面白い。
日本語とフランス語で、概念が違う部分を知ることは、外国語を学ぶ最も大きな意義の一つ。
難しいかもしれないが、理解にトライする価値は大きい。

フランス語の初学者は、名詞の男女の区別や動詞の活用の多さに気持ちを挫かれてしまうことがよくある。
しかし、それは覚えることが多いだけであって、難しいのではない。
無理に覚えようとせず、(1)で説明したように、音の連なりと意味を繋げていくことを意識していれば、それなりに楽しく学習できる。

文法で本当に難しいのは、日本語にはないコンセプトを理解すること。
しかし、その難しさを乗り越えて、フランス語的な概念を理解することで、新しい世界観に接することができる。
それこそ、外国語を学習する楽しみの本質だといえる。

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