クローデルと日本の美 Paul Claudel et la beauté japonaise

ポール・クローデルは、1923年、日光で、日本の学生達に向けた講演を行った。その記録が、「日本の魂を一瞥する(Un regard sur l’âme japonaise. Discours aux étudiants de Nikkô)」として、『朝日の中の黒い鳥(L’Oiseau noir dans la soleil levant)』に収められている。

彼の日本に対する観察眼は大変に優れたもので、日本人として教えられることが多い。その中でも、日本的な美として二つの流れを感じ取り、ヨーロッパ人にはわかりにくい美を具体的に解説している部分はとりわけ興味深い。

一つの流れは、浮世絵に代表されるもの。
もう一つは、高価な掛け軸としてクローデルが分析の対象としているもの。

喜多川 歌麿、納涼美人図
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無の美学 禅と日本的美 序

日本的感性は、文献が残る奈良時代以来、はかなく、束の間の存在に美を見出してきた。平安時代には、もののあわれという美的感性も誕生する。

他方で、禅宗が本格的に日本に受容されたのは、13世紀の鎌倉時代であり、南北朝や室町時代にいたって世俗化する。
その過程で、諸行無常の感覚と禅的な無が結びつき、様々な形で具体化した。

14世紀以降、禅宗の寺院建築と石庭、枯山水が盛んに作られるようになる。
その内部に飾られるのは、水墨画、山水画、詩画軸。
能は、世阿弥によって飛躍的な発展を遂げ、舞台、能面、衣裳等も含め、総合芸術へと発展する。
佗び茶も総合芸術だ。茶室、掛け軸、陶器、生け花、そして会話術が一体となり、美の美学を生きたものとした。

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象徴主義絵画 不可視を可視化する芸術

19世紀後半のヨーロッパでは芸術観が大きく転換し、理想的な美を理想的な姿で描き出す伝統が下火になる。
その動きと対応するように、現実そのものを対象とする芸術観が生まれ始め、戸外で自然の風景を描く、印象派の画家達の活動が活発になった。
しかし、他方では、印象派とは対極に位置する流派も生まれた。その一つが象徴主義的絵画である。

日本で最もよく知られているのは、オーストリアの画家、ギュスターブ・クリムトだろう。

Gustav Klimt, Le Baiser

フランスの画家では、ギュスターブ・モローがよく知られている。

Gustave Moreau, Salomé Tatouée

こうした象徴主義絵画は何を対象し、どのような絵画表現を目指したのだろうか。

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ラ・グルヌイエール美術館 Musée de la Grenouillère 印象派の美術館

モネとルノワールが一つの場面を描いたことで有名なラ・グルヌイエール。
ラ・グルヌイエール美術館には、残念ながら本物はないが、本物を思わせる見事な複製画が並べられている。

RERのA線で、パリから約15分程度の所にあるシャトゥ・クロワシ(Chatou-Croissy)下車。
ラ・グルヌイエール美術館までは、徒歩で10分くらい。
http://www.grenouillere-museum.com/grenouillere/

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印象派の島シャトゥとメゾン・フルネーズ

印象派の絵画が好きな人なら、ルノワールの「船遊びをする人々の昼食」を見た覚えがあるだろう。

Auguste revnoir, Le Déjeuner des canotiers

この絵の舞台となったレストランが、メゾン・フルネーズ。今でも営業している。
https://www.tripadvisor.jp/Restaurant_Review-g666520-d858570-Reviews-Maison_Fournaise-Chatou_Yvelines_Ile_de_France.html

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ルドンの目は何を見るのか Œil de Redon

オディロン・ルドンは1840年に生まれ、19世紀の後半から20世紀の前半にかけて活動した画家。
彼の絵画は、平面的で単純化された物の形を、幻想的で神秘的な線や色彩で描き出し、暗示的、象徴的な雰囲気を漂わせている。

彼の絵画の中で、とりわけ面白いのが目をテーマにしたもの。
普通、目は現実のものを見る。しかし、ルドンの目は、見えないものが見えるようだ。

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非再現性の時代

19世紀の後半から、芸術は非再現性の時代に入る。
なにやら難しそうだけれど、要するに、芸術の目的がモデルとなる対象を模倣・再現することではなくなり、作品そのものになる、ということを意味する。

画家兼モデルだったシュザンヌ・ヴァラドンの肖像画を見ると、肖像画でさえモデルの再現を目指さない時代が来たことが理解できる。

19世紀の前半に発明された写真は、モデルを再現するのに適した機械。
その写真機が撮したヴァラドンの肖像画。

ヴァラドンの自画像と比べてみよう。

Suzanne Valadon, Autoportrait

この絵を見るときに問題になるのが、自分の顔を忠実に再現しているかではなく、彼女の絵画的なセンスや感性であり、表現の技術、そして作品としての質であることがわかるだろう。

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芸術作品の解説は必要か

Piet Mondrian, Composition avec rouge, bleu et jaune

絵画でも音楽でも、見たり聞いたりするだけでいい。頭で理解しようとすると、美が失われてしまう。

知的な解釈は、感覚的に感じ取る美を妨げ、素直に楽しむのを妨げる。

映画にしても、詩や小説でさえ、そのように言われることがある。

2019年度のバカロレア(L)での哲学の試験問題の一つは、「芸術作品を解説して何の役に立つのか」というものだった。

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先史時代のヴィーナスと20世紀芸術

2019年6月27日のFrance 2 20時のニュースで、先史時代の彫像と20世紀芸術についての紹介をしていた。

https://www.francetvinfo.fr/economie/emploi/metiers/art-culture-edition/sculpture-cette-venus-de-la-prehistoire-qui-a-revolutionne-l-art-du-xxe-siecle_3510891.html

Vénus de Lespugue
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