メルロ=ポンティ 『目と精神』 Merleau-Ponty L’œil et l’esprit 内面と外界の関係

モーリス・メルロ=ポンティ(Maurice Merleau-Ponty)の現象学は、身体と精神、外界と内面、客観と主観といった二元論的な思考に基づく対立を回避し、二項間の相互関係を解明しようとした点で、19世紀後半から始まった世界観の大転換の流れの中に位置づけられる。

そうした彼の思想は大変に興味深いのだが、難解な言葉で語られているため、理解するのが難しいことが多い。
ここでは、セザンヌの絵画について究明することを目的に書かれた『目と精神(L’œuil et l’exprit)』から二つの断片を選び、メルロ=ポンティの思想を探ってみよう。

(1) L’animation du corps n’est pas l’assemblage l’une contre l’autre des parties — ni d’ailleurs la descente dans l’automate d’un esprit venu d’ailleurs, ce qui supposerait encore que le corps lui-même est sans dedans et sans « soi ».
(2) Un corps humain est là quand, entre voyant et visible, entre touchant et touché, entre un œil et l’autre, entre la main et la main se fait une source de recroisement, quand s’allume l’étincelle du sentant-sensible, quand prend ce feu qui ne cessera pas de brûler, jusqu’à ce que tel accident du corps défasse ce que nul accident n’aurait suffi à faire… (chapitre II)

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セリーヌ・ディオン Céline Dion

カナダ出身でフランス語を母語とするセリーヌ・ディオンが、フランスで人気歌手になり、次にアメリカに進出して世界的な歌手へと変貌していく姿を描いた番組(フランス語)。とりわけ、プロデューサーでもあり、夫でもあるルネ・アンジェリルとの関係が綿密に描かれている。(前半、後半とも約50分)

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ポール・クローデル 「日本の魂を一瞥する」  Paul Claudel « Un regard sur l’âme japonaise » 日本の2つの美について

ポール・クローデルは1921年から1927年まで日本にフランス大使として滞在し、日本の芸術、文学、文化について様々な考察を行った。
その中でも、1923年7月に日光で行った講演「日本の魂を一瞥する(Un regard sur l’âme japonaise)」は、日本文化についてとても興味深い内容を含んでいる。

この講演で語られた日本の2つの美については、すでにこのブログで扱ったことがある。
クローデルと日本の美 Paul Claudel et la beauté japonaise

今回は、同じ箇所について、もう少し別の視点からアプローチしてみたい。


日本の美に関して、最初に言及されるのは、華やかな美。クローデルは日光の生徒たちに次のように語り掛ける。

C’est ce sentiment de révérence pieuse, de communion avec l’ensemble des créatures dans une bienveillance attendrie, qui fait la vertu secrète de votre art. Il est frappant de voir combien dans l’appréciation des œuvres qu’il a produites, notre goût est resté longtemps loin du vôtre.

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Everything happens to me エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー

Everything happens to meを日本語にしたら、「ぼくには嫌なことしか起こらない」といった感じだろうか。
道を歩いていたら黒猫を見るところから始まり、ゴルフの予定を入れると雨が降る。パーティをすると上の階の人から文句を言われる。風邪をひいたり、電車に乗り遅れたり、等々。愛する人に電話をし、電報を送ると、彼女から来たのは別れの手紙。しかも着払い!
Everythingというのは、そんな悪いことばかり。

ウディ・アレンの「レイニーデイ・イン・ニューヨーク」では、生まれ育った街ニューヨークが住みにくくて田舎の大学に行った主人公ギャツビー(ティモシー・シャラメ)が、週末にニューヨークに戻り、元カノの妹で、とても感じの悪いチャン(セレナ・ゴメス)の家に行き、そこにあったピアノで弾き語りする場面で、Everything happens to meが使われている。
ティモシー・シャラメは、歌の上手な素人っぽさをよく出してる。

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Night and Day 夜も昼も

「夜も昼も(Night and Day)」はコール・ポーターを代表するスタンダード・ナンバー。1932年にミュージカル『陽気な離婚』用に作曲され、1946年に作られたポーターの伝記的映画の題名にもなっている。

それほどよく知られた曲なので、2019年に発表されたウディ・アレンの映画「レイニー・デイ・イン・ニューヨーク」の最後の場面で、非常に効果的に使われている。
かなり複雑な週末をニューヨークで過ごしたカップル、ギャツビー(ティモシー・シャラメ)とアシュレー(エル・ファニング)は、田舎の大学に戻る前に、予め予定していた馬車で散策する。そこでふとギャツビーが、« In the roaring traffic’s boom / In the silence of my lonely room »と呟く。すると、嬉しそうにアシュレーが、« I know that, that’s from Shakespeare, right ? »と答える。その言葉を聞いたギャツビーは複雑な表情を浮かべ、彼女に別れを告げ、馬車から降りてしまう。

映画ではその理由がまったく説明されないままで終わる。なぜか?
ジャズ好きの人間なら、答えはすぐにわかる。

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ピレネー山脈の自然

ピレネー山脈の美しい自然を紹介したニュース。ビクトル・ユゴーやシャルル・ボードレールが詩に歌った湖も見ることができる。

À la découverte du sentier des cascades dans les Pyrénées

Hadrien Brasseur est guide photographe. Depuis six ans, il vient capturer le mouvement, la puissance des cascades dans cette partie des Pyrénées. 
Le décor évolue sans cesse. Niché dans la forêt, le chemin longe la rivière, l’enjambe à plusieurs reprises. Parfois calme, le cours d’eau devient tumultueux quelques mètres plus haut. La cascade du pont d’Espagne est sans doute la plus impressionnante. Un grand pont de pierres y a été construit. 

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ジャーナリストLiseron Boudoulのインタヴュー

Liseron Boudoulは世界中で戦争や紛争が起こる度に現地に赴き、驚くほど現場に密着した取材をするジャーナリスト。彼女は2022年2月の初旬にウクライナで取材を始め、親ロシア派の地域、ロシアに攻撃された地域、モスクワで約4ヶ月間活動した。

Depuis le début de la guerre en Ukraine, les reportages de Liseron Boudoul, grand reporter pour TF1, nous aident à comprendre la situation sur place et les enjeux de ce conflit. La journaliste a passé trois mois sur les lignes de front en Ukraine et un mois à Moscou. Elle est l’une des rares à être restée sur place si longtemps et à avoir tourné des reportages des deux côtés, en Ukraine et en Russie. De retour à Paris, Liseron Boudoul revient sur quatre mois d’une guerre en Europe.

長谷寺 日本の美

奈良県の初瀬(はせ)山の中腹にある長谷寺は、創建が8世紀前半と推定されるが、美しい姿を現代にまで伝えている。

日本の建造物の美の特色の一つは屋根にある。エアコンのついた現代の家と違い、かつての日本では湿度が一番の問題だった。そのために風通しのいい空間を作る必要があり、ヨーロッパの建造物のように壁を厚くするのではなく、装飾の中心は屋根に置かれたのだった。

屋根の美

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レナード・コーエン 「ハレルヤ」を聴く

ずいぶん以前のことになるが、モンマルトルの丘の上で、偶然「ハレルヤ(Hallelujah)」という曲を聴いた。路上パフォーマンスなのだが、ずっと心の中に残る演奏だった。

その後、テレビの番組で、カウンター・テナーの歌声が素晴らしいフィリップ・ジャルスキーが歌うのを耳にし、再び心を打たれた。

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奈良・長谷寺を詠うポール・クローデル Paul Claudel chante le temple de Hasé à Nara

ポール・クローデルは詩人・劇作家であるが、フランス大使でもあり、1921(大正10)年11月から1927(昭和2)年2月まで、休暇の期間を除くと約4年半、日本に滞在した。
その間、日本の文化や心性に強い親しみを持ち、日本の芸術家たちと交わり、書籍からも多くを学び、日本に関する著作、劇作、詩などを数多く執筆したのだった。

1926(大正15)年5月には、約2週間の日程で西日本の各地を訪れた。その中でも奈良の長谷寺には強い印象を受けたらしく、『百扇帖(Cent phrases pour éventails )』の中には、長谷寺関係の素晴らしい短詩がいくつか残されている。

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