マラルメ 「エロディアード 舞台」 Mallarmé « Hérodiade Scène » 言語と自己の美的探求 4/7

Berthe Morisot, Devant le miroir

乳母とエロディアードの最初の対話によって、見ることが自己の分裂を生みだし、「自己が見る自己」の映像が詩のテーマとして設定された。

エロディアードは、ライオンのたてがみのような髪を整えるために、乳母に手を貸すように命じる。
そこで、乳母は、髪に振りかける香水について、一つの提案をする。

         N.

Sinon la myrrhe gaie en ses bouteilles closes,
De l’essence ravie aux vieillesses de roses,
Voulez-vous, mon enfant, essayer la vertu
Funèbre?

           N. (乳母)

閉じた壺の中の、陽気な没薬でないとしたら、
薔薇が枯れていく時に抽出されたエキスの
効力を、お姫様、お試しになりませんか、
不吉ですが。

この乳母の言葉は、6/6のリズムで、日本語の5/7/5のような調子の良さがある。
しかし、最後の行になり、3音節の言葉(fu-nè-bre)の後で突然詩句が打ち切られ、続く9音節は、次のエロディアードの言葉によって引き受けられる。
こうした技法によって、不吉な(funèbre)という言葉が強調される。

しかし、なぜ姫に、不吉なエキスなどを試す気があるかどうか尋ねるのだろう。

Myrrhe

乳母は最初、没薬(もつやく、myrrhe)を口にする。それは、植物性のゴム樹脂で、古い時代からお香として使われてきた。
つまり、香水の役割をするものであり、ここでは、陽気な(gaie)という形容詞が付されている。
そして、姫は、陽気な香りは気に入らないと言ったのだろう。
乳母の言葉の最初に置かれた、「・・・でなければ(sinon)」という言葉が、ここには記されていない姫の反応を暗示している。

乳母は、姫の返事を受け、陽気な香りではなく、今度は、陰気な、そして不吉でさえある香りを提案する。

それは、薔薇から抽出されたもの。しかし、咲き誇る薔薇ではなく、年老いていく(les vieillesses)時、つまり枯れていく時のものだと言われる。

ここで思い出したいのが、薔薇とエロディアードの関係。
マラルメが最初にエロディアードの名前を詩の中で使ったのは、「花々」の中。

Et, pareille à la chair de la femme, la rose
Cruelle, Hérodiade en fleur du jardin clair,
Celle qu’un sang farouche et radieux arrosé !

女性の肉体に似た、薔薇の花、
残酷で、明るい庭で花開くエロディアード、
獰猛で、光輝く、注がれた一滴の血!

エロディアードと薔薇は、血のように赤く、鮮やかだ。

それに対して、乳母は、年老いること、枯れることを口にし、彼女の提案する薔薇のエキスには、過ぎ去る時間、全てを死へと導く時間が含まれていることを暗示する。
陽気な香りが嫌ならば、香りの不吉な効果はどうか、と。

その際、マラルメは、音によっても、不吉な効果を強めている。
Vertu / funèbreを続けて発音するとすぐに感じられるのは、母音 [ u ]の反復。
母音反復(アソナンス)によって、効果(vertu)を高めているのである。

この乳母の提案に対して、エロディアードはどのように答えるのだろう。

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