ペロー 巻き毛のリケ Perrault Riquet à la Houppe 変身を可能にするものは何か? 1/7

1697年に発表されたペローの昔話集には、「赤ずきんちゃん」「眠れる森の美女」「シンデレラ」等、後の時代に世界中で親しまれる物語が含まれている。
しかし、全ての物語が知られているわけではなく、「巻き毛のリケ(Riquet à la Houppe)」のように、日本ではほとんど知られていない作品もある。

どんな物語かと思い「巻き毛のリケ」を読んでみると、まず、全く昔話らしくない。子供のための話というよりも、気の利いた短編小説という感じがする。
主人公は愛する女性に結婚してくれるよう説得するのだが、実に理屈っぽい。その上、最後のどんでん返しがおとぎ話的ではなく、現代ならごく当たり前の心持ちによる説明。
現代の読者にとって、面白い話とは思えないかもしれない。

しかし、ルイ14世の宮廷社会が時代背景であることを考えると、この作品が大変に興味深く、読者を楽しませ、かつ学ばせてくれることがわかってくる。
全部で10.000字程度の長さがあるので、何回かに分けて、少しづつ、全文を読んでみよう。

実際にフランス語を読む前に、読み方の注意を。

外国語を読む時の最良の方法は、日本語に変換せず、外国語のまま理解すること。
そうした読み方を実践するには、文章を前から読み、かたまり毎に区切り、内容を理解するといったテクニックを身につける必要がある。

以下のフランス語文では、少し煩雑になるが、単語のかたまり事にスラッシュを入れ、切れ目を示していく。もちろん、その区切れは絶対的なものではなく、単なる補助にすぎない。

また、できるかぎりフランス語の語順に従って、日本語を付けていく。
ただし、理解可能な日本語とするためには必ずしもフランス語の語順通りにはいかない。そのことは、フランス語のまま理解することと、日本語に変換することは別の作業であることを示す一つの例になる。

最初に題名。

Riquet à la Houppe CONTE.

「巻き毛のリケ」  非現実的な物語

Riquetは人名。

Houppe
17世紀のアカデミー・フランセーズの辞書によれば、houppeは、レースや絹などの塊で、飾りとして用いられた。従って、決して「巻き毛」とは限らない。
ただし、ここでは今までの翻訳に従って、巻き毛としておく。

Conte
17世紀には、空想の冒険で、多くの場合不思議なことが起こる、短い物語を意味した。

題名の後に、conteと記されているので、「巻き毛のリケ」が架空の話であり、非現実的な内容が出てくることが、予告されている。


Il était une fois / une reine / qui accoucha d’un fils / si laid / et si mal fait, / qu’on douta longtemps / s’il avait forme humaine. Une fée, / qui se trouva à sa naissance, / assura / qu’il ne laisserait pas d’être aimable, / parce qu’il aurait beaucoup d’esprit : / elle ajouta même / qu’il pourrait, / en vertu du don / qu’elle venait de lui faire, / donner autant d’esprit / qu’il en aurait / à la personne / qu’il aimerait le mieux. 

昔あるところに一人の女王がいた。彼女は一人の男の子を生んだ。その子はとても醜く、姿形が悪かったので、人々は長い間、彼が人間の形をしているかどうか疑うほどだった。一人の妖精が、その子の洗礼式に居合わせ、はっきりとこう言った。この子は必ず人から愛されるようになる。というのも、沢山のエスプリを持つようになるから。妖精は次のように付け加えることさえした。この子は、私がしたばかりの贈り物の力によって、自分が持っているのと同じだけのエスプリを人に与えることができるようになる。その人は、彼が最も愛することになる女性。

Il était une fois … :

「昔あるところに・・・」という昔話の決まり文句。

この言葉があることで、「巻き毛のリケ」が昔話であるということが示される。

une reine :

女王だけが出てきて、王が出てこない。物語の後半で、結婚の許可の場面では、逆に王にしか言及されない。
その展開にどのような解釈が可能なのか?

si laid et si mal fait qu(e)… :

si … queは、とても・・・なので・・・。

laidは顔、mal faitは身体付きに関係する。

on douta (…) si … :

siは、・・・かどうか。 doutaは単純過去形。物語がここから動き出すことを示す。

Une fée, / qui se trouva à sa naissance, / assura… :

「一人の妖精」に関係代名詞quiで始まる文が続き、その妖精が「洗礼式にいた」ことが告げられる。
その後、動詞assuraが来て、妖精が何かを断言した。
douta, se trouva, assuraと単純過去形の動詞が続き、「人々が疑った。」「妖精がいた。」「その妖精が言った。」という物語の展開が示される。

妖精が登場することで、conte、il était une foisに続き、この物語が架空のものであることが示される。
17世紀後半、妖精の役割は、未来を予告し、超自然なことを行うこと、と考えられていた。

il ne laisserait pas d’être aimable :

ne pas laisser de …
必ず・・・する、・・・するのをやめない。

aimable
aimerされるのに値する、愛らしい、等の意。

動詞 laisserait の時制は条件法現在(=過去における未来)。assuraした時点から見て、それ以降、子供がずっと愛らしいということを示す。
次の、il auraitも同様。

il aurait beaucoup d’esprit :

エスプリは日本語に対応する言葉も概念もなく理解が難しいが、17世紀の辞書に掲載されている数多くの字義の中では、「理性的な魂の様々な機能」がここでの意味だろう。あえて対応する日本語を探すとしたら、知恵、機知、判断力、考える力といったもの。

リケはaimableに生まれつき、将来エスプリを持つようになると記され、aimableとespritとが関連付けられていることに注目しておきたい。
この二つの要素は、17世紀後半の宮廷社会の価値観を示している。

qu’il pourrait / en vertu du don / qu’elle venait de lui faire, / donner autant d’esprit / qu’il en aurait / à la personne / qu’il aimerait le mieux :

構文が少し複雑になっているが、現代のフランス語でこうした構文はあまり使われない。

svoだけを取り出すと、il pourrait / donner autant d’esprit / à la personne.
彼は、同じだけのエスプリを、人に与えることができるだろう。

pourraitの時制は条件法現在(=過去における未来)。

en vertu du don / qu’elle venait de lui faire :

en vertu du don、
贈り物の力によって。

関係代名詞que以下の文で、その贈り物(don)は、彼女が彼にしたばかりだった、と説明される。

/ donner autant d’esprit / qu’il en aurait / à la personne / qu’il aimerait le mieux. 

espritに関して、彼が将来持つことになる(aurait – 条件法現在=過去における未来)という説明がなされる。

la personneに関しても、彼が将来最も愛するすることになる(épouserait – 条件法現在=過去における未来)という説明がされる。

妖精がassuraし、ajoutaしたことは、リケの将来のこと。つまり、物語の内容の予告。
その内容とは、リケがたくさんのエスプリを持ち、同じだけのエスプリを愛する女性に与えることができること。


Tout cela consola un peu la pauvre reine, / qui était bien affligée / d’avoir mis au monde un si vilain marmot. / Il est vrai / que cet enfant ne commença pas plus tôt à parler, / qu’il dit mille jolies choses, / et qu’il avait / dans toutes ses actions / je ne sais quoi de si spirituel, / qu’on en était charmé. / J’oubliais de dire / qu’il vint au monde avec une petite houppe de cheveux sur la tête, / ce qui fit / qu’on le nomma Riquet à la Houppe, / car Riquet était le nom de la famille. 

そうしたこと全てが、少しだけ、かわいそうな王女を慰めた。彼女は、とても辛かった、こんなにひどい猿みたいな男の子を生んでしまったのだから。実のところ、その子は、言葉を話し始めるとすぐに、数多くの可愛らしいことを言い、全ての行動には、なにかわからないがとてもエスプリの利いたところがあったので、みんながリケをとても気に入っていた。言うのを忘れていたが、その子が生まれてきた時、頭の上に髪の毛の小さな塊があった。そのために、みんなは彼を「巻き毛のリケ」と呼んだ。リケは家の名前だった。

la pauvre reine, / qui était bien affligée / d’avoir mis au monde un si vilain marmot.

かわいそう王女が、qui以下の文でされに説明される。

affliger :
精神的、あるいは肉体的に、苦しめるという意味。
ここでは、être affligée de …で、王女が苦しんでいる原因が、de以下で示される。

avoir mis au monde… :
avoir misは複合形で、était affligé の時点で、すでに完了していたことを示す。
mettre au mondeは、この世に置く=生む、の意。

un si vilain marmot :
siは、とても、の意。
vilainは、見た目が気に入らない、不愉快、の意。
marmotは、あごひげと長い尾を持った猿の一種。あるいは、室内装飾に使われたグロテスクな像。

cet enfant ne commença pas plus tôt à parler / qu’il dit milles jolies choses, / et qu’il avait / dans toutes ses actions / je ne sais quoi de si spirituel, / qu’on en était charmé.

ne pas plut tôt … que… :
・・・するとすぐに・・・する。
ここでは que… et que…と、二つのque…が続く。

je ne sais quoi de si spirituel :
何か分からないもの。これ全体で一つの名詞と見なす。quelque choseとほぼ同じと考えていい。

deは、je ne sais quoi に形容詞を付加する際に用いる前置詞。
si (… que), とても・・・なので・・・。
spirituel. 17世紀には、エスプリと関係していると考えられた言葉。

qu’on en était charmé :
( si spirituel… ) qu’on … とてもエスプリが来ているので、その結果・・・

être charmé de :
de… を大変に気に入る。 charmerは、魅了するの意。

中性代名詞のen :
現在の文法では人間の受けることはないと原則的には考えられている。一方、17世紀には、物だけではない、人も受けることができた。
従って、みんなが魅了されていたのは、リケだと考えることもできるし、先行する文章全体を指し、リケが可愛いことを言い、行動のもエスプリが感じられることだと考えてもいい。

たくさんのエスプリを持つ結果、リケは、可愛らしいこと、あるいは感じのいいことをたくさん言うことになる。そして、どんな行いにもエスプリが伴うようになる。
17世紀の宮廷社会において、エスプリのある会話術と振る舞いが、何よりも重視されていたことを示している。

ce qui fit / qu’on le nomma Riquet à la Houppe,

ce qui fit :
ceは、前に書かれた、リケの頭の上には髪の毛の小さな塊があったことを指す。

ce qui fait que : 
その結果、そのために

on le nomma Riquet :
le は cet enfant.
人々はその子をリケと名付けた。


Au bout de sept ou huit ans, / la reine d’un royaume voisin / accoucha de deux filles. / La première / qui vint au monde / était plus belle que le jour ; / la reine en fut si aise / qu’on appréhenda / que la trop grande joie / qu’elle en avait / ne lui fit mal. / La même fée / qui avait assisté à la naissance du petit Riquet à la Houppe / était présente, / et, / pour modérer la joie de la reine, / elle lui déclara / que cette petite princesse n’aurait point d’ esprit, / et / qu’elle serait aussi stupide qu’elle était belle. / Cela mortifia beaucoup la reine ; / mais elle eut, / quelques moments après, / un bien plus grand chagrin, / car la seconde fille / dont elle accoucha / se trouva extrêmement laide.

7年か8年後、近くの王国の女王が、二人の娘を産んだ。最初に生まれた子は、日差しよりも美しかった。女王はそのことを大変に喜んだので、人々が心配したのは、あまりに喜びが大きすぎて、彼女の身体に悪いのではないかということだった。巻き毛のリケちゃんの誕生に立ち会っていたのと同じ妖精が、そこにいた。そして、女王の喜びを穏やかなものにしようとして、次のように告げた。この可愛い王女がエスプリを持つことはなく、美しいのと同じくらい愚かになるだろう、と。そのことは女王をひどく悲しませた。しかし、しばらくすると、もっと大きな悲しみを持つことになった。というのも、彼女が生んだ二番目の娘は、ひどく醜かったから。

deux filles. La première qui vint au monde était plus belle que le jour.

la première, qui vint au monde
deux fillesの中の最初のfille

qui vint au monte
filleに対して、premièreと最初に言い、次にqui 以下で、この世にやってきた=生まれた、と説明を加えている。

plus belle que le jour
日差しよりも美しいという表現は、美しい女性を表す時にしばしば用いられる。

la reine en fut si aise / qu’on appréhenda / que la trop grande joie / qu’elle en avait / ne lui fit mal.

être aise de
・・・に満足する。

en
前の文章、最初の娘が日差しよりも美しいことを指す。

si … que
とても・・・なので、

appréhendre
ここでは、恐れるの意。

la trop grande joie qu’elle en avait
joie が誰のものか示すために、関係代名詞que以下の文が付けられ、「彼女がそのことで持つ」喜び、ということが明示される。

la trop grande joie (…) ne lui fit mal.
neは、虚字のneと呼ばれるもので、否定の意味はない。appréhender (恐れる)の目的語となる que 文のような場合、否定的な思いを表現するため虚字のneが使われることがある。

faire mal à … ・・・に痛みを与える、つらい思いをさせる。

喜びが大きすぎると、逆に身体に悪いとか、辛い思いをするという考えは、「過激さ」を避け、「中庸」に価値を置く時代精神を表している。

La même fée / qui avait assisté à la naissance du petit Riquet à la Houppe / était présente,

同じ妖精と言い、念を押すように、リケが生まれた時に立ち会った妖精と付け加えている。

petit Riquet
petitは小さいというよりも、子供に愛称として付ける言葉。例えば、赤ずきんちゃんは、petit chaperon rouge.

pour modérer la joie de la reine

modérerは、減じる、激しさを小さくする、の意。

cette petite princesse n’aurait point d’ esprit, / et / qu’elle serait aussi stupide qu’elle était belle.

petit Riquetに対応して、petite princesseとpetitが付けられている。

aussi stupide qu’elle était belle
愚かさ(stupide)と美しさ(belle)が同程度だと言われる。
この言葉から、2つのことがわかる。
1)エスプリがないこと=愚かさ。
2)リケは極端に醜い。そこから推測して、王女の愚かさも極端なほどだということが言外に言われていることになる。

妖精がリケの誕生に際して言ったことは、エスプリを持つことと、愛する人にエスプリを与えることができること。
他方、第一の王女に関しては、エスプリを持たず、美しいけれど愚かだと言うに留まっている。
その不均衡さを補うのが、以下に続く女王と妖精の会話。

Cela mortifia beaucoup la reine

mortifier
元々は、肉を軟らかくする、という意味だが、比喩的表現で、人に悲しみを引き起こすという意味でも使われる。

la seconde fille / dont elle accoucha / se trouva extrêmement laide.

二番目の娘と最初に言い、さらに彼女が生んだと付け加えている。
関係代名詞のdontが使われるのは、accoucher de と、accoucher の後ろにはdeが必要とされるから。

2番目の王女はリケと同じように、極端に醜いとされる。としたら、リケはどちらの王女と恋に落ちるのだろうか?
二人の対照的な娘を登場させることで、読者はそうした興味を引かれることになる。


« Ne vous affligez point tant, madame, / lui dit la fée /, votre fille sera récompensée d’ailleurs, / et elle aura tant d’esprit, / qu’on ne s’apercevra presque pas / qu’il lui manque de la beauté. /
— Dieu le veuille, / répondit la reine / ; mais n’y aurait-il pas moyen / de faire avoir un peu d’esprit à l’aînée qui est belle ? /
— Je ne puis rien pour elle, madame, / du côté de l’esprit, / lui dit la fée ;/ mais je puis tout, / du côté de la beauté ; / et, / comme il n’y a rien / que je ne veuille faire pour votre satisfaction, / je vais lui donner / pour don / de pouvoir rendre beau ou belle la personne / qui lui plaira. »

「そんなに苦しまないで下さい。」と妖精が言った。「お嬢様は、別な面で報われることになるでしょう。たくさんのエスプリをお持ちになるので、彼女に美しさが欠けていることに、誰もほとんど気づかなくなるでしょう。」
「神様がそのように望まれますように。」と女王は答えた。「でも、きれいな方の娘に、少しでもエスプリを持たせる方法はないのでしょうか?」
「彼女のために私は何もすることができません、奥様、エスプリについては。」と妖精が言った。「でも、美しさに関しては、全てのことができます。そして、私があなた様のためにしたくないことなど何もありませんから、私はその子に贈り物しようと思います。彼女の気に入る人を美しくできるという贈り物です。」

Ne vous affligez point tant

affligerは、苦痛を与える、苦しませるの意。s’affliger=自分を苦しめる→苦しむ。

tant
多くを意味する副詞。

votre fille sera récompensée d’ailleurs

récompenser
報いる、
sera récompenséeと受動態の単純未来形になっている。
これ以前の文では、妖精の言葉は間接話法で語られていたので、過去における未来(条件法現在の形)が使われてきた。ここでは直接話法なので、単純未来形が使われている。
ペローは、話法を変化させることで、時制を変え、語り方にヴァリエーションを与えている。

d’ailleurs
別の場所で、別の面で。

elle aura tant d’esprit, / qu’on ne s’apercevra presque pas / qu’il lui manque de la beauté.

tant de… que
とても・・・なので・・・。

il lui manque de la beauté

il manqueのilは非人称。
主体は、luiで示され、欠けているものは目的語の位置に置かれる。

彼女に欠けているのは美(de la beauté)。
とすると、次女は、エスプリがあり、外見が醜いことになり、リケと全く同じ特質を持つことになる。

ここでもう一つ注目されるのは、エスプリを持っている人に対して、人々は美しさが欠けているとは、ほとんど気づかない(on ne s’apercevra presque pas)とされていること。
そのことは、宮廷社会において、外見の美よりもエスプリの方が重要であるという価値観を暗示している。
そして、妖精のこの言葉は、物語の最後の展開で、大きな意味を持つことになる。

Dieu le veuille

veuilleはvouloirの接続法現在。
接続法は、日本語で言うと、動詞を体言止めする用法と言ってもよく、英語であれば、主語のある不定法と考えてもいい。つまり、・・・すること。
ここでは、神がそれを望むこと。
そこから、神がぞれを望みますように、という願望や命令と理解することができる。

n’y aurait-il pas moyen / de faire avoir un peu d’esprit à l’aînée qui est belle ?

n’y aurait-il pas moyen

auraitは条件法現在。もし可能であればという含みがあり、丁寧さのニュアンスが生まれる。

faire avoir
faireは使役。faire avoirで、持たせる、の意。

l’aînée qui est belle
長女と言い、その後から、きれいなを付け加えている。

次女は醜く、長女は美しい。そのことはすでに分かっているが、ペローはあたかも年齢層の低い読者を想定しているかのように、ここまででも、言わなくてもわかっている情報をあえて付け加えている。

Je ne puis rien pour elle, madame, / du côté de l’esprit, / lui dit la fée ;/ mais je puis tout, / du côté de la beauté.

妖精の力に関して、対照的な表現が使われている。
du côté de l’esprit / du côté de la beauté
je ne puis rien / je puis tout

エスプリに関して、妖精は何もできない。美に関しては、全てができる。

je puis
puisはpouvoirの直説法現在形。現在ではje peuxの方が一般的だが、17世紀にはje puisの方が普通だった。
17世紀の辞書には、 Je puis, tu peux, il peut.と記され、je peuxの方が例外的と記されている。

すでに記したように、妖精は、未来を予告し、超自然なことを行うことができる存在と考えられていた。
しかし、ペローは、妖精の力を外見の美に限定し、エスプリに対しては無力だとする。
それはなぜか?
ここにも、「巻き毛のリケ」を理解するための鍵が埋め込まれている。

妖精は、長女に対して、エスプリを与えることができない。その補いとして、別のプレゼントをする。
まずプレゼントに理由。

comme il n’y a rien / que je ne veuille faire pour votre satisfaction,

commeは理由を表す。・・・ので。

rien que je ne veuille faire
neはpasやpoint等を伴わず、単独で否定を役割を果たすことがある。
私がしようと思わない何もない、の意。

veilleはvouloirの接続法現在。
rienを説明する関係代名詞que以下の文の中で、現実にするしないにかかわらず、望むことという概念を問題にしているために、接続法が用いられている。

次にプレゼントの内容。

je vais lui donner / pour don / de pouvoir rendre beau ou belle la personne / qui lui plaira. 

lui
à l’aînée. 上の娘に。

pour don
贈り物として。

rendre beau ou belle la personne
目的語はla personneで女性名詞なので、普通であればbelleだけでいい。
beauと非文法的な一言を付け加えることで、美しくする相手が男性かもしれないという予測が生まれる。

la personne qui lui plaira.
美しくする相手は、彼女の気に入る人。
17世紀において、plaire(気に入る)という言葉は、非常に大きな価値を担っていた。
宮廷社会の中で、相手に気に入られること、あるいは観客や読者の気に入られる作品であることが、最も重要であると見なされた。

リケがエスプリを与える相手は、彼が最も愛することになる人( la personne / qu’il aimerait le mieu)。
長女が美を与える相手は、彼女の気に入ることになる人(la personne / qui lui plaira)。
aimer le mieuxとplaireが同等の価値を持つことを、この比較から推定することができる。(続く)


ここまで読んできた部分全体を、もう一度読み返してみよう。
その際、朗読を聞きながら前から文字を追っていくと、日本語に変換せずに理解する習慣が身に付いていくはず。

Riquet à la Houppe CONTE.

 Il était une fois / une reine / qui accoucha d’un fils / si laid / et si mal fait, / qu’on douta longtemps / s’il avait forme humaine. Une fée, / qui se trouva à sa naissance, / assura / qu’il ne laisserait pas d’être aimable, / parce qu’il aurait beaucoup d’esprit : / elle ajouta même / qu’il pourrait, / en vertu du don / qu’elle venait de lui faire, / donner autant d’esprit / qu’il en aurait / à la personne / qu’il aimerait le mieux. 

 Tout cela consola un peu la pauvre reine, / qui était bien affligée / d’avoir mis au monde un si vilain marmot. / Il est vrai / que cet enfant ne commença pas plus tôt à parler, / qu’il dit mille jolies choses, / et qu’il avait / dans toutes ses actions / je ne sais quoi de si spirituel, / qu’on en était charmé. / J’oubliais de dire / qu’il vint au monde avec une petite houppe de cheveux sur la tête, / ce qui fit / qu’on le nomma Riquet à la Houppe, / car Riquet était le nom de la famille. 

 Au bout de sept ou huit ans, / la reine d’un royaume voisin / accoucha de deux filles. / La première / qui vint au monde / était plus belle que le jour ; / la reine en fut si aise / qu’on appréhenda / que la trop grande joie / qu’elle en avait / ne lui fit mal. / La même fée / qui avait assisté à la naissance du petit Riquet à la Houppe / était présente, / et, / pour modérer la joie de la reine, / elle lui déclara / que cette petite princesse n’aurait point d’ esprit, / et / qu’elle serait aussi stupide qu’elle était belle. / Cela mortifia beaucoup la reine ; / mais elle eut, / quelques moments après, / un bien plus grand chagrin, / car la seconde fille / dont elle accoucha / se trouva extrêmement laide. 

 « Ne vous affligez point tant, madame, / lui dit la fée /, votre fille sera récompensée d’ailleurs, / et elle aura tant d’esprit, / qu’on ne s’apercevra presque pas / qu’il lui manque de la beauté. / 
 — Dieu le veuille, / répondit la reine / ; mais n’y aurait-il pas moyen / de faire avoir un peu d’esprit à l’aînée qui est belle ? / 
 — Je ne puis rien pour elle, madame, / du côté de l’esprit, / lui dit la fée ;/ mais je puis tout, / du côté de la beauté ; / et, / comme il n’y a rien / que je ne veuille faire pour votre satisfaction, / je vais lui donner / pour don / de pouvoir rendre beau ou belle la personne / qui lui plaira. »

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