現代アート 最初の一歩 Premier pas vers l’art du 20e siècle 3/5 フォーヴィスムとキュビスム

現代アートでは、何が描かれているのかわからないし、絵画の理解を裏付ける物語は存在しない。
そうした点が、現代芸術を伝統的な芸術と区別する根本的な違いである。

では、現代アートにアプローチするためには、どうすればいいのだろうか。

作品を前にする時、理解しようとする必要はなく、ただそこに描かれているものをそのまま見るだけでいい。
頭でそうしたことがわかっていても、理解できず、何が描かれているのかわからないものを前にして、美を感じることは難しい。

その理由は、目が慣れていないから。

これから、目を慣らすために、20世紀初頭に誕生した二つの絵画の流れに属する絵を見ていこう。
一つは、フォービスム。もう一つはキュビスム。

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現代アート 最初の一歩 Premier pas vers l’art du 20e siècle 2/5 さらば 遠近法と物語

現代アートは伝統的な絵画に対して革命を起こしたといえるほど、伝統の核心をなすコンセプトを破壊し、新しい芸術のあり方を提示した。

その新しさを理解するためには、何を壊したのか知る必要がある。

ここでは、描き方の変化として、遠近法を放棄したこと、描く題材に関しては、物語の下支えを取り払ったことを、確認していく。

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現代アート 最初の一歩 Premier pas vers l’art du 20e siècle 1/5 

現代アートという用語がどのような美術作品をカバーしているのか、厳密に定義することは難しい。
ここでは、19世紀後半に起こった芸術に関するコンセプトの変化以降、20世紀に新たな潮流となった様々な美術作品を指すものとする。

現代アートは難しい、としばしば言われる。
実際、何を描いているのかわからないし、それ以前の絵画の基準では、美醜の区別もつかない。
もしピカソだと言われずにピカソの作品を見たら、素直に素晴らしいと思えるだろうか。

では、現代アートを楽しむための基本的な知識とは、どのようなものだろうか。

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絵画における文化の交わり ゴッホと司馬江漢

私たちが何か異質なものを受容するとき、私たち自身が無意識に持っている感受性が自然に働き、異質な要素を何らかの形で変質させる。
うまくいけば、そうした受容から、新たなものが生み出される。
絵画を通して、異文化受容の一つのあり方を見てみよう。

No. 1
No. 2

No. 1はヨーロッパの風物を描いた絵画。
No. 2は花魁の絵。
では、どちらがヨーロッパ的で、どちらが日本的と感じるだろうか?

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外国語学習 過去と完了

英語を勉強し始めた頃、現在完了が出てきて、過去とどう違うのわからなかったという経験はないだろうか。
私たちの自然な感覚からすると、完了したことは過去のことなのだから、現在完了も過去のことに違いないと思う。その結果、二つの違いがよくわからない。
その上、現在完了に関しては、経験・継続・完了の3用法があると説明されるが、過去の概念に関しては何の説明も、用法の解説もない。なぜだろう?

さらに、過去完了(had+pp.)はある程度理解できるが、未来完了(will have+pp.)はわからないという人もいる。
過去未来完了(would have+pp.)になると、最初から理解を諦めてしまう人も多い。

なぜ日本語母語者は、英語やヨーロッパの言語の時制体系をすっと理解できないのだろうか?
(ここでは、説明を簡潔にするため、英語を例に取ることにする。)

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ヴィジェ=ルブラン Élisabeth Vigée Le Brun ロココ絵画後期の肖像画家

マリー・アントワネットの肖像画を数多く描いたことで知られる、エリザベート・ヴィジェ=ルブラン(1755-1842)。
彼女は、女性であるために、男性社会であったアカデミーになかなか入会できない等、不当な扱いを受けたこともあったが、画家としての活動を諦めることはなかった。

ヴィジェ=ルブランの作品の四分の三は肖像画であり、18世紀フランスのロココ絵画、しかも後期のロココ絵画を代表する画家の一人。
彼女の肖像画は、19世紀印象派のルノワールと同じように、描かれた人がナチュラルでありながら、より美しく見える印象を与える。そこで、彼女に描かれたいと願う貴族や大商人の女性達は数多かっただろう。

これから、600以上あると言われるヴィジェ=ルブランの肖像画の中から、自画像、娘のジュリーとの母子像、そしてマリー・アントワネットの肖像画を見ていこう。

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ルーブル美術館の再開 Réouverture du Louvre 2020年7月6日

2020年7月6日からルーブル美術館が再開するそうです。
7月5日TF1、20Hのニュースで、10分間に渡り、再開に関するとても興味深いニュースを流していました。
普通では見ることのできない角度からのルーブル美術館もあります。ぜひご覧下さい。(Youtubeビデオとして、限定公開します。)

Le musée du Louvre, le plus grand et le plus visité au monde, va rouvrir ses portes à partir de ce lundi 6 juillet après plus de trois mois de fermeture dus à la crise du coronavirus. L’établissement en a profité pour se refaire une beauté.
Installation de nouvelles œuvres, dépoussiérages, nettoyage des verrières… Nos équipes ont assisté aux derniers préparatifs.

外国語学習 日本語とは違う世界観を知る

フランスでフランス人と話してるとき、すぐに答えられない質問をされることがある。
例えば、「神戸に住んでいる。」と言うと、「東京から何キロ離れているのか?」と質問されたりする。
もう一つよく質問されるのは、「最初にフランスに来たのはいつ?」
その際には、10年くらい前とか、曖昧な答えしかいえない。

フランス人に同じ質問をすれば、「神戸と東京間は約430キロ」とか、「最初は2012年。」とか、きっちりした答えが戻ってくる方が普通。

こうした違いは何を意味し、そのことから、どんなことがわかるのだろうか。

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ランボー 言葉の錬金術 Rimbaud Alchimie du verbe 『地獄の季節』の詩法 5/5

「永遠が見つかった!」と韻文詩の中で叫んだ後の散文詩は、日常的な言語感覚では意味不明なものにますます傾いていく。
構文は単純であり、初級文法さえ知っていれば理解可能な文が続く。
理解を妨げるのは、単語と単語の繋がり。

例えば、冒頭の「ぼくは空想的なオペラになった。」という一文。
人間がオペラになる? 
空想的な(fabuleux)オペラとは何か? 
ランボーはその答えを導くヒントをどこにも残していない。
読者は、自分の持つ知識と感性に従って、何らかの思いを抱き、次の文に進むしかない。
しかし、前の文と次の文の意味的な連関もよくわからない。

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ランボー 言葉の錬金術 Rimbaud Alchimie du verbe 『地獄の季節』の詩法 4/5

韻文詩「空腹(Faim)」と「狼が叫んでいた(Le loup criait)」は、空腹を歌う詩。
二つの詩とも、内容はただ「腹へった!」というだけ。
そんな空虚な内容を、軽快で、音楽性に満ち、スピード感に溢れた詩句で綴っていく。

ランボーは、意味よりも表現にアクセントを置き、これまでの詩法に違反したとしても、スタイリッシュな詩句を口から紡ぎ出す。

その詩句の魅力に引き寄せられた読者は、何らかの意味があると信じ、読者自身で意味を考え出す。
それがランボーの詩句の意味となり、意味が重層化され、ランボーの詩の中に堆積してきた。

ランボーは、『地獄の季節』の散文でも、同じ作業を行う。
二つの詩に続く散文は、とりわけ魅力的に響く。

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