
私たちが芸術作品や文学作品に触れるとき、普段はあまり画家や作家の生まれた年齢を考えることはないのだが、実は作品にとってかなり大きな要素になっている。
というのも、同じ世代に属していると、一つの時代の雰囲気の中で育ち、同じような教育を受けているからである。
小澤征爾と大江健三郎の対談集『同じ年に生まれて』に倣って、19世紀後半に活動の中心が位置する芸術家や作家たちを、出生年順に列挙してみよう。
1814年
ナポレオン・ボナパルトの退位
ルイ18世の王政復古
1817年
ドービニー(シャルル=フランソワ、1817-1878:画家)

1818年
(カール・マルクス、1818-1883、プロイセン出身の経済学者)『資本論』『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』
1819年
クールベ(ギュスターブ、1819-1877:画家)

1821年
ボードレール(シャルル、1821-1867、詩人、評論家) 『悪の華』
フロベール(ギュスターブ、1821-1880、小説家)『ボヴァリー夫人』
シャンフルーリ(1821-1889、作家)『写実主義』
(ドストエフスキー、1821-1881、ロシアの小説家)『罪と罰』
1822年
ゴンクール(エドモンド、1822-1896、美術批評家)『日記』
1823年
カバネル(アレクサンドル、1823-1889、画家)

1824年
ジェローム(ジャン=レオン、1824-1904、画家)

ブーダン(ウージェーヌ、1824-1898、画家)

シャヴァンヌ(ピエール・ピュヴィ・ド、1824-1898、画家)

1826年
モロー(ギュスターブ、1826-1998、画家)

1830年
2月革命 ブルボン朝の王政復古崩壊
7月王政(オルレアン朝ルイ=フィリップ)
1830年
ピサロ(カミーユ、1830-1903、画家)

1832年
マネ(エドゥアール、1832-1883、画家)

ドレ(ギュスターヴ、1832-1883、版画家、画家)

1834年
ドガ(エドガー、1834-1917、画家)

1836年
ファンタン=ラトゥール(アンリ、1836-1904、画家)

1839年
シスレー(アルフレッド、1839-1899、画家)

セザンヌ(ポール、1839-1906、画家)

1840年
ゾラ(エミール、1840-1902、小説家)『居酒屋』
ドーデ(アルフォンス、1840-1897、小説家)『風車小屋だより』
モネ(クロード、1840-1926、画家)

ルドン(オディロン、1840-1916、画家)

ロダン(オーギュスト、1840-1917、彫刻家)

(チャイコフスキー、1840-1893、ロシアの作曲家)
1841年
ルノワール(オーギュスト、1841-1919、画家)

モリゾ(ベルト、1841-1895、画家)

1842年
マラルメ(ステファン、1842-1898、詩人)
1844年
ヴェルレーヌ(ポール、1844-1896、詩人)
アナトール・フランス(1844-1924、詩人、小説家、批評家)
(フリードリヒ・ニーチェ、1844-1990、ドイツの哲学者)
ルソー(アンリ、1844-1907、画家)

1845年
フォーレ(ガブリエル、1845-1924、音楽家)
1846年
ガレ(エミール、1846-1904、工芸家)

1848年
2月革命 7月王政崩壊
第二共和制
1848年
ユイスマンス(ジョリス=カルル、1848-1907、小説家、批評家)『さかしま』
ゴーギャン(ポール、1848-1903、画家)

カイユボット(ギュスターブ、1848-1894、画家)

1850年
モーパッサン(ギ・ド、1850-1893、小説家)「脂肪の塊」
1853年
ゴッホ(フィンセント・ファン、1853-1890、オランダ出身の画家)

(日本:ペリー来航)
1854年
ランボー(アルチュール、1854-1891、詩人)『地獄の季節』
(オスカー・ワイルド、1854-1900、アイルランド出身の作家 『ドリアン・グレイの肖像』)
1856年
(ジークムント・フロイト、1856-1939、オーストリアの精神科医 『夢判断』)
1859年
スーラ(ジョルジュ、1859-1891、画家)

ベルクソン(アンリ、1859-1941、哲学者)『物質と記憶』
1860年
(アントン・チェーホフ、1860-1904、ロシアの劇作家)
(ギュスタフ・マーラー、1860-1911、オーストリアの作曲家)
(アルフォンス・ミュシャ、1860-1939、チェコの画家)

1862年
ドビュシー(クロード、1862-1918、作曲家)
(グスタフ・クリムト、1862-1918、オーストリア、画家)
(日本:森鴎外、1862-1922)
1863年
シニャック(ポール、1863-1935、画家)

(ムンク、1863-1944、ノルウェーの画家)

1864年
ロートレック(アンリ・ド・トゥールーズ、1864-1901、画家)

続く芸術家、作家たちは、19世紀の後半に幼年時代、青春時代を送り、20世紀前半に創作活動が活発化した。
1866年
ロマン・ロラン(1866-1944、作家)『ジャン・クリストフ』
エリック・サティ(1866-1925、作曲家)
(1867年、日本:夏目漱石、1867-1916)
1868年
ポール・クローデル(1868-1955、詩人、劇作家、評論家)『朝日の中の黒い鳥(日本印象紀)』
(日本:明治維新)
1869年
アンドレ・ジッド(1869-1951、小説家)『贋金つくり』
アンリ・マティス(1869-1954、画家)
1870年
普仏戦争、第2帝政崩壊、第三共和制へ
1871年
ポール・ヴァレリー(1871-1945、詩人、評論家)「若きパルク」
マルセル・プルースト(1871-1922、小説家)『失われた時を求めて』
彼は、約30年の間19世紀後半の時代精神性の中を生き、20世紀前半の創作活動を行った。
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