明治維新の主役たち 同じ年に生まれて

現在の日本で常識と思われていることは、明治維新の時代に採用された政策に基づいていることが多い。
日本人の根底に流れる精神性は古代から断絶がないかもしれないが、生活様式や世界観の面では明治時代に大転換があり、それが現在まで続いている。

江戸時代の末期、幕府に反対する勢力は、「尊皇攘夷」、つまり、幕府の上に天皇を置き、外国勢力を排除し鎖国を続ける政策を主張した。
ところが彼らが権力を掌握するや否や、欧米列強に対抗するため、国家の近代化を推し進めた。文明開化、富国強兵、脱亜入欧、等々。
日本をアジアではなく、アメリカやヨーロッパに近づけようとする思想や政策は、征韓論、日清戦争、日ロ戦争へとつながる。

こうした流れは、第二次世界大戦後においてほぼ反復される。
太平洋戦争において「鬼畜米英」という標語でアメリカと戦った日本は、敗戦直後から、明治維新の「攘夷」論者たちと同じように、アメリカに対する姿勢を一転させた。
そして、「富国」政策を取り、1970-80年代にはジャパン・アズ・ナンバーワンと言われるまでの経済成長を遂げ、現在でもG7(アメリカ、イギリス、カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本)に入るアジア唯一の国という表現がなされるように、「脱亜入欧」意識は残っている。(その表現は、日本がアジアに属するというよりも、欧米の一員であるかのような意識を暗に示すと考えられる。)

明治維新後と第二次世界大戦後の並行関係に気づくと、今の日本の状況を知るために、江戸から明治にかけての歴史に興味が湧いてくる。

ここでは、明治維新で主要な役割を果たした人物たちを出生年順に列挙してみよう。
同じ年代に生まれることは、類似した教育を受け、一つの時代精神を知らず知らずのうちに身に付けることにつながる。それに同化するか反発するかは、各個人の資質の違いによる。


1820年代

勝海舟(1823-1899):1860年(万延元年)、日米修好通商条約の批准書交換のために江戸幕府がアメリカに派遣した使節団を護衛する軍艦・咸臨丸で渡米した。(咸臨丸には、通訳のジョン万次郎、福沢諭吉も乗船。)

岩倉具視(1825-1883):1871年12月から1873年9月まで1年10ヶ月をかけ、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツなどを視察する目的を持つ使節団の全権を担った。(岩倉使節団は、明治政府の主要な政治家や留学生など総勢107名で構成された。)

1830年前後

西郷隆盛(1828-1877):維新の三傑

西周(1829-1897):思想家

吉田松陰(1830-1859):松下村塾の指導者

大久保利通(1830-1878):維新の三傑

木戸孝允(桂小五郎)(1833-1877):維新の三傑

福沢諭吉(1834-1901):『西洋事情』は幕末の二大ベストセラーの一つ。もう一冊は、ホイートンの『万国公法』。

橋本左内(1834-1859):思想家

坂本龍馬(1835-1867):土佐藩士

榎本武揚(1836-1908):オランダ留学。幕府軍を率いて蝦夷地を占領後、蝦夷共和国の総裁。駐露特命全権公使として樺太千島交換条約(1875年)を締結。

富岡鉄斎(1836-1924)画家

1840年前後
(1842年、アヘン戦争で清がイギリスに敗れ、幕府は異国船打払令を廃止)

徳川慶喜(1837-1913):江戸幕府第15代将軍

山県有朋(1838-1922):松下村塾の塾生

高杉晋作(1839-1976):松下村塾の塾生

三遊亭円朝(1839-1900)落語家

伊藤博文(1841-1909):松下村塾の塾生、初代内閣総理大臣

井上毅(1843-1895)フランス・ドイツに留学

箕作麟祥(1846-1897)フランスに留学

1850年前後
(1853年、黒船来航)

中江兆民(1847-1901):『民約訳解』、ルソー『社会契約論』の漢文訳

森有礼(1847-1889):初代文部大臣

明治天皇(1852-1912):孝明天皇(1831-1867)の第二子


1867年の大政奉還から1868年の明治維新において主導的な役割を演じ、その後の日本の形を築いたのは、1820年代から1850年前後に生まれた人々だった。

面白い偶然ではあるが、この世代はフランスでは印象派の画家たち、ゾラやモーパッサンといった作家たち、ヴェルレーヌやランボーといった詩人たちと重なる。
https://bohemegalante.com/2022/05/23/generations-artistes-2e-moitie-du-19e-siecle/

ドガと福沢諭吉、ルノワールと伊藤博文が同じ年に生まれ、ペリーの黒船来航の年にゴッホが、翌年にランボーが生まれたと知ると、何か不思議な感じがする。

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