サン・ジェルマンの散策は3章でも続き、今度は秘密結社であるフリーメーソンに関係する集会の様子が描かれ、そこで歌う男性歌手の様子から、1810年にナポレオンの遠征に参加したネルヴァルの父親の思い出が思い出され、シレジアの地で亡くなった母親のことにも言及される。
さらに、若い時代に感じた恋愛感情が思い出され、「彼女たちへの愛が、私を詩人にした。」といった作家としての自己を語る試みがなされていく。

3.「歌声結社」
管理人が最も愛情を込めて見せてくれたのは、一列に並んだ小さな部屋だった。「独房」と呼ばれ、監獄で働く何人かの軍人が寝泊まりしている。本物の寝室で、風景を描いたフレスコ画で飾られている。ベッドは馬の毛で作られ、ゴム紐でとめられている。全てが清潔で可愛く、船室のような感じ。ただし、日光が欠けていて、パリで私に提示された部屋と同じだった。——— 日光を必要とする「状態なら」、そこに住むことはできないだろう。私は守衛長にこう言った。「私なら、もう少し飾り付けが少なくていいので、窓に近い部屋の方が好きですね。」——— 「夜明け前に起きる時には、それはどうでもいいことです。」と彼は答えた。確かにその考察は正解だと思う。
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