ペルゴレージ 「サルヴェ・レジーナ」  ジョルジュ・サンドと音楽

ジョルジュ・サンドはショパンの恋人。リストたち多くの音楽家と友人でもあった。そうした環境の中で、素晴らしい音楽に触れ、センスを養っていったことだろう。
サンドの『コンシュエロ』は音楽小説という側面を持っている。主人公コンシュエロが最初に登場する場面では、幼い彼女にペルゴレージの「サルヴェ・レジーナ」を歌わせる。その後、知識があり、多くの経験をし、熱狂的な歌唱ではなく、無邪気な子どもの歌い方を称揚する。そこにサンドの音楽観が現れている。

18世紀ナポリ学派の作曲家ペルゴレージ。彼の「サルヴェ・レジーナ」へ短調を聞くと、その美しさに心を動かされる。
サンドに教えてもらった一曲。

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ランボー 「永遠」 Rimbaud « Éternité »

誰もが望みながら、どうやっても到達できない永遠。ランボーはその永遠を容易に見つけてしまう。
彼はいとも簡単に言う。「永遠がまた見つかった!」と。

1872年、彼はヴェルレーヌと一緒にあちこち放浪していた。
そして、腹が減ったとか(「飢餓のコメディ」)、我慢しよう(「忍耐祭り」)といった気持ちを、歌うようにして詩にした。

「永遠」もそうした詩の一つ。
その後、『地獄の季節』(1873)の中で、「言葉の錬金術」によって生み出された詩として歌われることになる。

Elle est retrouvée !
Quoi ? l’éternité.
C’est la mer mêlée
   Au soleil.

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現状満足世代と匿名の攻撃性の時代

現代の日本には、現状に不満はなく、毎日をなんとなく幸せに生きていければいいと考えている人達が数多くいる。とくに若者たちは、100%満ち足りているわけではないけれど、今の状態に満足することが上手な世代だといえる。

他方、ネット上ではしばしば炎上が起こり、匿名性の影に隠れて、異常なまでの攻撃性が発揮される。テレビでも、悪と認定された人間に対しては、根拠を問わず激しい攻撃が加えられたりする。

容易に現状に満足する心持ちと他者に対する攻撃性は一見矛盾しているように見えるが、実は一つの事態の裏表の関係にある。

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ルソーの夢想 自然との一体化 Jean-Jacques Rousseau et ses rêveries

ジャン・ジャック・ルソー(Jean-Jacques Rousseau, 1712-1778)は、最晩年に、『孤独な散歩者の夢想』(Rêveries du promeneur solitaire)という作品を執筆した。それは、自分の生涯を赤裸々に語る『告白』(1782-89)の後に書かれ、過去を振り返りながら、自己の内面の動きを綴ったものだった。

この作品の「第5の散歩」の章では、人々から迫害されたルソーが、スイスのビエンヌ湖(Lac de Bienne)にあるサン・ピエール島(île de Saint-Pierre)に滞在し、湖の畔で夢想にふける場面が描かれている。
そこで彼は、波の音と自分の心臓の鼓動が一つになり、至福の時を体験する。

それは、自己と自然が一体化し忘我に達する瞬間であり、その体験が非常に美しい文章で描かれている。音楽性も大変に優れていて、スイスの湖の畔に座る「私」の心の鼓動と波の動きが重なり合う波長が、文章のリズムによって見事に表現される。

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