ラマルティーヌ「湖」Lamartine « Le Lac » ロマン主義的抒情 

1820年に発表されたラマルティーヌの「湖」« Le Lac »は、ロマン主義的抒情詩の典型的な作品。この詩を読むと、フランス・ロマン主義の本質を知ることができる。

詩の内容は、失われた幸福を懐かしみ、それが失われたことを嘆くというもの。
昨年、愛する人と二人で幸福な時を過ごした。その湖に今年は一人でやってきた。時は否応なく過ぎ、幸福な時は失われてしまった。その悲しみを抒情的に歌う詩である。

「湖」は、4行の詩節が、16節に渡って展開する。
詩人は湖に向かい、昨年の幸福と今年の悲歎を語り、否応なく時に流される人間の運命を嘆く。その時、メランコリーに満たされた叙情性が生まれる。

マリア・カザレスの朗読は、その感情をこの上もなく見事に感じさせてくれる。とても抒情的で、詠嘆調。

第1詩節では、詩のテーマが設定される。
時間は常に流れていき、決して止めることはできない。

Ainsi, toujours poussés vers de nouveaux rivages,
Dans la nuit éternelle emportés sans retour,
Ne pourrons-nous jamais sur l’océan des âges
Jeter l’ancre un seul jour ?

こんな風に、いつでも、新たな岸辺に押し流され、
永遠の夜の中に運ばれ、戻ることができない。
そんな私たちは、決して、年月という大海に、
錨を降ろすことはできないのか。たった一日でも。

ラマルティーヌが頭に描いている湖は、エクス・レ・バンにあるブルジェBourgetの湖と言われている。

詩の読解は、この湖の岸辺に打ち寄せる波を感じることから始まる。
そのリズムは、2/10.Ainsiという2音節が短い波。toujours poussés vers de nouveaux rivagesという10音節が長い波。そうした波が、絶えず(toujours)、私たちを新しい岸辺に押し流す。

ここで大切な言葉は、「新しい」nouveaux。
波の動きは反復しているように見えるが、常に新しい岸辺に向かう。
そうした時の流れが、第2詩行の最後に置かれた「決して戻らない」sans retourで確認され、強調される。

さらに、第3詩行の最後に、「年の大海原」l’océan des âgesとあり、波が時間の隠喩であることが示される。
時は永遠に流れ続け、決して戻ることはない。時間の流れる現実世界では、全てのものがいつか失われる。そして、永遠の夜へと運ばれていく。

そんな無情な時間という波の中で、一瞬でもいいから時を止めることはできないだろうか。
もちろんそれは不可能。それが十分にわかっているにもかかわらず、「時よ止まれ」と願うところから、この詩の叙情性が生まれる。

この第1詩節は、時間は過ぎ去り、決して戻らないという詩全体の基礎となる思想を、湖に打ち寄せる波のリズムに乗せて表現する、美しい詩節である。

ところで、この詩がフランス・ロマン主義の代表と見なされていたことは、アルチュール・ランボーのパロディによって明らかになる。

ランボーは、「花について人が詩人に語ること」« Ce qu’on dit au poète à propos des fleurs »の冒頭で、「湖」の冒頭の詩句「こんな風に、いつでも」« Ainsi, toujours, »を再現し、その後、ロマン主義とは正反対の詩句を連ねた。

Ainsi, toujours, vers l’azur noir
Où tremble la mer des topazes,
Fonctionneront dans ton soir
Les Lys, ces clystères d’extases !

こんな風に、いつでも、黒い紺碧の方へ、
そこではトパーズの海が震えている。
その方向に、夜の間に機能するのは、
百合の花。恍惚感を吐き出させる浣腸。

百合の花Lysは詩の隠喩。ランボーは、ロマン主義の詩なんて、恍惚感を催させる浣腸だ!と言い放つ。とても烈しい! ランボーでないと、ロマン主義を代表する詩を浣腸などとは言えない。
他方で、Ly – clyで言葉遊びをし、lys(百合)-clystère(浣腸)を同一化する。そのことによって、烈しい内容を表現する。
それと同時に、lys, clys, extaseというロマン主義の核となる言葉の連続が音楽性を作り出す。
そのがランボーのすごさであり、面白さに他ならない。

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