第2幕、第5場は、フェードルがイポリットに自分の愛を明かす場面。
義理の親子の関係にあるために、直接愛を告げることはできない。そこで、フェードルは、夫テーセウス(thésée)に対する愛を語りながら、そこにイポリットへの想いを重ね合わせていく。
幸い、パロリック・シェロー演出の上演がyoutubeにアップされている。
そこでは、フェードルの苦しみが激しく、しかも美しく描かれている。
素晴らしい芝居なので、何度見ても飽きることがない。
第2幕、第5場は、フェードルがイポリットに自分の愛を明かす場面。
義理の親子の関係にあるために、直接愛を告げることはできない。そこで、フェードルは、夫テーセウス(thésée)に対する愛を語りながら、そこにイポリットへの想いを重ね合わせていく。
幸い、パロリック・シェロー演出の上演がyoutubeにアップされている。
そこでは、フェードルの苦しみが激しく、しかも美しく描かれている。
素晴らしい芝居なので、何度見ても飽きることがない。

ジェラール・ド・ネルヴァルは19世紀前半のパリの詩人だが、豊かな自然に満ちたヴァロワ地方を愛し、都会の喧噪で疲れた心を田舎の自然で癒すこともあった。
そんな詩人の若い頃の詩に、「監獄の中庭(Cour de prison)」がある。
1830年の7月革命のすぐ後、サント・ペラジー(Sainte-Pélagie)という監獄の中に閉じ込められた時のことを歌った詩。
ネルヴァルという詩人の繊細な感受性がとてもよく感じられる。
現実世界の政治に対しては皮肉な眼差しを投げかける。肉体は閉鎖空間に閉じこもることを強いられることもある。
そんな中でも、精神は自由に動き、僅かな自然の気配を心で感じる。
それがネルヴァルなのだ。

ジャン・ラシーヌ(Jean Racine)の『フェードル(Phèdre)』は、17世紀フランス演劇の最高傑作の一つ。
この上もなく美しいフランス語の詩句によって、理性と情念の葛藤が描き出される。
そこで、『フェードル』を読む場合には、2つの軸からアプローチしたい。
1)17世紀のおける理性(raison)vs 情念(passion)のドラマ。
2)ラシーヌの韻文詩の美。
2020年5月20日、France 2の20時のニュースで、エルムノンヴィルの広大な緑の森や、シャーリの僧院が紹介されていました。ジャン・ジャック・ルソーが最後の時を迎えた小さな小屋も見ることができます。
France : le charme de la forêt d’Ermenonville
950 amendes ont été infligées à ceux qui s’étaient éloignés à plus de 100km de leurs domiciles, mardi 19 mai. Le 20 Heures fait le pari de faire découvrir des destinations et ballades près des grandes villes.
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ラ・フォンテーヌの「狼と小羊」の冒頭の一句 « La raison du plus fort est toujours la meilleure.»(最も強いものの理屈が常に最もいいもの。)は、フランス語の諺として定着している。
日本の諺では、「長いものには巻かれろ」と言われることが多いが、「勝てば官軍、負ければ賊軍」、「弱肉強食」等とも対応する。
相撲界であれば、「無理へんにげんこつ」。
会社などでは、上司に「黒いものを白」と言われたら、「白」と言わないといけない等々。
間違っていることでも、自分よりも強かったり、上の立場にいる人間の言うことには従わないといけないということは、誰もが経験する。
17世紀であれば、狼はルイ14世で、子羊は宮廷人と考えると、私たちにはわかりやすいかもしれない。(ただし、ラ・フォンテーヌは、すぐに王に対する批判だとわかる寓話を書くようなそれほど単純な作家ではない。)
そうした状況の中で、ラ・フォンテーヌは、とても面白い試みをする。
一般的に寓話の教訓は、物語の最後に置かれる。
それに対して、「狼と小羊」では、寓話の最初に教訓を明記した。
Le Loup et l’Agneau
La raison du plus fort est toujours la meilleure :
Nous l’allons montrer tout à l’heure.
狼と子羊
最も強いものの理屈が、常に最もいいものだ。
これからそのことを証明することにする。
それほど、この教訓は絶対的なものという意味だろうか。
それとも、何か繊細な仕組みがほどこされているだろうか。

イソップ寓話の「狼と犬」は日本でも比較的よく知られている。
犬は、束縛されてはいるが、安逸な生活を送る。
狼は、自由だが、いつも飢えている。
そして、イソップ寓話では、狼が体現する自由に価値が置かれる。
17世紀のフランスのサロンや宮廷は、「外見の文化」の時代。
貴族たちは、社会の規範に自分を合わせないといけないという、強い束縛の中で生きていた。服装や振る舞いが決められ、逸脱したら社会から脱落することになる。
そうした束縛が支配する場で、「狼と犬」の寓話を語るとしたら、どんな話になるだろうか。

言葉遣いの名手ラ・フォンテーヌの「狼と犬」では、教訓は付けられていず、「狼は今でも走っている。」という結末。
そこで、読者は、自分で教訓を考える(penser)ように促されることになる。
束縛ではなく自由を選ぶと言うことはたやすい。
しかし、実際に自由に生きることは簡単ではない。そのことは、ルイ14世の宮廷社会に生きる貴族たちも、21世紀の日本を生きる私たちも、よくわかっている。
ラ・フォンテーヌの寓話は、最初から決まった結論に読者を導くよりも、「考える(penser)」ことを促す。その意味では、デカルトやパスカルと同じ17世紀フランスの「考える」文化に属している。
続きを読む個人的な感想になるが、とりわけ2000年を過ぎた頃から、古典とか過去の名作が顧みられなくなってしまったように思われる。
文学的な古典作品、フランス文学で言えば、フロベールやバルザックを読もうとしないし、手に取ったとしても読めないという若者が多い。
新しく高校で国語を教え始めた先生が、夏目漱石の小説を抜粋以外で読んだことがない、つまり一冊を通して読んでことがない、という例まで耳にしたことがある。

こうしたことは文学に限ったことではなく、映画でも同じこと。
映画好きだと自称する若者でも、小津安二郎の名前を知らなかったり、「東京物語」や黒沢の「7人の侍」さえ見たことがないという。

1852年10月30日発行の『イリュストラシオン』誌に掲載された『10月の夜』の第3回。
19世紀半ばのパリ中央市場付近の様子が具体的に描かれ、当時の民衆言葉も再現されているために、歴史的資料としても興味深い。
他方で、あまりにもローカルな事柄がローカルな言葉で書かれている部分もあり、現代の読者にはわかり難い部分もある。
10.焼き鳥屋
おお、真珠のように麗しい声の少女よ、――お前は、音楽院で教えられるみたいな‘楽句の区切り方’を知らない。――‘歌い方を知らない’と、音楽評論家なら言うだろう・・・。でも、ぼくはうっとりする。若々しい声の響きと、祖母たちの素朴な歌と同じように震える語尾に! お前が作った歌詞は韻を踏まないし、メロディーは‘教会音楽の4本の譜線’には書けない。―― あの小さな集いの中でだけ理解され、大喝采を浴びる。お前のお母さんに向かって、歌の先生のところに通わせろという人が出てくるだろう。―― そこに行くようになったらすぐに、お前は失われる・・・。私たちにとっては失われてしまう!―― お前は今、深淵の淵で歌っている、北欧神話の『エッダ』に出てくる白鳥みたいに。学識に染まっていない純粋なお前の声を、思い出として持ち続けることができますように! 歌劇場でも、コンサートでも、―― 歌声喫茶でさえも、お前が歌うのを聞きませんように!
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ラ・ロシュフコーの『箴言集』のエピグラフには、こんな言葉が上げられている。
Nos vertus ne sont, le plus souvent, que des vices déguisés.
我々の美徳は、ほとんどの場合、偽装された悪徳にすぎない。

ラ・ロシュフコーの箴言は、こんな風に、物事を斜に構えて眺める皮肉な態度につらぬかれている。
この17世紀のモラリストに対して、太宰治は、「ラロシフコーなど讀まずとも、所謂、「人生裏面觀」は先刻すでに御承知である。眞理は、裏面にあると思つてゐる。」と書き、物事には裏表があることなどわかっていると毒づいたことがある。
https://bohemegalante.com/2019/06/27/datai-la-rochefoucauld/
太宰が言う「人生裏面觀」は現在でも通用するが、17世紀のフランスにおいては、とりわけ必要とされるものだった。
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ブレーズ・パスカルの「人間は考える葦である。」という言葉は誰でも知っている。しばしばデカルトの「我思う、故に我在り。」と並べて語られることもある。
この有名な二つの言葉には共通する要素がある。それは、「考える(Penser)」という動詞。
« L’homme, […], c’est un roseau pensant. » (Pascal)
« Je pense, donc je suis. » (Descartes)
17世紀の二人の思想家、哲学者は、「考える」ということを思索の中心においていることがわかる。
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