
アルチュール・ランボーは、『地獄の季節(Une Saison en enfer)』の中心に、「錯乱2:言葉の錬金術(Délires II. Alchimie du verbe)」と題する章を置き、7つの韻文詩とそれらを取り囲む散文詩を配した。
そこで繰り広げられた「言葉の錬金術」の内容は、1871年5月に書かれた「見者の手紙(Lettres du Voyant)」や、同じ年の8月に投函されたテオドール・バンヴィル宛ての手紙に書き付けられた韻文詩「花について人が詩人に語ること(Ce qu’on dit au poète à propos des fleurs)」の中で展開された詩法を、さらに発展させたものと考えられる。
ここでランボーの散文詩を読むにあたり、指摘しておきたいことがある。
多くの場合ランボーの散文の構造は非常に単純であり、それだからこそ、青春の息吹ともいえる生き生きとしたスピード感に溢れている。
その一方で、単語と単語の意味の連関が希薄なことが多く、論理を辿りにくいだけではなく、意味不明なことも多い。
そのために、多様な解釈が可能になる。読者の頭の中にクエション・マークが??????と連続して点滅する。
その不可思議さが、ランボーの詩の魅力の一つでもある。
では、これから『地獄の季節』の心臓部とも言える「錯乱2:言葉の錬金術」を読んでみよう。
続きを読む








