
丸山真男の「『である』ことと『する』こと」は、1958年(昭和33年)の講演を下敷きに執筆され、『日本の思想』(岩波新書、1961年)に収録された評論であるが、21世紀の現在でも、日本社会や日本人の心理構造を理解する上で重要な示唆を与えてくれる。
その理由は、政治学者である丸山の関心が、明治維新以降の近代化のプロセスにおいて、「少なくとも飛鳥時代から続く日本の伝統」と「開国を契機とした西欧文物の急速な移入」という、二つの大きな潮流の複雑な絡み合いを探ることにあったからだと考えられる。
このことは、丸山の思索が「自然と作為」「成ると為す」「『である』と『する』」といった二項対立の概念を軸に展開されていることからも窺える。「伝統と近代」もまた、この対比に対応するものだ。
現代の日本は、海外から「超近代的な側面を持ちながらも、他方で伝統文化を色濃く残す国」として知られ、時に驚きをもって語られる。「『である』ことと『する』こと」を読み解いていくと、まさに「である」の伝統と「する」の近代との葛藤が、今の日本でも地続きで存在していることに気づかされる。
60年以上も前に書かれた評論でありながら、丸山のまなざしは1000年以上の歴史を射程に収めており、現代社会の分析にとどまらず、「日本」という国や日本人の心のあり方を根底から知るための貴重な考察となっている。
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