芥川龍之介 「桃太郎」 読解の3つのレベル  2/3  桃太郎は「天才」

(2)桃太郎は「天才」

白黒のポートレート写真で、考え込む表情の男性。

芥川龍之介が語る「桃太郎」では、鬼ヶ島での鬼退治が、桃太郎一団による侵略として描かれていることを確認した。しかし、そうした理解だけでは、こぼれ落ちてしまう部分がある。そのことは、物語の最後で桃太郎のような存在を「天才」と呼んでいる一節を読むと、はっきりと見えてくるはずである。

物語の冒頭では、深い山の奥に大きな桃の木が数多くあり、その一つの実を八咫烏がついばむと、実が地上に落ち、桃太郎が生まれたというエピソードが語られた。そして物語の最後では、これからも「未来の天才」が桃の実の中から生まれてくるというのである。

人間の知らない山の奥に雲霧(くもきり)を破った桃の木は今日(こんにち)もなお昔のように、累々(るいるい)と無数の実(み)をつけている。勿論桃太郎を孕(はら)んでいた実だけはとうに谷川を流れ去ってしまった。しかし未来の天才はまだそれらの実の中に何人とも知らず眠っている。あの大きい八咫鴉(やたがらす)は今度はいつこの木の梢(こずえ)へもう一度姿を露(あら)わすであろう? ああ、未来の天才はまだそれらの実の中に何人とも知らず眠っている。…… (芥川龍之介「桃太郎」)

平和に暮らす鬼たちの島を侵略し、宝物を奪い、若者たちを人質として連れ去った桃太郎が、なぜ「天才」といえるのだろうか。天才と呼ばれる人間が、それほど非人間的で、倫理に反する行動をするのだろうか。そんな疑問が湧いてくるのではないだろうか。

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バルザック 知られざる傑作 Honoré de Balzac, Le Chef-d’œuvre inconnu 芸術論 3/5

「エジプトの聖女マリア」に、解剖学的な正確さはあるが生命感が欠けている、というフレノフェールの指摘に対して、ポルビュスとプッサンは反論しようとする。

— Mais pourquoi, mon cher maître ? dit respectueusement Porbus au vieillard tandis que le jeune homme avait peine à réprimer une forte envie de le battre.

ーー でも、どうしてですか、ポルビュスが老人に尋ねた。一方、若者は、老人に反論したいという強い気持ちを抑えるのに苦労していた。

しかし、フレノフェールは二人にほとんど口を挟ませず、すぐに自分の説を再び展開する。

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