ポール・サイモンが1973年に発表した”American Tune”は、ベトナム戦争の後遺症が残るアメリカの精神性を歌った唄。
この曲のメロディーが、バッハ「マタイ受難曲」のコラール曲「おお、血と涙にまみれ御頭よ」から取られていることを、作曲家の河邊一彦が指摘している。
https://liberty-music.jimdofree.com/2014/10/25/j-s-%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F%E3%81%A8%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%AB-%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%83%A2%E3%83%B3/
19世紀の時代精神 社会の中の「私」 2/2 新しい芸術観
19世紀前半のロマン主義は、ルネサンス以来のプラトニスム的芸術観を引き継いだものだと考えられるが、19世紀後半になると全く新しい芸術観が発生した。
その新しい芸術観の最も根源的な本質は、「作り出されたもの自体」に価値を置く、ということにつきる。

文学にしろ、絵画にしろ、現実の存在を前提とし、その現実を再現するのであれば、作品は現実のコピーにすぎないことになる。
それに対して、新しい芸術観の下では、作品は現実から自立したものと見なされる。描かれた絵画そのもの、書かれたテクストそのものが芸術の価値だと考えられる。
20世紀に入り、ピカソ、シュール・レアリスム、抽象芸術などが出現する。私たちは、そこに何が描かれているのか分からないことがしばしばあるが、しかし、美を見出すこともある。
そうした例を思い浮かべると、現実から自立した芸術がどのようなものか、理解できるだろう。
19世紀後半は、こうした新しい芸術観が誕生した時代。
ロマン主義から新しい芸術観への転換を私たちに教えてくれるのは、シャルル・ボードレールであり、ギュスターヴ・フロベールである。
19世紀の時代精神 社会の中の「私」 1/2 ロマン主義

19世紀は、文学だけではなく、絵画や音楽に関しても、日本でよく知られた芸術家たちを輩出した時代。
小説家で言えば、ヴィクトル・ユゴー(『ノートルダム・ド・パリ』『レ・ミゼラブル』)スタンダール(『赤と黒』)、バルザック(『人間喜劇』)、アレクサンドル・デュマ(『三銃士』)、メリメ(『カルメン』)、ジョルジュ・サンド(『愛の妖精』)、フロベール(『ボヴァリー夫人』)、エミール・ゾラ(『居酒屋』)、モーパッサン(『女の一生』)、アルフォンス・ドーデ(「アルルの女」「最後の授業」)、等。
詩人であれば、ボードレール、ヴェルレーヌ、ランボー、等。
画家なら、ドラクロワ、クールベ、マネ、モネ、ルノワール、ロートレック、ゴッホ、ゴーギャン、ギュスターヴ・モロー、セザンヌ、等。
音楽家なら、ショパン、ベルリオーズ、リスト、ドビュシー、サティ、サン・サーンス、ビゼー、等。
さらに、ロマン主義、写実主義(レアリスム)、自然主義、印象派、象徴派、デカダンス、世紀末芸術といった用語も知られている。
その一方で、19世紀の半ばに世界観・芸術観の大転換があり、そこで発生した新しい世界像が20−21世紀の世界観・芸術観の起源となったことは、あまり意識されていない。
ここでは簡潔に19世紀文学の流れを辿り、時代精神の大きな転換について考えていく。
続きを読む慈善団体Global Citizenの24時間liveの紹介
地球の環境保護と貧困撲滅のために世界の団結を訴えるグローバル・シチズンの24時間チャリティ・ライブコンサート「Global Citizen Live」(グローバル・シチズン・ライブ)が、ニューヨークのセントラル・パーク🇺🇸、ロサンゼルス🇺🇸、ロンドン🇬🇧、パリ🇫🇷、リオデジャネイロ🇧🇷、シドニー🇦🇺、ラゴス🇳🇬、ソウル🇰🇷で、2021年9月25日に開催された。
その様子を紹介するビデオ。
アフガニスタン・バーミヤン渓谷 破壊された大仏跡の現状
前のタリバン政権が最初に国際的な批判を浴びたのは、世界遺産に指定されていたバーミヤンの仏教遺跡、中でも高さ53メートルの巨大な大仏を破壊したことだった。
2021年、タリバンが再びアフガニスタンを支配する中、バーミアンの現状がどのようになっているのかを知らせるルポルタージュは大変に興味深い。
ジャズの楽しさ インプロヴィゼーションとリズム感
一口にジャズといっても様々な様式があり、一つのジャンルにまとめるのが難しい。しかし、一つだけ共通の要素があるとしたら、インプロヴィゼーションだといえる。
一つのメロディーあるいは楽譜があるとして、それに基づきながら、その時その場のインスピレーションに従って、即興的に音楽を生み出していく。
そうしたインプロヴィゼーションの楽しさを実感させる映像と出会ったので、ぜひ紹介したい。
演奏しているのは、ジャズ・ピアニスト上原ひとみ。
K-Popの流行
世界中でK-Popが流行しているが、フランスも例外ではない。色々な町で、K-Popのダンス教室もできている。
La déferlante K-Pop
Leur musique envahit tous les quartiers de Lyon. De la place des Terreaux à la colline de Fourvière, les fans de K-Pop s’emparent tout.
続きを読む日本語の音楽を聴く
音のない言葉を考えることはできない。
声に出して話したり読んだりする時だけではなく、頭の中で何かを考える時にも音があり、それらの音の繋がるリズムを感じている。
日本語を母語とする者にとっては、5/7を基本とするリズムがごく自然に心地よく感じられる。
ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心(しづごころ)なく 花の散るらむ(紀友則)
私の上に 降る雪は/真綿(まわた)のやうで ありました(中原中也)
これらの言葉の魅力は、意味だけではなく、口調の良さによってももたらされている。
言葉たちが音楽を奏で、私たちはその音楽に耳を傾けて、うっとりするといってもいいだろう。
ラプソディ・イン・ブルー 村上春樹の解説で、大西順子のピアノと小澤征爾が指揮するサイトウ・キネン・オーケストラの演奏を聴く
ジャズ・ピアニスト大西順子と、小澤征爾が指揮するサイトウ・キネン・オーケストラのライブがyoutubeにアップされている。まずは、2013年9月6日に松本で行われた、その演奏に耳を傾けてみよう。
ジャズとクラシックの融合したこの演奏が好きか嫌いかは別にして、ここで何が起こっているのか理解するためには、少なくとも私程度のリスナーだと、誰かに解説してもらう必要がある。
実は、この演奏を知ったのも村上春樹の『小澤征爾さんと、音楽について話をする』の最後に収録された雑誌記事なので、村上に教えてもらうことにしよう。
ネルヴァル シルヴィ 言葉の音楽性を体感する
ジェラール・ド・ネルヴァルは、1853年に「シルヴィ」を執筆している時、友人に宛てた手紙の中で、「ぼくは真珠しすぎる(je perle trop)」と書いている。
「真珠しすぎる」?
どういう意味だろう。
お菓子に関して言えば、真珠の形をしたアーモンド菓子を作ること。裁縫では、刺繍などを完璧に仕上げること。音楽では、テンポや一連の装飾音を完璧にするという意味になる。
ネルヴァルはその動詞を文体にも適用し、「シルヴィ」を書きながら、文章を凝りすぎていると感じていたのだろう。そのために、なかなか終わらなくて焦っていたふしもある。
実際、普段のネルヴァルの文章と比較して、「シルヴィ」には非常に美しく、ポエジーを感じさせる文が多くある。
私たちが外国語を学ぶとき、意味の理解に精一杯で、文の美しさを感じることができるとはなかなか思えない。理解するために思わず日本語に変換してしまうことも多く、原語の持つ音楽性を感じることができずにいる。
しかし、それではあまりにももったいない。
せっかく原語で読むのであれば、言葉たちが奏でる音楽に耳を傾け、少しでもいいので「美」を感じられたら、どんなに幸せなことだろう。
小説を形作る言葉の音楽性が何よりも重要だと、村上春樹が小澤征爾との対談で述べている。(村上春樹『小澤征爾さんと、音楽について話をする』)
僕は文章を書く方法というか、書き方みたいなのは誰にも教わらなかったし、とくに勉強もしていません。何から学んだかというと、音楽から学んだんです。それで、いちばん何が大事かっていうと、リズムですよね。文章にリズムがないと、そんなものは誰も読まないんです。
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