
バルザックは、ポルビュスの「エジプトの聖女マリア」という作品について、フレノフェールが批評を加える場面を設定する。
しかし、その場面は、二人の登場人物の自然な会話というよりも、フレノフェールの口を通して、バルザック自身が芸術論を語っているような印象を与える。
こうした語り口は、小説の中に再現される現実の世界の本当らしさを壊す結果になる可能性がある。しかし、バルザックの世界ではよくそうしたことが起こる。
彼は、本当らしさの破綻を恐れることなく、自分の持つ世界観を読者に伝えようとしたのだろう。
登場人物に関して言えば、最初に登場した若者のニコラ・プッサンは、17世紀最大の画家。
ポルビュスは、ベルギー生まれで、マリー・ド・メディシスによってフランスの宮廷に招かれた画家。二人は実在の人物。
それに対して、フレノフェールはバルザックが作り出した虚構の人物。
また、ポルビュスが描いている絵画「エジプトの聖女マリア」は実在が確認されていず、虚構の作品である可能性が高い。










